フラット化対応4(日本の場合2)

幕末に来た欧米人の報告にもあるように末端庶民まで読み書きが出来、好奇心が高い国民性・・、基礎的能力の高い国であり、しかもみんなの力で研究して仕上げて行く(擦り合わせ)社会であることが今になると有利になっています.
みんながチーム参加する社会にするには、最底辺も一定以上のレベルが必要です。
外国人研究者が日本に来てみると、都心の一流大学の学生も地方の新設大学の学生もそんなに研究能力差がないことに驚いています。
極論すれば、言わば65点と70点の間にコンマ以下での差でひしめいているだけのことではないかと言うレベルであって、2〜30点の仕事しか出来ない人は実は少ないのです。
日本では現場力が高いので、戦後農協の指導でアメリカ方式に規模拡大・粗放農業(個々人の技術劣化推進)を真似しましたが、今では農協など当てにしていない・・個々人の工夫努力でおいしい果物や野菜を作るなどして新しい農業のあり方を提案しています。
学位もない田中氏がノーベル賞受賞したことに世界は驚きましたが、地方大学→地方企業での青色発光ダイオード発明の中村氏もそうですが・・こう言う人材はいくらでも現場・地方にゴロゴロいるのが日本です。
15〜25点の人がゴロゴロいてベルトコンベエア−式工場で漸く1人前に働けるようになったに過ぎない他所の世界とは大分景色が違っています。
ヨドバシカメラやコンビニ等に行けば分りますが、今や日本の末端店員レベルはものすごく高くなっています。
昭和50年前後の光景を思い出すと,電気屋さんはメーカー品を並べておいているだけで、その構造性能など詳しく説明する気持ちや能力が全くない状態でした。
その頃から見ると末端店員の基礎レベル向上は著しいものがあります。
農業もアメリカの真似をして粗放農業・・粗雑化に進んだものは失敗していますが、与えられた環境下でもこつこつとおいしいもの作る努力して来た農家は国民から支持されています。
社会の平均をどこに置くかですが、単純労務ばかりにして平均点15〜20点の人でもできる仕事ばかりにしてしまい、5〜6〜70点の人をそこに縛り付ける社会よりは、社会の基礎レベルを上げて、底辺層でも30点くらいの仕事を出来る社会にすることが第1に必要です。
その上で個々人の努力を尊重する社会・・35点の人が努力して36点の仕事をすれば、少しでも報われる社会にすれば、生き甲斐を感じてみんなが切磋琢磨して行きます。
日本では古代から微妙な差でもあれば、それを認めて報われるようにして来たから最末端・アルバイトのコンビニ店員でさえも商品知識を磨く習慣があってドンドン進化して行くのです。
ガラパゴス化とバカにする意見が幅を利かしますが、これは欧米の画一基準、工夫することを知らない社会をモデルとする軽薄な意見に過ぎません。
日本人は殺傷武器でさえ種子島や日本刀を工芸品に変えてしまうし、庭木を盆栽に仕上げるなど独自の世界を作り上げて行く天才集団です。
日本人の基礎レベルの高さは、縄文の昔から母親による丁寧な哺育教育力によるところが大きいと思われるので、保育所・他人任せで子育てするように誘導するのは、長期的にはニッポン民族の劣化政策にならないかの立場から反対してきました。
国際正義・国際的に同一労働同一賃金が実現した場合・・日本社会の能力平均が、30点台を基礎にしていて他国のレベルが20点平均であれば、汎用品でも日本の製品競争力があり、ひいては日本の労働者者が10ポイントよい生活が出来ることになります。
Eu離脱論以来グローバル化、反グローバル化の論争が起きると思われますが、仮に反グローバル化が優勢になって行くとしても長期的にみれば、同一労働同一賃金化の流れは進む一方であると思われます。
人間の移民の自由と流通の拡大とは必ずしも同じではありません。

フラット化対応3(日本の場合1)

EU離脱論に逸れましたが、所得収支大幅黒字下にある日本のフラット化に戻ります。
世界一潤沢な資金を投じて介護や保育所その他の予算を増やす→市場コストより安く利用出来る人が増える=利用者にとっては10万払うべきところを5〜6万円ですめば4〜5万円余計収入があったのと結果同じです。
日本では、社会保障の充実によって所得修正がおこわなれている外、高額所得率も低い・・ソフトバンク社長と副社長の巨額報酬に驚いた人が多いですが、孫氏自身は在日系と言われていますし・生え抜き日本企業ではトヨタ社長でも社長報酬は大したことがありません。
成功者出現を排除しないどころか期待する格差反対論は、論理の行き着くところ従来からの分配率の修正・・成功者の取り分を減らせ→社会保障強化論の焼き直しだったのでしょうか?
日本ではアメリカの真似をして「格差反対」スロ−ガンでは反応する人が殆どいないので民進党の「保育所落ちた、日本死ね!」の主張に落ち着いたのかも知れません。
日本企業の場合事業成功しても、「国民の皆様の応援の御陰さまで・・」と言う精神・・自分一人の働きではないと言う意識ですから報酬取得も程々にとどめますが、(発光ダイオードの中村氏の訴訟が国民支持を受入れられていない原因・・母校に寄付したりいろいろ修正していますが・・)アメリカでは、国民のための企業ではないので経営者は儲ければ儲けの範囲内でいくら報酬をとろうと儲けた人の勝手と言う意識です。
賃金も国際相場との差額を企業が利益を削ってまで支給する発想・・25日まで書いて来た本来の働き以上に上乗せして(例えば10〜20ポイント上乗せ給与を払う気持ち)がありません。
こう言う社会では移民をドンドン入れて結果的に国内賃金水準低下・・国民総体生活水準低下を図って、企業利益最大を図れば経営者報酬が最大化する仕組みですから、従業員や国民全般の生活水準が下がろうともあまり気になりません・・これに対する不満が昨日まで書いて来たEu離脱論の基礎です。
昨年あたりからアメリカが中国工場と国内工場とでは賃金競争力が変わらないと自慢出来るようになった基礎状況ですが、低賃金を自慢されるようでは国民には溜まりません。
アメリカの場合成功も失敗も自己責任を強調する社会のために、いまだに全国民対象とする日本の国民健康保険制度のようなものを作れない状態・・オバマケアーで揉めていることから分るように基本的に社会保障政策は低調です。
自己責任主義の結果、儲けた方はいくら巨額報酬を得ても良いし企業経営者も国際相場以上の上乗せ賃金支給する動機もない結果、格差拡大が半端でなくなりました。
アップルのように大成功する企業あるいは、金融・資源メジャーで大儲けする企業がなければ、格差も生じない普通の低賃金国・・等しく貧しいのですが、なまじ成功者が出る社会だからこそ格差が気になります。
イギリスの場合世界の資本市場として成功したので却って金融関係者との格差が目について不満が噴き出したと言えます。
※イギリスでも金融取引関係者の多いロンドンでは残留派が多かった所以です。
さすがのアメリカも、格差拡大不満・反ウオール街意識の高まりに危機感を抱いた結果、国際相場に合わせた低賃金化進行による生活水準の急低下を修正するために、フードタンプの配給になっていることになります。
食糧券の配給に深夜12時に並ばせられるのではあまりにも国民が惨めですし、それとなく給与水準を上げて行く日本の優しさに比べて政策的に拙劣です。
ところでフラット化の追求・・従来60の技術者しか出来なかった仕事をロボットの補助等で20点の人でも出来る時代・・結果平等を模索するのは良いことですが、他方で努力する楽しみを持てる社会が必要です。
フラット化・平等化達成に反対するよりは、達成されれば達成された平等化の中で少しでも周囲に差をつける努力や意欲の能力差(制服着用下でもアクセサリーなどちょっとした工夫でオシャレする能力)がその社会での格差反対論の強弱に比例します。
江戸時代に奢侈禁止令が出るとそれで美術・文化が衰退するのではなく、着物の裏地で勝負したり言論の自由がないと落首で挑戦したようにその範囲内での挑戦能力の有無によります。
命じられた以上の仕事をしたら損だと言う意識の民族では、50点の人が25点の努力でできる仕事を与えられると楽出来るのは良いが、収入が減るのが不満でしょうが、日本人の場合、5〜60点の人が25点の仕事を与えられると能力が余るので、余った時間で与えられた仕事の改良などに努力工夫する人が多く出てきます。
身分格差の激しかった古代に於いて、地下人から自己実現努力によって武士団が抜け出て来たし、その内武士自身が信長など見ても分るように高度な文化の担い手になって行く・・・・江戸時代には町人やムラの名主階層まで俳諧等の高度な文化をたしなむ・・江戸時代初期から市民が文化の担い手になっています。
生き方として仕事させられていると考えるか仕事をしたいからしているかの違いですが、捲まず撓まず努力するのがスキでない社会では格差反対論で騒ぐしかないのでしょうが、格差反対論が支持される社会かどうかは、時間が余って工夫する時間が取れて嬉しいと感じる社会か否かの違いです。
日本で欧米の流行を取り入れて「格差反対」と文化人(欧米の真似すれば良いと思っていて日本の実態を知らない人が多いように見えますが・・)が叫んでも同調する人が少ないのはこの違いです。
日本は古代から一握りのエリートの指示に従って盲目的に動く社会ではなく、一人一人の納得で動く社会ボトムアップ社会であることを繰り返し書いてきました。
その前提としてどの分野の人の仕事にも神が宿っている・・便所掃除でも皿洗いでも何でも自分の職分には誇りを持って行なう精神が強固です。
大量生産社会到来後も各分野の仕事をしている人は自分自分の持ち場に愛着を持っていて、流れ作業に身を任せていれば良いと言う怠け者は例外で、同じ流れ作業でもこれを如何に良い物にするかの工夫に精進している人が普通です。
その中から多能工が生まれていて、最近ではその方が効率がいいと言われています。
零細規模の現場系でも20年くらい前ではちょっとした機械(例えば自販機)を数十センチ動かすのに、これは電気工の免許がないと出来ないとか水道の許可業者でないと出来ないとかタイルはタイル工が来ないと出来ないとか、いろんな職人が来て頼んだ方はびっくりする・・巨額請求に対するもめ事がありました。
最近ではこんなことでは客が納得しないので、窓枠のちょっとした交換その他リフォーム工事では、多能工独りで大方こなすのが普通になっているようです。
幕末の外国使節の日記などでも、下働きの女性でも諸外国では一々指示しないと働かないが日本人は指示しないことまで気を利かせてやって来ると驚く記述があります。

イギリスEU離脱3(冷静対応とマスコミ・識者の役割)

観光客はその都度食費や交通費その他対価を払っているとしても、国民の負担で作った良好なインフラを無償利用している・・綺麗な街は税金で道路掃除したり植木の維持などしています・・千葉市美術館で言えば維持運営資金として巨額市税を投入しています・・入場料さえ払えば良いと言う関係ではありません。
移民や観光客に入国税(会員制の入会金)を課すべきですが、逆に消費税を免税すると言う変な習慣があります。
私はただ乗りの観光客誘致論はおかしい・・結果的に日本経済が細って行くばかりだと言う観光立国論を繰り返し批判して来ましたが、移民に対しても社会保障などの現物給付さえ減らせば良いのではなく、インフラ負担が重くなっている先進国では、インフラただ乗りも許さないと言う(マスコミには出ませんがイギリス国民の意思はこの)段階に来ていると理解すべきです。
これまで書いて来たのは格差論に関連して移民に対する不満について想像を逞しくしているだけであって、その他何が実際に不満になっていたのか(マスコミは残留派の言い分しか報道していないので)私にはよく分っていません。
イギリス国民の不満が仮に具体論になっていなくとも、大陸と海洋国の価値観の違いが数の力で押しきられていくことが多かったり、EU拡大によってEUの組織が大きくなり過ぎて官僚主導で合理的に割り切れない微妙な国民意識の吸い上げが出来なくなっていることなどの複合要因でしょう。
規模拡大やグローバリズムの不都合を分析して研究することこそ学問の自由を保障された学者の仕事ですが、金融資本を中核とするグローバリストがマスコミ支配しているため、金になる仕事=マスコミ主流に迎合するしかない実態があります。
結果的に・・最近の学者の意見は、左右を問わずマスコミ意見にオモネているだけ・・マスコミに反する意見は発信出来ない・・幅広く出られなくなっていますし、マスコミを敵に回せない政治家の場合なおさら太鼓持ちするしかない状態が長年続いています。
イギリス国民投票結果で驚くのは、与野党共に離脱を主張していない・・国民過半の意志を代弁する政党がまったく知られていない(英国独立党あるらしいですが全く報道されていません・これも日本マスコミの偏頗性の象徴?)事自体が、国民意思を無視した政治が普通に行なわれている・・エリート社会・「マスコミさえ支配すれば勝負あり」みたいな社会の限界を表しています。
独仏では、国民の過半数支持に遠く及ばないのに反EUやグローバリズム反対を標榜する政党(日本マスコミは彼らを極右と翻訳していますが・・)があることからみると、国際的に知られる政党すら育たないイギリスの方が金融・マスコミ支配が強い・・言論の不自由な状態になっている現実を表しています。
金融資本の強いイギリスの場合、政党も学者も全てグローバリズムに表立って反対出来なくなっている結果、マトモな批判論(移民が増えることに対する庶民の不満を吸収する意見)を展開するプロがいないから、投票者の多数を占めている幅広い不満を社会が合理化出来ず、結果的に折角国民投票で国民意思を表現してもマスコミによってナチスになぞらえたり感情論だと非難されても黙っているしかない状態であることが分ります。
今の時代に左右対立・保守党か労働党かの2大政党制など殆ど意味がない・・今はグローバル化進行が良いかどうかのテーマこそが世界的な重大テーマですが、グローバル化反対意見を代表する政党すら存在が殆ど許されない状態になっている・・問題提起することすらを人道主義違反・ヘイトとして許さない・・パッシングして葬る運動をしている中心勢力が言論の自由を主張するマスコミでは矛盾が激化する一方です。
ところで、西欧かぶれがフランス革命を賞讃し学校教育でも賛美していますが、革命が起きるまで矛盾・不満を放置する社会こそ遅れた社会の象徴であると繰り返し批判してきましたが、日頃から弱者の気持ちを汲み上げる政治風土が育ってないから今回も国民投票で「革命的に」ひっくり返ったと言えます。
欧米の民主主義とか人道主義と言うのは底の浅いものです。
日本は古代から庶民意思を汲めない政治をしているのは「恥」「支配者失格」と言う基礎意識でやって来たので革命まで行く必要がない社会です。
赤ちゃんが泣きわめく前におむつを取り替えてやる母親は良い母親です。
グロ−バリスとが握っているマスコミがこぞって「移民は良いぞ!」と囃し立てても裸の王様みたいなもので、言語表現能力のない国民は生活実感で寒がっているのです。
フランス革命の流れを封じ込めるためにオーストリアを中心とする介入がありましたが、離脱を決めたイギリス国民をバカにして封じ込める動き・・マスコミの煽動に乗って厳しい条件を突きつけると大変です。
マスコミ論調は相変わらず「離脱するとこう言うリスクがある」と言う脅しの強調ばかりですが、これは「王様が裸」と本当のことを言うと「どんなひどい目にあうか知っているのか」と脅しているのと同じで逆効果リスクがあります。
移民増加に対する不満ががEU域内に広がっているにも拘らずイギリス国民だけの特殊性として強気で圧して行く・・EUが謙虚に自戒しないでマスコミ支配さえすればどうにでもなると離脱派をバカにし、合理的代弁者が育つのを阻止してバカにして脅迫していると移民反対運動が過激化して行く・・移民迫害の実力行使に走るようになるでしょう。
逆から言えばマスコミがグローバリズム進行を止めたくないために、EU首脳や独仏等の政治家に「ここで譲るな強行突破しろ」と厳命しているのかも知れません。
マスコミがグローバリズム進行・停滞阻止に何故必死になるのかですが、それは憶測に留まるのでまたの機会にします。
政党や学者の応援がないのでどのように自己を合理的に表現して良いかよく分らないイギリス国民・・政治家が国民意思を代弁してくれない状態のイギリス人が大陸諸国・・しかも官僚の多数決で決められるのは「兎も角イヤ!と言う程度しかないのが今のところの意思表示でしょうが、人生は言葉やスローガンだけで表現し切れないことが多いのですから、これを合理的に理解する努力を怠り「不合理だ・底辺層の感情論」だとバカにするのは間違いです。
庶民と国家意思の間に代議士が介在するだけの間接民主制ならばまだしも、国家意思の上に君臨するEU官僚の「合理的』決定でドンドン進むようになると庶民意思との乖離が半端ではなくなります。
これに対するもやもやした庶民の不満を代弁する政党・学者がいないのが、イギリスだけでなくフランスその他あちこちで不満が広がって来た原因です。
勿論アメリカのトランプ現象もその一つです。
成熟した社会であると思っていたイギリスが過激?(赤ちゃんがいきなり泣くように見えても実は合理的な理由があるように、政治家が無視して来たから突然の意思表示に見えるだけですから穏健な主張かも知れません)な反応をしたことを驚き、バカにする意見が(今の日本マスコミで見る限り)大方ですが、成熟した民主主義社会とは日本のように民意をスムースに汲み上げられる社会のことです。
イギリスの決断は逆に民主社会の老舗として民主主義の形骸化(2大政党が2派に分かれている国民利害を代表していない)に対する草の根の不満・・現在の「マグナカルタ」の創設として世界史に残る偉業の始まりになるかも知れません。
混乱の始まりになるかは、今後の動き次第です・・この辺は元ロンドン市長の落ち着いた発言「離脱を急ぐ必要がない」が期待を持たせます。
双方感情的にならずにしたたかにやって行ければ・・EUの抜本的改革(急進的統合進化に対するブレーキ・・1歩後退2歩前進)になり、これを評価した上で結果的にもう一度国民投票して離脱をやめる方向に持って行ければ、それこそ老舗の貫禄です。
また中島嶼国とは違う西欧社会の成熟度を示すことになるでしょうが、EUが強気一点張りで対応すると混乱が待っています。
マスコミ意見にあわない選挙結果が出ると「ポピュリズム」は困ったものだとマスコミ人は形式的評価に終始していますが、EUがいわゆるグローバリストの言いなりに下手な出方をすればイギリス国民が硬化してしまうだけではなく独仏国内の離脱派を勢いづかせて、低レベル応酬になって行くと世界の不幸です。
キャメロン氏は責任をとって辞意表明しましたが、この後を引き継いだ政権が単に不満を煽るだけではなく国民のはっきりしない不満(私流に言えば、インフラただ乗り論に整理して行く)をうまく吸収して合理的テーマ化して行き解決の道筋を示せるかにイギリスとEU再生の成否がかかってきます。
相手を批判だけして行く方式・・相互に不満だけ高まり相互不信を募らせて行くだけならばシリア等アラブ諸国の混乱とあまり変わらない状態になり、EUとイギリス双方にとってマイナスの結果・・衰退の始まりになるでしょう。
外野から見れば、「植民地支配の果実で実力以上の生活をして来たのだから本来のレベルに戻るだけ・・」と言う冷めた見方も当然あり得ます。

イギリスEU離脱2(マスコミの中立性違反1)

EU首脳がイギリス国民投票の結果に責任を負わずにイギリス国民の要求が非常識だと開き直りに徹するとこの後の交渉がこじれてしまい、ドイツ30年戦争のように何十年にわたる紛争の幕開けになる・・妥協を知らないアラブ諸国のように次第に相手に対する非難をエスカレートさせて移民対反移民グループ間でテロの応酬に陥る懸念があります。
昨日まで書いて来たように遺産や海外収益を移民に分配する政策に怒っているのはイギリス国民に限りませんので、イギリスのわがままを許さないと言う対応ではことを誤ります。
移民に過去の遺産を食いつぶされそうになっている不満がイギリスで保守、労働党の党派・思想の垣根を越えた横断的不満になっているように、イギリス1国に留まらずEU全域の水平的問題ですので(移民の多寡と経済力によりますが・・)EUの内部分裂騒動に発展する可能性を書いています。
社会保障給付水準だけ差別(例えば医療費負担率を上げる?)を認めると言ってもゼロにしないし、移民はなお公園や図書館・教育を受ける権利などの各種インフラ整備や維持費を負担しないでただで使えます。
賃金面で見ても、海外からの送金による上乗せ賃金を地元民と同じように移民も貰えるので出身国で同じ工員として働く(汎用品製造工場の場合同一労働性が高く比較が簡単です)のに比べて何倍もの賃金になる(出身国だと高額所得者として税負担が大きいのに先進国だと最低階層として税負担が殆どないばかりか逆にいろんな補助金が貰えたり料金免除・割引対象になる)ので、キャメロンとEUの談合では移民流入圧力はなくなりません。
キャメロン氏は社会保障負担さえ少なくすれば国民投票しても勝算があると思ったのでしょうが、国民はその程度では納得しなかった・・いろんな分野での移民のただ乗り自体を許せない・・「この程度の制限だと移民圧力が下がらない」と言う冷静な認識が基礎にあるようです。
マスコミは残留派に肩入れするために移民排斥と言う感情論は良くないとか、白人底辺層の主張としてバカにする・・貶めるキャンペインを張るのに熱心ですが、昨日書いたように経済合理性のある主張をマスコミが敢えて無視して感情論にすり替えて来たように見えます。
もしかしてマスコミが肩入れしているのではなく、マスコミが必死に守るべき何かがあって、それに肩入れさせられているのが政治家であり、学者・評論家ではないでしょうか?
開票後の常軌を逸したり脱批判論・・世界経済が大変なことになると言う過剰反応には驚いている人が多いのではないでしょうか?
株の乱高下はマスコミが危機感を煽っている結果であって、その内にマスコミの空騒ぎの威力は収まると思います。
開票から一夜明けた25日日経新朝刊「春秋」では「世界史の中でナチスほど国民投票を多用した政権はなかった」と書き出していて、何でも自分の意見にあわないとナチスとごっちゃにする主張には驚きましたが、マスコミも中韓政府同様にいよいよヤキが回って来たのでしょうか?
日経新聞26日朝刊9p「日曜に考える」と言う論壇では、前財務官山崎氏の意見と言うか国民投票の是非に関する誘導的質問には、「憲法改正を超越するような重大な話を簡単にやってしまった」と批判させています。
マスコミは日頃民意重視と言いながら、マスコミの主張に都合の悪い結果が出ると「ポピュリズム」とすり替えるなどまるで魔法使いのようです。
健全な民意とポピュリズムの区別基準を聞いたことがありません。
日本の消費税増税先送り決定もマスコミでは、ポピュリズム批判を展開していましたが、今回のEU大混乱を見れば、世界経済危機可能性を見込んだ政治決断の方が正しかったように見えますが・・。
上記論壇で如何にも対立意見のように並んで書いているエコノミスト岸田氏の意見では、「世界が経済の時代から政治の時代になりかねない」「経済合理性が第一ではなく人々の不満が政治を動かし経済が引っ張り回される世界だ」
と書いていて、一見賛否両論の紹介のように見えながら実際には、いずれも離脱派は非合理感情的主張でしかないと言うトーンで一貫しています・・中立性=両論併記義務に反していませんか?
私に言わせれば、離脱派の方には学者の味方がないので論理的主張になっていないかも知れませんが、「生活を守りたい言う必死の訴え」=経済論理中心であって,人道的きれいごとを言って・移民排斥論と言う感情論にすり替えているのはマスコミや学者の方ではないでしょうか?
「金持ち喧嘩せず」と言いますが経済弱者は、余裕が無いので「難民が可哀相」などとキレイごとを言ってられない状態になったと見るべき・・むしろ離脱派こそが経済合理性中心主張です。
(赤ちゃんがむずかるのは非合理ではなくおむつが汚れているなど客観状態を表現出来ないだけ・これを察する母親の役割の必要性・移民反対論もこれを合理的に言い換えてやる専門家がいないだけです)
移民排斥は可哀相と訴えている残留派の方こそ感情論ですから、中韓がよく使う自分のあくどい行為を日本がやっているとすり替える得意のすり替え論理を離脱派に当てはめてマスコミが応用しているように見えます。
そもそも離脱派に対する非合理な感情論と言うイメージ広告や欧州で極右とマスコミにレッテル貼りされている勢力は、「これ以上の移民は困る」と言うのが当面の中心主張であって今いる移民を排斥しようと言う感情論ではない筈です。
マスコミが移民反対=ヘイトスピーチ論というレッテル貼りして行くと,自分の意志を曲解されることに対する不満で感情的になる人が増えて却ってこじれて行きテロの応酬になって行くとマスコミの期待するようなヘイトスピーチ・移民排斥などが盛んになるでしょうが・・。
移民排斥の感情論は困ったものだと言う中韓政府顔負けのすり替え報道がいつの間にか幅を利かせていますが、これは日本マスコミだけの現象なのか欧米でもそうなのか?
先日川崎で行なわれた日韓断交を訴えるデモがヘイトスピーチ扱いされていたようですが、どこの国と仲良くすべきかは政治論ですが、マスコミの気に入った国と断交しようと主張するとヘイトになると言う論理根拠が不明です。
マスコミの気に入らない主張を全てヘイトとか、極右扱いして行き、そのデモや表現を妨害することが許されると言う風潮が広がると、マスコミって言論弾圧目的の組織なの?と言う疑問が起きてきます。
移民問題に戻りますと、マスコミの期待する方向へ誘導するために滅多にいない赤ちゃんの写真を大々的報道して感情に訴えて世論を動かそうとして来た難民報道のいかがわしさに欧州の人たちも気が付いてしまった状況です。
難民問題の本質はすぐれて経済問題である事は、難民がアフリカ等の貧困国へ向かわない・・EUに入ってもEU内の高賃金国へ向かう実態が証明しています。
難民や移民自体が経済動機で移動している現実があれば、受け入れる方も人道面の配慮をしながらも経済側面重視の議論であるべきです。
これを赤ちゃんや幼児の犠牲を大々的に報道するマスコミの姿勢は本質から目を逸らす狡いやり方です。
イギリス国民投票結果については、事前世論調査の結果の大外れと言い、その後数日の報道姿勢だけ見ても報道の偏り方が顕著ですから報道信用のがた落ち進行中ではないでしょうか?

フラット化対応2(イギリスEU離脱論)

イギリスのEU離脱国民投票結果が6月24日に出ましたが、(イギリスの国際収支の内容を知りませんがもしかしたら?所得収支トントン〜日立など進出してるので配当金など海外に送金する方の国になっている?)マスコミを通じたイギリスの議論を見るとまさに労賃の国際相場との差額補填資金不足モードに入った現象と言うべきです。
海外からの収入が減って来ている国=資金不足に陥っている西欧諸国・・特に南欧諸国では、補填資金が不足しますので、従来20ポイントの補填していた場合に、これを18〜15〜10ポイントと順次下げて行くしかありません。
財政の苦しい街に入ると道路舗装が痛んだままになっていることや個人で言えば庭の手入れが悪くなって行く状態で、最悪の場合モロに海外市場相場の水準近くまで賃金を引き下げるしか解決の方法がありません。
これを怠っていると南欧諸国のようにいつかは大幅赤字→決済不能・・債権国に大幅カットしてもらうなど悲惨な状況になります。
イギリスは南欧諸国のようにまだ、社会サービスや賃金引き下げまでは必要がないとしても、補填資金不足が近づいている〜現実化しているのかも知れません。
減って来た補填資金を有効に使うには補填対象数の極小化・・人口減が合理的ですから移民で入って来た人たちにまで補填するのでは、先祖の遺産を他人と一緒に食いつぶして早くなくなってしまうのを傍観していられない・・納得しないのは当然です。
移民受入れによって労働者が増えれば良いと言っても,下層に入って来ると需給の関係で賃金アップ圧力を緩和出来るだけのことでしかなく、移民だからと特別安い給与に出来ないので、比喩的に言えば国際市場賃金に仮に一人当たり10〜20ポイント海外収益から所得補填している国では、移民であれ労働者が増えれば増える程補填対象人口が増える→独りあたり補填額が減少します。
世界的サッカー選手のような高額収入の移民だと税を多く払ってくれる(シンガポールはモロにこれに特化した移民受入れ策)ので歓迎ですが、移民の多くは下層労働者ですから税を払うどころか受け入れ国の持ち出しになります・・逆から言えば、母国と同じ組立工で働いても母国の何倍もの賃金がもらえるのが魅力で(言葉が通じないなどの不利益があっても)出稼ぎ労働者が増えるのですカラ利害対立関係です。
いわゆる経済難民増加→拒否論が広がっている理由です。
資源や海外収益に頼る国では、下層人口を増やすと分配を受ける人が増えて一人当たり受益が減るので元々の住民にとっては不利になるのは当然です。
日本でも東北大震災以降は原則として貿易収支が赤字・・すなわち国民の働き以上に国内消費している状態で、不足分を海外での企業収益に頼るようになっているのですから、海外収益が月1兆円〜2兆円あっても配給対象が1億人で分配するよりは5000万人で使う方が一人当たり2倍使える計算になります。
ワザワザ外国人を招き入れて分配する必要性を感じません。
過去何万年も一家の働き手が多い方が豊かな生活が出来てきたので労働者が多い方が良いと今も思う人が多いようですが、(いわゆる人口ボーナス論)資源や貯蓄の取り崩しあるいは海外収益や金融取引収益を労働者に分配している社会になると消費人口の少ない方が豊かな生活が出来ます。
比喩的に言えば、健康な労働者でも生活費不足で半分生活保護を受けているような労働者は、多ければ多いほど社会にとって負担になります。
キャメロン政権が移民に対する社会保障水準差別容認を真っ先にEUに要求したことから分るよう、イギリスに限らず西欧の元大国は原則としては既に海外収益または過去の遺産の取り崩しによる補填社会に入っていてるので、移民受入れによる受益の目減りに対する不満が大きくなって我慢出来ない状態に入っていると見るべきでしょう。
補填分野としては大まかに言えば、①広場や公園道路・水道などのインフラ維持費や②社会保障分野と③働き以上の賃金給付の3分野が想定されますが、日本を含めて先進国のインフラが充実しているのは、単年度労働による収入よりは過去の蓄積(植民地時代の海外利権・・古都奈良の大仏・京都の庭園など)世界中からの本国送金が多いからコソ可能になっているのです。
東京が他の自治体に比べて突出して豊か・・インフラが充実しているのは、東京人の労働収入によるのではなく、資本収益が東京に集まる仕組みになっていることによります・・。
東京への人口流入が続くのは(移民同様に)東京の住民は住民税以上の資本収益によって立派な本社ビル街やインフラを整備してくれる・社会保障負担もしてくれるなどで、居住者は自己負担以上の高度インフラを享受出来るメリットがあるからです。
東京に限らず人口の大都会集中が世界的に進むのは、東京ほどではないもののある程度の大都市にはその地域に地盤のある企業本社があって資本収益等が集中する関係があるからです。
賃金と社会負担の関係に入りますと、その社会の労働者が自己の労働に見合った(国際賃銀市場相場・・大規模工場の組み立てライン場合、同一労働・同一賃銀の市場価値が分り易い)以上の賃金を得ている場合、給与請求権は自己の働きよるように見えていて、その実その企業の海外からの事業収益・金融収益や原油輸出代金等で補填されていることになります。
海外収益に頼る場合、企業で言えば本社部門が小さいほど(国家で言えば小さな政府)労働者が少ない方が資本効率が良くなります。
キャメロン政権は上記補填3分野の内「社会保障水準だけ移民に差別を認めろ」と言う緩やかな要求ですから、EUもこの程度は仕方がないか!とイギリス特例として承諾した点では大人の対応でした。
この程度の妥協で不満が収まるだろうという読み・・キャメロンだけではなく、EU首脳も読み違えたのですから、キャメロンだけではなく、EU首脳も責任を負うべきです。

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