金融政策の限界1

商品価値として少量でも良い物・上品さ・アート性のあるものが優位性を持つ時代・・を支えるのは→武力に変わる道義・センスであり商品流通を支えるのは武力よりは動脈となる金融秩序です。
モノが行き渡って来ると2倍の生産をしても飲み切れない牛乳をこれ以上いらない・少量でももっとおいしい牛乳が良いとなります。
少量でも良いものが欲しい時代になって来ると量で勝負する旧価値観で生きて来た人にとっては困ってしまいます・・この反動が現下の反ウオール街運動・・マサに価値観の大転換に対する反作用と言うべきでしょう。
金融や芸術・知財では多くの人を養えないのは当然ですが、それは人口減で対応すべきことであって移民による人口増で対応する政策に矛盾があるから社会問題になって来たのです。
先進国が苦しくなって来たのは現地生産の進行→先進国が世界の工場ではなくなった結果、自国内需要を越える工場・生産力が不要になったことによります。
需要不足=供給過剰状態打開のためにEUと言う障壁を作り日本からの輸入攻勢をふせぎ、コスト競争のため+自国民の賃金低下圧力緩和のために?安い賃金は移民に任せる解決を求めて来ました。
この辺は「介護従事者が足りないから移民を入れろ」と言うのと同じで理屈のすり替えですから解決になる筈がありません。
介護者が足りないのは介護関連賃金が保険制度のために低く抑えられているからであって、これを市場に委ねて高額賃金を支払う・・有料老人ホームであれば人手不足は起こりません。
即ち介護士不足は人件費が他産業に比較して低く抑えられている結果・・市場原理に反している結果・・賃金が不当に低く抑えられている結果でしかないことをJuly 11, 2016に書きましたが、先進国の移民導入論も論理のすり替えである点は同じです。
自国民の賃金が高過ぎることを頰っ被りして国際相場(自国民より安い賃金)で働く移民を一部入れると、結果的に自国民の職場を奪って行くことになりジリジリと賃金相場が下落して行きますのでこれを待っているのでしょうが、どうせ結果が同じならば自国民だけの方が国民が幸せです。
移民が入った分労働力過剰になっている・・西欧では10%台の失業率が普通になっています・・移民を差し引けばどうだったかが明らかです。
国際競争力維持で言えば、移民を入れてもどうなるものでもない(工員の1割を中国人にしても全体の賃金は1割しか下がらない・・100%中国人の中国の工場に勝てません・この辺の理を2週間ほど前の移民シリーズに書きました)・・却って国内失業が増えて行きます。
輸出用の生産要員が不要になった・・先進国が世界の工場として人口を増やして来たトガメが出てきた以上は、世界の工場になる前の人口に減らして行くしかありません。
各民族は自給自足に適した人口を維持すべきであって、タマタマある映画の舞台になったことによるブームによって、観光客が押し寄せて来たとしてそれに頼って店舗増築や従業員などを増やす・・他市町から住民移動があるとブームが終わるとたちまち人口過剰・失業・倒産の危機に瀕します。
数年前からの円安に多くの企業が増産投資しなかったのは、一時のブームに合わせて増産投資すると円安が終わったときに参ってしまうことを企業が知っているからです。
実際に一時的な中国観光客の「爆買いに遅れじ」とばかりに設備投資したデパート等が、この4月からの爆買い急減によって売上減に見舞われ、設備投資が重荷になり始めています。
国内投資が殆ど増えないことをマスコミが焦って企業の内部留保が悪いと言うキャンペインを(左翼文化人も内部留保を還元しろと)張っていましたが、増産投資するとその後で困るのが目に見えていますし、利益要因の基礎が海外資産の評価アップによる・・国内需要が増えた訳ではない以上無責任なマスコミ主張に乗る訳がありません。
他方で日銀もマスコミ的発想を受けて金融政策・・ゼロ金利・・異次元の金融緩和が始まっています。
ゼロ金利にして金融機関に滞留している資金が国債購入よりは投融資に向かうしかないようにすると言う戦略でしたが、国債や日銀預かり金利をゼロ金利にしても銀行としては需要がない(企業自体が内部留保一杯で借りる必要がないでしょう)から金融機関の投資が細っていたのですから、(ゼロでも借りたくない企業は借りない)新規投資すべき相手がありません。
逆に庶民の投融資の入り口であるMMF口座がゼロ金利の影響で逆に続々と閉鎖の憂き目にあっています。
先進国は産業革命の先行でタマタマ2世紀にわたる長い優位期間があったので、世界の工場としての地位が永久に続くかの錯覚があったでしょうが、長期的に見れば一過性のブームと本質が変わりませんが、永久に続くと思って誤って人口を増やして来たに過ぎません。
移民政策は、映画の舞台になったことによって田舎の街に押し寄せた観光ブームが終わったときに、飲食店等の客を増やすために地元商店街の従業員をもっと雇う運動をするのに似ています。
・・彼らも客になるので少しは市内の消費を維持出来るでしょう・・移民によって人口を増やせば飲食店やコンビニの客が増えるしクルマなどの需要もふえるでしょうが、その客になる人の収入をどうするかの意見がありません。
デパートで働く人・納入業者等がその街のにぎわいに貢献しているので、デパートが撤退するとその人たちの消費も減る関係をみると、デパートや商店街の売上を増やすために従業員を増やせと言う主張に似ています。
先進国においては世界の工場としての役割は終わりをツゲつつある・・NHK朝ドラの舞台化による田舎町に観光客が押し寄せるブームが終わりを告げつつあるのと似た結果が始まっていることは厳然たる事実ですから、これに目を背けてもどうなるものでもありません。
人口減少を憂うる多くの学者の意見よりも庶民の意見・・折角自民族が知恵を絞って少子化で人口減を図る・・減ったパイを少人数で分け合う智恵+みかんの摘果と同じで少子化すれば一人当たりレベルが上がる・・が生物界の基本原理です・・生物の本能に従って庶民が来たるべき新時代への適応力向上を目指して少子化に励んでいるのは「正しい選択だ」とここ10年来このコラムで書いてきました。
少子高齢化に励んでいる人は、一方で当然に移民反対です。
折角自分自身が質素倹約・少子化に努力しているときに、よそ者が来て爆食(移民がドンドン子供を産んで有限な資源を食い荒ら)されたのでは叶わないからです。
マスコミは庶民の本能を無視して移民導入を煽っていますが、人口増になるのは困ると言う(世界中の)庶民の意見の方が正しいと言うのが私の持論です。

消費力←金融3

May 8, 2016,「資源+生産力から消費力アップへ2」から話題がそれていましたが、消費力の重要性に戻ります。
武力剥き出しによる問答無用の砲艦外交の西欧近代の世界支配の時代に粗鋼生産量や造船量・・生産力・GDPが必須アイテムでした。
弱肉強食の時代・・腕力での戦いに勝ちさえすれば勝った方はどんな非人道的行為でも、(相手を動物扱いするなど)何をしても良いと言う西欧価値観で支配されていました。
※中国の場合昔から勝てば相手の将軍の母親を切り刻んで無理に食べさせるなど普通に行なわれて来たとを何回も紹介しています。・・これに習ったのが信長で,恨み骨髄の敵将浅井長政のしゃれこうべに酒を入れて武将に飲ませたと伝えられています・・後世信長を暴君だったと広めるための創作かもしませんので真偽は分りません。
野蛮な価値観を基礎にアメリカでは、奴隷化された黒人に対しては「人間尊厳の基礎」たる性行為でさえも動物の「「種付け」と同視される・・およそ日本人の想像力を越える戦慄的な残虐行為が普通に行なわれて来たのです。
7月20日に紹介したインデアンに対する・・赤ちゃんが生まれると全部母親から取り上げて白人家庭に預けて使用人として育てさせる・・民族精神根絶やし作戦も同じで、日本人から見れば「神を恐れぬ」所行です。
※日本人は東南アジアでもアフリカでも現地に行った個人の努力で子供の教育に精出したり植林したり農業指導し、水がなければ灌漑設備を作ってやったりするのが普通ですし、植民地支配がおかしいと思えば独立運動を教えたりしてきましたが、同じようなこと・・ただしいと思うこと・・黒人差別はおかしいだろうと言う運動を戦前からアメリカでも個々人がやって来たのです。
アメリカ人の残虐な実態を知った日本人の驚き・・これを受けて第一次大戦後の国連で日本が人種平等の主張をしたことがアメリカの逆鱗に触れてこのときからニッポン民族殲滅作戦が進行したのを紹介したことがあります。
アメリカに渡った日本人個々人がアメリカでの黒人差別の実態に驚いて個人の良心の赴くまま、草の根での黒人解放運動を地道に行なって来た・日本が戦争に負けてもアメリカ在住の個人に関係がないので、戦後も地道な解放運動を続けていてこれが実を結び戦後・1960年代のアメリカの公民権運動の成果になって行ったのです・・黒人解放は日本人の運動の成果であることは歴史となって既に知られていることですが、これに対する仕返し・報復運動がアメリカ主導の性奴隷批判です。
何故左翼系が「性奴隷」と言う表現にこだわるかと言えば、アメリカとしてはどうしても自分達の奴隷制を批判して来た日本人に対して日本も同じことをしていると言う意味で「奴隷」と言う言葉にして日本に報復したいからに外なりません。
戦時国際条約違反をやって来た米軍が自分の蛮行を隠すために違反行為をしていない日本の将軍に対する戦犯裁判を強行したのと同じです。
私はこのコラムで、繰り返しソ連による日本人のシベリヤ連行の悲惨さを書いていますが、タマタマ新聞を読んでいると、日経新聞7月21日朝刊40p(最終裏面文化欄)に抑留体験を絵筆に書き留めた木内信夫氏のあとがき?みたいなモノが紹介されています。
カレの紹介によれば抑留体験を描いた水彩画がユネスコの世界遺産に昨年10月に登録されたと言うことです。
この記事のある数日〜1週間前に世界的建築家の設計になる上野の西洋美術館が世界遺産登録されたと大騒ぎの報道があったばかりですが、私は(西欧の有名人が作ったかもしれないが日本人の美意識とも合わないこんなものが何故?)この空騒ぎに元々違和感を覚えていたのですが、日本にとってもっと重要な遺産登録が何故マスコミで大々的に報道されていなかったのか?(私だけが知らなかったのか不明ですが・・)驚きました。
ソ連の蛮行を国内で出来るだけ風化させたい・・左翼系マスコミには不都合な真実・・隠蔽しておきたかったからでしょうか?
そこでウエブで調べてみると本当に遺産登録されたらしく、この登録準備を切っ掛けにロシアが対抗的に中国に働きかけて南京虐殺の遺産登録運動が急浮上して来た経緯が書かれています。
西洋的価値観ではやられたらやり返す・・でっち上げであろうとあろうとなかろうと日本もやっていたと言う虚構の事実を数の力でごり押しする・・極東軍事裁判同様に正義かどうかなどどうでも良いと言う価値観なのでしょう。
一旦裁判と言う形式をとれば、極東裁判も決まった以上は真実がどうのと言う争いを許さない・南京虐殺も国連で決めれば決まったことだから・・と日本の反論を許さない図式を(アメリカが裏で応援し)中ロが利用しようとしています。
こう言うでっち上げ主張の応援をしている限り日本は、ロシアと仲良くする余地がありません。
話を生産力・武力重視価値の時代が終わったと言うテーマに戻します。
最近までは、武器の基礎になる「鉄は国家なり」と言う思想で教育されていて、歴史観でも鉄器民族がどこで始まり、日本に鉄器を持ち込んだ民族は◯◯と議論した上でどこで先に鉄が取れたので勢力を持つようになったと言うまことしやかな解説が一般的です。
しかし民族の消長は殺しあいで勝ったり負けたりだけではなく、日本列島では、平和裏に縄文から弥生時代へのように同時的移行して来た高度社会です。
中国が未だに製鐵・造船量にこだわっているのは、剥き出しの武力による勢力拡大に価値観を置いているからです。
第二次世界大戦後、腕力=量ではなく、道義やソフト力で決めていく時代になると発言力が生産力から消費力に価値基準が変わって来たことをMay 8, 2016「資源+生産力から消費力アップへ2」前後で書き、更には消費力不足に対する金融支配が増して来た・・金融支配力の重要性・・これに反発する反ウオール街感情やパナマ文書公開による金融資本締め付け・・金融支配に対する反感増大を書いている内に、話題が次々と移ってしまいました。
ここから金融支配力に戻ります。
比喩的に言えば、剥き出しの武力・・威嚇→量さえあれば何でも出来る世界・・これを支えるのに、戦艦・大砲等の武器の多い方が優位になる砲艦外交が一対の社会でした。
米ソが核弾頭を無数に持って量を競っていたのは(500発と600発の差は無意味ですが、)過去の惰性です。
金融調節・異次元緩和も量にこだわる過去の惰性・延長ですが、未だに日銀が経済運営の中枢を握っているかのような錯覚でマスコミが騒いでいます。
この辺の関心でここから書いて行きますので、消費力の重要性=金融力・・金融政策はどうあるべきかのテーマに変わって行きます。

中国の権力闘争激化2

政府とはなれた企業でさえ国有の場合、変化に適応出来ない非効率が問題にされていて、この打開のために日本でも諸外国でも公営事業の民営化に努力していますし、中国の場合にも・・改革開放→朱鎔基首相時代に思い切った国有企業の民営化断行したのが今の発展の基礎になっていると言うのが定説です。
このシリーズの基礎原稿は5月のサミットの頃に書いておいたものですが、タマタマ今朝の日経新聞朝刊にも朱鎔基の功績が出ています。
共産党幹部が企業トップに就任していて党の末端委員会が企業内に常駐していて、(常駐しているだけも事実上にらみが利いていたのですが法的に経営陣が常駐している委員会の意見を一々聞かねばならないとすれば、国有企業の非効率どころの話ではなくなります。
現在の中国経済の危機打開には一段の民営化が望まれるところなのに、やっていることは逆向です。
国有企業の債務超過=経営不振に困っているときに、事業経営判断に自由な経営を知らない共産党ゴリゴリの幹部が口出ししてどうなるの?
日本で言えば国鉄の赤字解決のために、政府から監督員を派遣してもっと厳しく監督しろと言うに等しい政策です。
現実妥協政治・・学問と違って現実政治は生身の人間相手ですから、妥協で成り立っています・・。
IMFでSDR昇格運動をして認められれば、人民元取引自由化を拡大するしかないからリスクが大きいのが分っていながら、国威発揚のためにSDR昇格運動を要求するしかない。
習近平は裏で・・内々大量失業を出すなと厳命しながら「ゾンビ企業の淘汰を進める」など言わせて権威筋意見として「ゾンビ企業延命をしているのはけしからんと」政権批判する・・現在の行政府は習近平の何を信じて動いていいのか立ち往生の状態に追い込まれているようにも見えます。
あるいは二人三脚で、ガス抜きしているのか高度な政治背景は不明ですが、兎も角政権中枢がL字型見通しを言わざるをなくなっている状態にあることは間違いないでしょう。
現在の中国の苦境は反日に始まり周辺国の領海侵犯の繰り返しなど無茶な政策決定に原因があるのですから、(領海拡張や、南京虐殺宣伝を大々的展開しながら裏で日本の協力を求めるなど)基本的矛盾を放置して政策変更だけ求めるのでは現実政治を預かる方はどうして良いか判断に困ります。
(今の経済状況では誰が何をやってもドンドン沈んで行くばかり・・モノゴトは一定のところまで行き着かせないと上昇気流に転換出来ません)
難しい政策決定に(責任をとりたくないので)敢えて自分の意向を入れず、傍らから「権威筋意見」としてアリバイ的に批判しておく・・結果うまく行かないのを待って李克強ら現政府当局者の責任追及準備にはいったと読めます。
権力闘争手段として正論を主張しておけば、後から李克強首相の政策失敗を追及して失脚させることが簡単です。
習近平氏は政権を握ると同時に汚職追放を打ち出してその論理で政敵を次々と葬ってきましたが、汚職では追及出来ないダンパ系に対して遂に牙を剥いたと解すべきでしょうか?
実務官僚(ダンパ)まで敵に回すようになると政権が持つのか?あるいは何をやってもどうせ持たないことを前提に最後には李克強らの責任だと言い逃れする破れかぶれ政策と言うことでしょうか?
今年始めの株価下落対応の対応不手際では、証券取引のトップが責任をとらされてクビになりましたが,(マスコミは、本質を書けないのであたり障りのない不手際程度を書いていたに過ぎません)本質は基礎構造の矛盾にあって個人能力が問題ではないのにその場凌ぎをするしかないのが中国政府です。
中国の統計はいい加減で信用がないのが定説と言えるでしょうが、日頃から不正をやらせておくと担当者の首を切りたければ統計数字を誤摩化したなどの責任追及をすれば、簡単に処分出来ます。
いずれにせよ国民のための政治ではなく、権力闘争に勝つことが主目的の政治ではその先も知れています。
もしも最後にハードランデングしたときに、自分は一刻も早く金融引き締めでバブル退治しろと言ってたのに、李克強・政府側が企業と癒着していてゾンビ企業の延命をしていたと言う大義名分にしたいのか?
そのためにV字型やU字型回復は無理・・L字型しかないと言う本音を書いているのかも知れません。

中国の権力闘争激化1

中国が、過剰生産力整理の痛みに堪え兼ねて潤沢な資金供給継続=補助金の積み増しでゾンビ企業の赤字輸出を拡大(赤字分を補助金で補填すればいくらでも輸出可能ですが補助金で本来のコストの半値で輸出される方の国内産業が破壊されてしまいます)する構図については今年5月ののサミット首脳宣言でも槍玉に挙がっています。
中国は外貨準備急減の穴埋めのためにダンピング輸出に頼るしかないのでしょうが、さすがに西欧諸国も中国市場進出メリットよりもダンピング輸出される損害の方が大きくなって来たようです。
中国の人民元防衛のために外貨準備の取り崩しが続くとマサに通貨危機が到来する滝壷が近づきます。
猛烈なダンピング輸出で外貨を稼いでいる筈なのに、5月の発表では中国の外貨準備は279億ドルの減少と日経新聞6月11日朝刊6pに書いています・・中国の発表自体正確ではありませんので本当はもっと減っている可能性が高いでしょう。
翌5月のデータは以下のとおりです。
http://jp.reuters.com/article/china-reserve-foreign-idJPKCN0YT0T7
「北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。」

赤字企業の整理を進めるために、チョっと引き締めて、企業が苦しくなれば金融緩和等を補助して債務拡大→出血輸出奨励策は一種の外貨準備穴埋め策とも言えますが、こう言う自転車操業的穴埋めを今後どこまでやって行けるかです。
中国共産党内部でもこのリスクを無視し切れなくなって来た様子が見えます。
日経新聞朝刊5月23日4ページには、共産党機関紙に政府発表・・現在の金融緩和政策と真っ向から反対する「権威筋の意見」が繰り返し掲載されるようになったと対照表付きで出ています。
私に言わせれば「権威筋批判」は正論ですが、正論であっても政権中枢の党機関誌が別の意見を公式に出すのは異常です。
中国特有の権力闘争が基底にあって、敵対勢力打倒のためにこうした反対論が表面化して来たものと推測されます。
正論が表面化せざるを得ないほど・・現政策矛盾が限界に来ている・・・経済的に追いつめられているとも読めます。
ちなみに現在の勢力関係は、共産党大幹部間権力抗争の結果、習政権による胡錦涛系追い落としが一段落したので中立を保って来たいわゆるダンパ(共産党青年団生え抜き幹部・・李克強首相などテクノクラート系?)が目障りになって来た?状態でしょうか?
中国経済は日に日に悪くなっていることは明らかで、いろんな苦し紛れの矛盾した手を打たざるを得ないものの、いつかはどうにもならなくなることも(私に言わせれば)明らかです。
私は日本としてはその現実を見るべき・・「賞讃ばかりすしていると危険だ!」と言うだけであって、現実政治を預かる者・・中国政策当局者がある程度の妥協政治・・厳し過ぎて倒産続出も困るので、時には手綱を緩めて、ほっと息をつかせてやるのも1つの政策です。
習近平氏への権力集中が進んで、今や政府部門まで共産党が直截口出しするようになっていると言われます。
日本で言えば、自民党と政府が区別されていて、与党からの注文はありますが具体的政治は内閣の仕事です。
中国の場合共産党の分身があらゆる行政府に支部的に存在している点は橋下市長が大阪市で問題化していた労組事務局が市庁舎一部を無償使用している仕組みと似ています。
大阪市の場合場所を無使用使用していた(京都で朝鮮人学校が公園を事実上占拠していたのと似ています)だけですが、中国の場合彼らの給与も税金で賄い(労組専従の場合労組員が給与天引きで負担していますが・・負担するのは労組員だけです)しかも市長よりも権限が強い関係です。
後記のように実際に企業のトップは共産党幹部がつく仕組みです。
このように元々共産党がお目付役的に存在していたのですが、政府と党の役割が次第に分離させて来たのがこの20年の歩みでしたが、習近平氏への権力集中化によって、政府が実務の分らない党指導に直接従属する逆行性が顕著になって来ました。
この記事は5月のサミットの頃に書いていたものですが、政府関与に留まらず個別企業運営にまで党の意見を直截反映させるようになってきたようです。
国有企業内に委員会があるのは元からですが、「国有企業の重要事項決定には共産党委員会の意見による」とする定款改訂が進んでいるとの情報が出ています。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20160720.htmlからの引用です。
2016-07-20 03:27:03
中国、「共産党」国有企業の日常業務まで監督強化する理由は?
ブルームバーグ』(7月12日付)は、「中国共産党、国有企業の監督強化、日常業務にも介入強める 」と題して、次のように伝えた。
(1)「習近平国家主席は、『国有企業』の『国』の部分を一段と強めつつある。乗用車メーカーの一汽轎車(FAWカー)や化学繊維メーカーの中材科技、鉱業の西蔵鉱業発展は最近、経営上の決定に対する中国共産党の監督強化を認める方向に定款を変更した。例えば、これら企業の取締役会には今後、主要な決定前に社内の共産党委員会の意見を聞く義務が生じる。中国のほぼ全ての国有企業の社内には共産党委員会があり、多くの企業では会長が委員長を兼任している。国有企業の幹部の多くは中国共産党中央組織部によって選ばれている」

政府内に浸透するに留まらず企業経営にまで党の意見を聞かないと何も出来ないようにしていることが分ります。
金融・財政政策は政府の専権事項であって党が直截口出しするのはどうかと思われているのですが、個別民間事業の個別運営にまで党が直接口出しするとすれば文字どおり「世も末」です。

国際政治力学の流動化9(IMFのSDR採用)

経済政策を抜きにしてみると、日本孤立化政策の締めくくりとも言うべき最後仕上げであったTPPに日本を招き入れることになったのは,過去約30年来の対日包囲網をやめる意思表示ですから、大方針転換・・従来アメリカの御先棒担ぎをして来た国々にとっては大変な事態です。
アメリカの悪質な反日デマを守るために「戦後秩序改変を許さない」と新撰組みたいに頑張って来た韓国の立場はどうにもならなくなってきました。
幕府・徳川慶喜は大政奉還・自分だけ恭順の意を表して、新撰組切り捨て→鳥羽伏見の役になったのと同じ構図です。
アメリカは今なお強い立場ですから方針さえ変えれば、自分の本陣・連邦議会へ安倍総理を迎え入れて拍手喝采をし、「方針を変えました」と言って,その証しとしてTPP参加を認める・・広島訪問程度でことが済みますが、世界戦略のお先棒を担いで来たサウジやイスラエル、アジアでは韓国・中国が2階に上がってはしごを外された状態で戸惑っているのは当然です。
アメリカの対イラン制裁解除にサウジは怒って原油増産→相場下落攻勢でアメリカのシェールオイル生産の妨害をしていますが,この我慢比べの結果、サウジ自身の外貨準備が急速に枯渇し始めているとも言われています。
韓国は怒ってもアメリカに挑戦する力がない・・暴発して単独で日本を攻める力もないので、米中のハザマで漂流するしかない状態です。
今更スワップ協定お願いや?TPPの仲間に入れて下さいと日本に頼むみたくとも格好がつかない状態です。
西欧諸国は、アメリカにやられっぱなしの点で肚に含むところがありますので、従来からアメリカの意に反する親中路線をとってきました。
今回(5月26〜27)の伊勢志摩サミットを見れば分るように7カ国サミットなのに、会合人数9人で西欧人が(英仏独伊+EU委員長と議長?)6人を占めています。
このように多くの国際会議(理事数)では、伝統の力と言うべきか人数的に西欧諸国は圧倒的多数を占める仕組みになっています。
IMF(結局は西欧諸国多数の理事会になっています)は、中国の発展を囃して日米の反対を圧して強引に昨年末に国際通貨として人民元をSDRに採用してしまいました。
英国財務大臣は、これからは中国の時代として親中政策採用に熱心な動きをして来た等々を見ると、西欧諸国は中国経済に関する客観情報を敢えて無視して中国贔屓を来たように見えます。 
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151214-OYT8T50024.html
015年12月14日 14時28分みずほ総合研究所 長谷川 克之
IMFが11月30日に人民元をSDR構成通貨として採用することを正式に決定すると、中国国営新華社は即座に速報を打ち、「歴史的な一歩」と歓迎した。李克強首相も中国の改革・開放の成果を国際社会が認めたものとして高く評価した。

IMFは昨年11月30日にSDR採用を認めたのですが、今年に入ると世界の銀行の集まりである国際金融協会(金融プロの集まり)が以下のとおりの発表をしています。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20160509.html勝又氏の経済時評5月9日の一部から引用です。
『ロイター』(4月25日付)は、次のように報じた。
①「国際金融協会(IIF)は4月25日、中国から今年流出する資本額は5380億ドルになると見通した。昨年の資本流出額は6740億ドルだったため、流出ペースは鈍化する。IIFは最新の報告で『人民元の急激な下落が、中国との貿易関係が密接な国々など、他の新興国市場国も、競争的(通貨)引き下げを行う事態につながる恐れもある』と警告する」。
②「中国の外貨準備にも懸念が広がる。外貨準備がどの水準を下回れば、中国当局が懸念を持つようになるのかが分かっていない。外貨準備は、2014年6月の約4兆ドルから今年2月の3兆2000億ドル前後に減少した。大半の国と比べると、なお高水準だ。一方、国際通貨基金(IMF)が開発した別の算出方法を用いると、実際の準備高と必要となる可能性がある水準の間に存在する、緩衝の厚さは約2年前の50%から15%に縮小している。IIFは、『この観点でいえば、多額の資本が流出する事態が続く場合、資本規制を厳しく強化しなければ、国の公的準備が不十分とみなされる水準にまで縮小する恐れもある』と指摘した」。
「公的準備の不十分」な通貨とは言わば、ちょっとしたことで通貨危機に陥る通貨と言う意味です。
緩衝保有額・・ゆとりが15%しかないと(平均的決済必要額が85%)・・家計で言えば100万円の預金があるが、毎月85万円の収支で均衡していると言うのでは、ホンの1〜2割の臨時支出があると余裕ゼロ・・ちょっとした誤差でデフォルトになってしまう水準です。
サラリーマンの場合月収が安定してい上に病気や失業に備えた各種保険・災害保険制度がありますが、それでも多くの人が年収程度の預貯金をしているのが普通です。
40歳以上の家庭持ちで年収の1〜1、5割しか預貯金のない人の方が少ないでしょう。
収支の安定しない商売人であればすごくリスキーな資金繰り経営です。
商人の場合には銀行との当座貸越契約で一定枠の補填が予約されているので、目一杯現金制預金を持っていなくとも良いし、国の場合にはスワップ協定制度があります。
中国の場合どことスワップ協定をしているかですが,反日騒動に関連して韓国とスワップ協定をしましたが、国力規模が違い過ぎて中国が1000億ドル単位で資金不足に見舞われた場合とてもその補填能力はありません。
国の場合ギリギリ間に合えば良いのではなく、ギリギリとなれば通貨や株の狼狽売りが起きるし、そうでなくともジョージソロスのようなプロによる先物売りが膨らみ売りが売りを呼んで大暴落・・支払不能になってしまいます。
上記ロイターによればIMF基準によれば中国外貨準備は危機的状況に陥るすれすれの範囲に入っていますが、このようなリスキーな通貨を危機時のアンカー通貨の1つとしてSDRに採用した(日米以外の)IMF理事達は、自己の設定した価値基準を無視していた疑いが生じます。
IMF理事会が自己の決めた基準では、通貨危機が間近に迫っている国の通貨を安定通貨としてSDRに何故採用したかの疑問です。
中国寄りになってからの西欧諸国は従来の価値基準を棄てて、人権侵害に目をつむる、独裁運用する予定のAIIBに参加するなど従来の価値基準に反する行動が続いていました。
人民元のSDR採用決定には裏でかなり不純な政治動機が働いた可能性が否定出来ません。

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