フラット化対応1(差額補填1)

元々技術革新の目標は、誰でも労働に参加出来る社会化を目標とするものですから弱者補助道具・・社会のバリアーフリー化拡大→(ジョブズ氏など特別成功するのを否定しないで)結果平等社会化の動きを認めるとした場合、・・格差反対論は大成功者の果実をある程度みんなに分配して20点の仕事している人も60〜80点の仕事をしている人と同じ賃金にせよと言うに等しいことになります。
大成功者の果実収取割合が大き過ぎると言う批判かも知れません。
(例えばジョブズ氏の大成功による莫大な収益を税で強制徴収するかどうかは別としてその成功の果実が対外収益入金によってアメリカに莫大な還流があった場合、税収入として予算化されてから流通しようが、税率が低い結果、大部分が民間に出回った場合、預貯金や株式購入資金あるいはホテル宿泊費・レジャーであれ、国内還流していれば経済の回転資金になる点は同じです。
この考え方を利用して貿易赤字を気にしないで中国や日本の儲けであれ何であれ、アメリカに還流する限り誰の資金でも同じと言うのが、アメリカの貿易赤字のファイナンス思想です。
2016-6-21「過大消費と消費者破綻(資金還流策)」にパナマ文書関連で書きましたが、仮に中国の利にさとい国民の逃避資金として人民元とドルへの両替が増加していてこれに応じるために人民銀行がアメリカに積んだ外貨準備を取り崩していると紹介しましたが、中国政府が公的資金をアメリカから引き上げてもそれと同額の裏金・・裸官等の逃避資金がアメリカに入って来ればアメリカ国内で回転する資金量は同じです。
上記のとおりぼろ儲けの九割を税でとろうが3割しかとらなかろうが、裏金で入って来ようがその国に儲けた金が入ってさえ来れば(ジョブズ氏がタンス預金していない限り国内で回る資金になる点に変わりないので、税率は本当は関係がないことです。
国家として重要なのは国内消費持続能力・・国際収支の内容実質の問題です。
日本の場合税で取れていないので国家財政上は赤字ですが、国家全体では世界ダントツの純債権国である所得収支黒字として巨額資金が入って来ていますので、国内で資金がダブついている結果金利を払ってまで借りる必要がない・・超低金利になっている・・だからこそ「有事の円」になっているのです・・。
支払原資が、税収か国際売却収入によるかは別として払い能力・・日本の支払持続性を世界が認めているので「有事の円買い」になるのです。
国際経済では税収によるかどうかよりは国際収支の中身が重要です。
日本の国際収支を見ると資本収支は海外投資が多くて赤字になっていますが、これが時間経過で海外からの(投資した金の配当が始まり)収益送金原資になるのですから前向きの支出・この赤字は価値のある赤字です。
(中国や新興国の場合日本等からの投資資金の流入超の結果増えた外貨準備が多いことを自慢していると書いてきましたが、これは毎年収益送金しなければならない一種の債務ですし、送金利益が出なくなればいつでも逃げられます・・新興国通貨が有事・・景況感悪化に弱いのはこのせいです)
所得収支は文字どおり現時点での海外での儲けの国内送金の数字ですが、日本の場合これが何十年も大幅黒字が続いています。
この所得収支黒字を使って、国内社会保障やインフラ投資が潤沢に行なえているので実質格差解消になっているのですから税で賄っているか国債で賄っているかは大した違いがありません。
日本では、潤沢な資金を利用して資源収入や知財・金融収入等も税収に反映し、その資金が高度なインフラ新設や維持資金になって殆ど税金を払わない階層もその利用を出来て恩恵を受けていますが、(これも消費面でのフラット化の1面です)格差是正論はそれに留まらない・直接底辺層に対する現金給付を増やせと言う要求になります。
国費補助によって無償あるいは市場価格以下で施設などを利用出来るだけでは落ち着かないから直截現金給付・・市場価格よりも賃金を上げろと言う意見は妥当でしょうか?
同一労働同一賃金・・同じ仕事をしていても日本人であると言う理由だけで20ポイントの仕事で60〜80ポイント貰う権利があると言うのは背理ですし、働き以上の賃金では国際競争から脱落し結果的に日本経済が破綻してしまいます。
世界的賃金水準平準化・同一労働同一賃金の原理に近づくのは人類平等の精神から見て正しいことですし、日本人だけ高給化を要求することに正義はありません。
市場原理に反した高賃金を強制すれば企業は海外に逃げてしまいます。
正義の形あるいは国際競争の観点から言えば、「20の仕事には20の賃金しか払えないが、資本収入(海外からの送金)があるからこの資金で別途国民に40〜60ポイント配給(一種の生活保護)せよ」と言うことになるのでしょうか?
これは賃金ではなく社会保障の分野ですから、現在既に結果的に似た状況・・社会保障費が国家予算の半分近くになっている現実がこれを表しています。
イギリスは戦後【揺り籠から墓場まで」と言われる高福祉政策をとりましたが、これは新興のアメリカに負けて行く産業界・・労働者の賃金低下に対する穴埋め政策であったと理解出来ます。
この穴埋め資金に苦しみいわゆる「イギリス病」に悩まされていましたが、北海油田収入によって息を吹き返したものの油田が枯渇して来て又苦しくなったことを大分前に書きました。
中国の開放政策以来、先進国はおしなべて新興国の生産活動参入によりどこも賃金下落に悩まされその補填に苦しんでいますが、補填するべき企業利益を上げるのに成功している国(多分日本だけでしょう・・アメリカはいわゆる資金環流策によってファイナンスして来ただけと言うのが私の意見です)では・・海外からの収益送金やアップルやユニクロや孫正義などの巨額収入者が生じるので格差問題となり、格差補填出来ない国→海外展開事業成功の少ない国→もしかして海外送金の方が多い国)では、補填もしてくれないので自暴自棄的いらつきの対象に弱い移民反対論・・スケープゴート探しが盛り上がる状況になっています。
アメリカは基軸通貨国の地位を利用して資金環流でファイナンスし、イギリスは金融市場・シテイの場所貸しで何とか凌ぐ構図でしたが、場所貸しでは大した資金が入りません。
ホテルやレストラン林立する街よりは、高級ホテル・レストラン利用者の住む街の方が一人当たり税収が多く入ります。
いつも書いていますが観光で成り立っている街はホテルなどの経営者以外ベッドメイキングや掃除など(スターバックスが大繁盛していても従業員の大多数は最低生活者になるでしょう)の末端底辺労働者の街になってしまいます。
いわゆるウインブルドン現象の本質です。
アップルの成功と言っても99%?は中国の工場や日本台湾などの部品業者が潤っているのであってアメリカの恩恵は株式配当益でしかない点が、国内部品産業等で健闘している日本との大きな違いです。
米英共に結果的に金融資本的利益に頼る点は同じですから、反ウオール街騒動やとランプ現象・・EU離脱論の昂揚になったようです。

格差とは2(平等化進展)

フラット化は悪いことばかりではありません・・何よりも人権活動家の渇望する平等社会の実現ですから,フラット化に対して何故不満となるのかを考え直す必要があります。
体力差、身長差、不器用さ近視遠視、難聴その他心神のハンデイなどいろんな能力差があってもその差を最小化して同じように仕事をし、楽しめるようにして行くのが近代工業化・・豊かなよい社会の指標であり基礎目標です。
近代工業化の進展とは、これに比例して社会弱者の地位が補強されて男女差や身障者、視力差、高齢者など能力格差を縮小し、(記録媒体も記憶力の補完です)フラット化して行く歴史です。
人権意識さえあれば平等になるのではなく、女性・妊婦や子育て中の人、高齢者や病者・・ガン患者でも働ける医療環境・身障者用の補助具の発達などすべて格差縮小のためにあるといえるでしょう。
クルマ発達は足の早い人遅い人、あるいは荷車引きに必要な人力の格差をなくし・特殊車両・フォークリフトや銃器類の発達も体力格差を軽減したことは明らかです。
ハンドルがパワーステアリングになって、ハンドルサバキが楽になって運転する女性が増えました。
(以前書きましたがコンビニその他あちこちでトイレの設置が進んだことも大きいです)
自動運転技術が進めばもっと年齢差などを補強して行けるでしょう。
人権意識の発達で女性の運転が増えた訳ではありません。
流動食や離乳食や保健食品の発達も消化吸収能力の弱い人と強い人の格差補強であり、リハビリその他ありとあらゆる分野の科学技術の発達は能力格差を補填するものと言えます。
能力格差縮小に起因する平等化進むことと職業分化に目を転じると、重量物取り扱いには腕力不要、製鉄など高熱危険労働も遠隔操作が普通になり、パソコンの発達はそろばん等能力差や筆記能力差をなくし筆跡の上手下手の格差や漢字を読めるが書けない人と書ける人との格差もなくしました。
憲法14条の「平等」とは能力差による結果不平等を認めていると言いますが、他方で出来るだけ各種道具(眼鏡や補聴器あるいは義足の使い勝手の良さ)の工夫によって身体的能力差を克服する試みが推奨され身体能力による待遇格差をなくす方向に進んでいます。
高齢者が移動し易いようにあちこちでエレベーターやエスカレーターや休憩場所を設置しあるいは重い荷物を女性も持てるような補助具・・ロボット系の普及運動もみな同じです。
今流行の在宅勤務も子育てや介護しながら働けるようにする・・いろんなハンデイのある人も働けるようにする・・社会のバリアーフリー化こそが格差縮小の試みの基礎です。
その上工業製品に限らずいろんな分野でのベルトコンベアー方式(精神)の普及によって、事務作業その他の分業化(例えばテレフォンガールの大量雇用など)も進んでいます。
上記のように長い目でみれば、能力格差による結果不平等縮小克服・・スポーツ選手と違い、補聴器をつけていようと眼鏡で視力を補正していようと、薬物療法をしながらでも元気に働いた方が良いルール・・フラット化は抗し切れない趨勢ですし、それが人類の正しい目標と言うべきでしょう。
格差縮小と格差拡大論がここで何故問題になるかのパラドックスですが、フラット化によって、従来20〜40〜70点程度の人が能力格差に応じてピラミッド型の地位・収入を得ていたのに身体能力補完具の発達によって収入差がなくなって来た不満が基礎にあるからです。
10〜20点の人も60〜70点の人と同じ仕事ができるようになったならば60〜70点の賃金にすれば文句なしですが、そうはならないで競合(希少性の軽減)の問題もあって、実際には、みんな平均3〜40ポイントの賃金になってしまうことになり勝ちです。
先進国間の国内競争だけだと一定の閉鎖空間なのでその程度で収まりますが、新興国が参入するようになると国際低賃金競争の煽りで本来の能力水準・・20点の人ができる仕事なら20ポイントの賃金にならざるを得ません。
フラット化される水準が20点〜25〜30〜35〜40点と順次上がって来て従来大卒なら中間層以上・・大丈夫と思われていた人たち(囲碁さえも人工知能に負ける時代です)も単純労働に飲み込まれようとしています。
今や大卒の現場系が増えて来て、エリートだけがフラット化・低賃金化から逃れられている状態ですから、大変なことはそのとおりですが、これを格差反対と言ってレバ済むかかは別問題です。
人間の能力構成は富士山の裾野のような分布のママですが、比喩的に言えば従来5〜60点の人は5〜6合目あたりまで登って能力相応の景色を見られたのですが、現在ではそう言う人もみんな1〜2合目の裾野あたりまで行くと、その次が絶壁になっていて自分の能力を発揮出来るもっと高い場所まで上がれないで景色の見えない裾野付近で単純労働者の仕事しかなくて低迷している状態です。
これはどこの国でも同じですから、格差問題を主張する以上は30〜40〜50〜60点の人にはその点数どおりの展望を開けるような社会・・少しずつの能力差に応じた処遇が用意されないと・・2〜30点の次は80点以上の人しか仕事がないと言われると向上努力する意欲を失う人が多くなります。
なだらかな上り坂ならば2000メートルの頂上付近まで時間をかけて登れますが、500メートルまで登ってみるとイキナリ1000メートルの絶壁があるとそこですくんでしまいます。
かと言って格差をなくすためにエベレスト登頂能力のある人の登山を禁止する・・高度な研究や便利な道具を考案したり新たな事業モデルを考え出すのを禁止するのでは人類のよりよき生活が保障されません。
高度研究者やジョブズ氏や野球のイチローのような特定の成功者・・比喩的言えば80点以上の人の給与・報酬が高すぎないかの批判が格差問題です。
画一的事業化によって、4〜5〜6〜70点の人に払っていた賃金を一律20ポイント前後に落とした差額巨額収入・・考案者利益→知財収入と事業化した資本家の利益→金融関係の高額報酬と一般労働者との格差が目立ち過ぎるようになりました。
ノーベル賞受賞者への賞讃気分でも分るように、研究開発や新規事業モデル開発成功による利益はまだ納得出来るが、この成功者に群がる周辺人そ・・秘書や幹部社員・・金融関係者の報酬が高過ぎる批判がこれの表現です。
格差反対論とは、フラット化とセットになった80〜99点台の高収入者との格差を言うとすれば、有能者がより良いものを造って行こうとする行為を批判出来ない「成功するな」【努力するな」とは言えないとすれば、せいぜいその周辺で働く人を批判するだけとすれば、無理があります。
天才的創業者や発明家がいても、一人では何も出来ないのでその周辺人材が必須でこれをなくす訳には行きません・・真田幸村には十勇士がいた・・勇将の下に弱卒無しと言われるように、これを非難していても解決出来ません・・何となくやっかみの域を出ない印象です。
反対論の中核は中間層が単純労働者化・底辺労働者化して行くことに対する不安・不満でしょうが、庶民や子供が不安・不満の表明なら分りますが、解決すべき役割の政治運動家が不安を煽っても何の解決にもなりません。

格差とは?1

「格差反対」と言うスローガンを掲げてデモをしているだけでは何も解決出来ません。
解決出来ない不満を移民反対論にすり替えていると思わます。
その意味では私の言う移民増加反対論とは目的が違います。
私の移民反対論はクルマの自動運転化その他ロボット化進展によって、単純労働人口が過剰になる一方だから国民レベル底上げが必要・これに苦労する筈なのにあえて移民・底辺労働中心の移民を積極的(受入れ用に税を使ってまで実習)に入れるのは間違い(自然に来るのを排斥しろと言うのではありません)と言うに過ぎません。
これまで何回も書いていますが、格差反対論を唱えるならば巨大な比率を占める格差反対論の中核である「元」中間層の雇用をどうやって創出するかの提案が必要です。
移民排斥は一見労働者が減る方法→単純労働の低賃金化防止になりそうですが、経済原理に反した高賃金政策(中国が強制的に最低賃金引き上げた結果、工場が東南アジアに逃げて行ったのと同じです)は企業が国外に逃げてしまうので結局雇用が守れなくなります。
上記の結果、仮に移民排除してもアメリカやイギリス白人の賃金が上がるとは思えませんが・・。
賃金増狙いではなく職を奪われていると言うならば、移民同様の低賃金でもあるいはきつい職場でも働く意欲があるかどうかにかかってきます・・同等の条件で働く意欲があるならば、企業は言葉も習慣も通じる元々の地元民を優先的に雇うでしょう。
従って「職を奪う」と言うスローガンは自分達の労働意欲が低いことを自己証明していることになります。
わが国の場合介護士でなんであれ鳴り物入りで外国人労働者を受けれいても日本人労働意欲の高さが・・介護士不足が喧伝されていますが実際には、なる人が増えて来たので外国人労働力定着の事実上の排除原因になっています。
補助金を使って誘致しているのに?外国人が定着しないのは受けれ体制の不備だとマスコミが主張していますが、競争力がない以上は定着出来ないのは当たり前です。
この辺は外資が日本に定着し難いのと根は同じです。
先進国では移民に対する差別賃金が許されませんので、他所から来て言語その他職場習慣に慣れていない・総合競争力で不利な外国人の方が、同一賃金を払っても元々の地元民よりも良い労働力になること自体・・余程地元民のレベルが低い・能力以上の賃金を払って来たことの証明です。
西欧では実力上の賃金を得て来た・植民地時代の遺産でやって来たからこそ同一賃金でも移民に負けてしまうのです。
ハンデイのある外資や外国人労働者に負けること自体が自国民との、能力格差が半端でないことが証明されます。
西欧の問題点は何回か書いていると思いますが,労働=奴隷と言う観念が強く出来るだけ遊んで暮らしたい・・日本人のように「元気なうちは死ぬまで働きたい」のとは違い、「早く年金生活に入り遊んで暮らしたい」と言う【日本人からミレバ)倒錯した願望が強く、植民地支配時代に中流層まで貴族のような生活をしてしまった点にあります。
このような価値観の違いがあるののに、マスコミが頻りに欧米基準の「65歳以上人口何人」の高齢化率を繰り返すのは日本には当てはまらないと言う意見を繰り返し書いてきました。
世の中は比喩的に言えば、能力90〜100点クラスと80点台クラス、70〜60〜50点と段階的能力に応じた居場所・職業や収入が決まっているものでしたが、大量生産社会が始まったことから、様相が変わってきました。
事務系で言えば、新人→主事→主任→係長課長補佐など、現場系でも、職長その他古参順に尊敬される社会ですが、大量生産現場で何千人と並んで働くようになるとそこで働く限り基礎能力差に関係なく収入は労働時間に比例しみんな同じ(平等の理想郷出現?)になります。
50年ほど前に私が若い頃に「大衆社会状況」「自己疎外」社会になると言う社会分析が流行しましたが、これが今になって「格差社会」の現実になって来たのです。
等しく貧しく疎外されるのが大衆社会化の想定でしたが、中には健闘して一定数の巨額収入を得る成功者が出て来たので「一握りの大もうけする人とその他大勢」の「格差社会」になったのです。
ベルトコンベア−式組み立て工程の場合、未熟練労働者の役割増加・・熟練度に応じた仕事がなくなって行く・流通系では間で口銭をとる問屋系が姿を消し、パソコン等の発達によって事務系でも何もかもフラット化して来て,中間管理職不要・・あらゆる分野で、言わば30点〜70点あたりまでの才能の人も10〜25点の人と同じ仕事しかなくなって来ました。
先進国は長年の蓄積があったり、産業革命の恩恵を受けない地域に対する搾取?によって、単純労働(2〜30点の人ができる仕事を5〜60点の人にさせていてもなお従来どおり5〜60点の人に払っていた給与をそのまま払えていました。
これが中国の改革開放によって極端に人件費の安い(約20〜30分の1)新興国の参入が始まるとどこで作っても同じような汎用品については国際競争力がなくなり、先進国も25点の人ができる仕事をしてる元60点の人に従来どおり60点の高収入を払えなくなりました。
この結果目に見える形で中間層の没落が始まり一方で孫正義のような成功者・・1強(と言うのは極端ですが上記例で言えば7〜80点以上の強者)の外は皆敗者・底辺労働者になるしかない社会到来です。
フラット社会の到来が明白になったことを格差社会と言っているに過ぎません。
元々10〜20点レベルで低迷していた底辺層や身障者や高齢者にとっては、格差を感じるのは元々であって、怒ることすら出来ない状態・収入が少なくて生活保護などみんなの世話になっていると言う負い目の方を多く感じる関係で不満を言いませんでした。
汎用品製造工程・・大量生産現場と能力格差の関係で比喩的に言えば、25点以上の能力さえあれば、30点も40〜45〜50点の人も皆同じ仕事しか出来ない・・給与も同じ社会・言わば労働の場での格差をなくす平等化の試みと言えます。
上記フラット化の結果、給与が平均の35点になってしまうと元々20点の人には朗報ですが、45点の人似とっては地位の低下ですし、25点の人と同じ仕事しか出来ない・給与も下がる不満を格差社会と言っているに過ぎません。
45点の能力があっても25点の仕事しかない場合本来仕事以上10ポイントも余計給与をもらって得している筈ですが、元の給与から比較すると10ポイント給与が下がったのが不満なのですが、別の角度から言えば能力発揮出来る場がないことを言っているに過ぎません。
そろばんのプロが計算機の発達で一般事務員と同じ仕事しか出来なくなったやり場のない不満のようなものです。
足の強い人も足の弱い人も同じエレベーターに乗れば同時に10階に着くのが不公平と怒っているようなものです。
足が自慢ならばエレベータに乗らないで歩いて上がったら良いでしょうし、流れ作業がイヤなら自分一人で全部完成したら!と言われるのと同じです。
流れ作業よりも良い製品を完成出来るならば、(エレベーターより自分の足で速く登れるならばエレベーターを使わないなど)それをやれば良いのですが、そう言う能力もないからやり場のない不満を持っているのです。

アメリカの軍事費分担要求

軍事費分担問題に戻りますと、トランプ氏の要求は選挙用に単純化して基地維持費の負担増を主張しているだけであって、問題は日本駐留の軍事基地コスト分担だけの問題ではありません。
仮に沖縄からグアムに移転しても南シナ海等のシーレーンを守って欲しいならば、シーレーン防衛分担金を払う必要がある点は変わりません。
(ソマリア沖の海賊対策に、日本も既に自衛隊を出しています)
自分のムラでの犯罪ではなくとも隣村の捜査に協力するように、世界の安全は相互作用で成り立っています。
日常経費である基地維持費の分担金比率上げの外に、有事の出動費はその地域で全額持てと言う時代が来るのでしょう。
西太平洋全域の防衛能力をグアムが持つようになると、当然グアム島だけを守るのに必要な防衛力の何十倍もの軍事力になります。
警察署は自分の建物に対する泥棒除け以上の防衛力を持っているので警察署への強盗がはいらないのと同じです。
沖縄基地が、周辺海域全部の防衛を兼ねている以上は、沖縄(あるいは日本列島全域)防衛に必要以上の軍事力ですから沖縄を攻撃するのには、周辺海域全部と戦う以上の攻撃力が必要になります。
沖縄を狙う勢力にとっては沖縄駐留米軍を一日も早くグアムへ移転させたいのは当然です。
ある家に強盗に入ろうとする場合,隣近所にある警察署がなくなる方が便利です。
米軍がグアムへ行ってもイザとなれば応援に来れれば同じことですが、その場にいるのとワザワザ遠くから出て来るには相応の決断がいるので、実戦的には大きな違いです。
国や地域全体では守備隊がいた方が安心ですが、基地や警察を狙うテロが頻発すると近くに基地があると逆に危険感が増しますし、テロ被害がなくともジェット機の発達で騒音被害などが生じます。
このように経費負担しても良いから来て欲しい・・警察署や軍事基地が近い方が良いのか遠い方が良いのかは、国民の価値観によりますし、時代状況にもよるでしょう。
アメリカは世界の警察官役(軍事的睨み)をやっている結果,(日本など基地所在国に相応の分担をさせて)自国防衛に必要以上の巨大軍事力を維持出来ている・・世界先端兵器の開発や維持が出来ているのですから、世界の警察官(軍事解決)役を単純放棄すると、自国だけの防衛能力維持すらも怪しくなって行きます。
ですから、トランプ氏が大統領になっても誰がなってもアメリカ自身の国際競争力の低下→経済力縮小に応じて徐々に軍事力削減して行く方向は変わらないと思われますが、強大な軍事力を背景とするいろんな利権(軍需産業だけではなく派生する波及効果)と結びついているので軍事力削減は単純ではありません。
そこで守って欲しいならば、分担金を払えと行って、よその国の経費で一定の軍事力維持を図っていく方向になります。
アメリカは日本や独逸に物造りでは負け始めて久しいですが、今残っているアメリカの強みはユダヤ系の得意な金融の外、知財関係ですが知財は高度な軍需産業の存在と密接に関連しています。
軍需産業を縮小すると知財の足腰が弱ってきます。
経済活動の大方が物造りに関連しているので、金融や軍需産業とその関連で派生する知財産業の優位性だけでアメリカの巨大な人口を養うには無理がありますし、多くの人に職場提供することも出来ませんので知財や金融に特化すればするほど大きな人口は無駄=マイナス要因になります。
世上人口ボーナス、オーナス論が盛んで(私はこれに基本的反対であることはあちこちに書いてきました)これにそってアメリカもEUも移民を増やして来ました。
移民の大多数は底辺労働者=平均賃金以下ですから、アメリカや欧州が移民を入れれば入れるほど金融・知財収入で養う人口が増える・・負担が増える一方になります。
知財(アップルの大成功で労働者が増えたのは低賃金工場のある中国であってアメリカでは殆ど雇用に役立っていません)や金融に頼る社会は、一握りの億万長者と無職失業・低賃金労働者の2極分化社会ですから、当然格差社会化が進みます。
イギリスはアメリカよりも1世代以上早く製造業で負けてしまい金融に特化して来たので、格差が顕著になって来た・・これがEU離脱を勢いづかせている基礎的経済背景です。
EU離脱論は憂さ晴らし的に難民流入が行けないと言うスローガンに飛びついていますが、社会構造が中間層不要・・未熟練動労働者=非正規・移民で充分の状態が背景にあります。
マスコミは、「移民反対と言うけれどもこの地域の農業は移民が過酷な労働に耐えているから成り立っている現実がある」と言うイギリス農業の紹介が時々出ます。
工場の低賃金労働も移民が働いているから成り立っている現実→これがまた移民が職を奪うと言う主張と重なっていますが・・・。
アメリカの工賃が中国に負けないくらいに下がっていることをアメリカが豪語し国内製造業回帰を宣伝出来るのは、低賃金労働を厭わない移民増加の御陰でしょうが、裏から言えばその分低賃金層増加・格差拡大に繋がっています。
アメリカの移民排斥を主張するトランプ氏の本音は格差拡大の不満を移民排斥論にすり替えている点ではイギリスのEU離脱論と同じでしょう。
格差拡大反対だとスケープゴートを仕立て上げ難い・精々金融機関が儲け過ぎと言う程度ですが、移民反対の方が標的を作り上げ易い・・大衆をあおり易いからです。

過大消費と消費者破綻(資金環流策)

ちょっと軍事費負担能力から話題がズレますが、軍事費も含めたアメリカの過大(収入以上の)消費について書いて行きます。
ニクソンショック以降のアメリカの消費力維持は国際収支黒字国に付け回す・・いわゆる資金環流によっていたことを連載したことがあります。
資金環流とは何か・・言い換えれば、借金で収入以上の生活を国家ぐるみでして来たことになります。
現在の世界経済における巨大不安の根源は、アメリカが自己資金・対応する労働収入以上の消費を何十年も続けて来た無理に対する不安です。
収入以上の消費をして来た結果,20世紀に入ってから長年の蓄積を食いつぶしてしまった結果の第一次破綻がリーマンショックであり、その余震が南欧諸国の経済危機ですが、アメリカ社会が過大消費を改めるどころか、異次元緩和によって消費の下支えをして来ました。
この点は中国がバブル崩壊ショックを緩めるために国内再投資拡大しているようなもの・・誰も中国に対するような批判していませんが、中国の破綻先送りと本質は同じです。 
アメリカはリーマンショックの教訓を忘れて?過大消費復活モードに入っている=貿易赤字拡大する→資金環流促進が必要だが、このまま低金利が続くと逆にアメリカへの資金環流が縮小するリスクがあるのでFRBは必死になって一刻も早い金利引き上げ時期・・消費抑制+資金環流促進を探っている状態です。
この利上げのタイミングがうまく行かないので、さしあたり対米貿易黒字国に対する円高要求等・・相手国為替が切り上がると輸入物価が上がる→消費抑制になるし赤字も減ると言う目論見・・金利上げと結果は同じ目論みに繋がって来た原因です。
そこが堅実消費社会・・金利の上下はそれほど消費に影響しない日本との違いです。
最近の根源的不安はアメリカの第二次破綻が迫って来ていて、その帳尻合わせに苦しみ出したことに根源があって、それのキッ掛けになろうとしているのが中国の破綻現実化局面です。
中国がリーマンショックによる消費減退の穴埋め役を担当して、環境も何も無視した無茶な消費をアメリカにおだてられるままにやってしまった・・約50兆円投入して無茶な内需拡大・・いわゆる中国の爆買いをした結果、今そのツケ・帳尻合わせが出来ずに苦しんでいる状態です。
例えば個人の懐ならば、1000万円の蓄積があるときに海外旅行などで贅沢して500万円使ってもまだ500万円残っているときに、今年から旅行をやめればどうってことない筈ですが、国家経済はそうは行きません。
個人の場合でも旅行や観劇消費と違って環境健康無視の「ドカ食い」の場合、健康被害や公害が残る・・後始末の費用が必要であるように消費の仕方にもよります。
中国の場合、50兆円消費するために新幹線や高速道路やビルを建てまくったので、製鐵、セメント会社などが設備投資して労働者を雇っているので、来年からゼロです・・これ以上作りませんと言う訳には行きません。
長野オリンピックの後で地元企業が苦しんだ大型判です。
中国は企業をバタバタと潰す訳に行かないので、需要がなくとも無駄な工事をイキナリゼロにしてやめる訳に行かない・・苦しいところです。
個人商店でも商売を辞めようとすれば、相応の後始末資金を残しておく必要・・大企業で言えば工場閉鎖やリストラなどをするには損失計上体力が必要です。
上記例で言えば、中国が50兆円使ってもまだ50兆円残っている段階で縮小に転じても、大混乱回避・・ゾンビ企業延命のために残りの資金供給が必要ですが、残りの金で足りるかどうか・・途中で足りなくなって破産するかどうかが注目の的になっている状態です。
個人の場合計算さえあっていれば良いのですが、国家の場合、市場の信用次第・・本来足りる筈なのに、(政府の信用度が低いと)信用不安でドンドン資金流出して行き、折角の外貨準備を崩して買い支える必要があるので、十分足りる予定だった資金が半分〜3分の1も使えないうちにデフォルトになる危険があります。
今中国はこの過程・・国際金融資本家〜小金持の資本の海外逃避とのせめぎ合いで、外貨準備が日々流出している状態です。
ちなみに5月の外貨準備減少額は以下のとおりです。
[北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。
ロイター調査による予想は3兆2000億ドル、4月末時点は3兆2200億ドルだった。
5月の減少幅は279億ドルで、月間の減少としては2月以来の高水準。

人民元流出の主役はソロスなどのプロと言うよりは、中国を見限ったかその先が危ないと思う裸官その他の中国国内の小口資金保有者の国外資金逃避のために合法取引を装って両替申請する・・人民銀行はドル不足になって外貨を取り崩す繰り返しです。
中国2000年間専制王朝を崩壊させて来た農民の流民化と同じ現象が、資金逃避と言う形で始まっています。
ただ、中国の外貨準備が急減するとアメリカの過大消費をファイナンスしていた資金が流出→消滅する危険があります。
これをアメリカががどうやって穴埋め・ファイナンスするかの悩みです。
その穴埋めにパナマ文書等に始まる・・タックスヘイブン摘発がイキナリマスコミを賑わすようになった原因のように見えます。
アメリカ国内のデラウエア州にタックスヘイブンがあって、そこにはアメリカは手を入れない・・特殊扱いが知られています。
要はアメリカ国内に資金を持ち込むならば、目をつむると言うアナウンス・摘発方式です。
結果的に中国を筆頭にした逃避資金はドンドンアメリカ国内に非合法に集まって行きます。
アメリカは中国政府を資金流出で追い込みながら、自身は非合法資金を集めてでファイナンスされているので、当面金利を上げる必要がない・・消費抑制には上記のとおり円高などを要求すれば良い状態です。
非合法資金の摘発と称して世界中の非合法資金を脅して、非合法資金の摘発を受けない「安全地帯」アメリカ国内に集める政策をとっているのです・・もちろん根拠のない穿った見方です。

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