新薬や高額機器に対する保険適用が増えて来た結果コストが上がり、あるいは一定額以上は無料にしたり、貧困者の負担を軽くするなどを決めれば、その分それに対応して一般の保険料を上げるべきであって、これが政治的に無理ならば・・国民が同意していないと言うことですから、シビアーに言うと国民意思に反した決定をしていることになります。
「保険料値上げはイヤだが税金で賄うなら良い」と言う意見が論理的にあり得るのかも知れませんが、負担名目が違うだけで最終的には国民負担になる点は同じです。
税なら法人税、固定資産税その他が含まれるから自分の負担率が低くて得だと言うのでしょうが、(可哀相な人を救うのはいいが自分が負担するのはイヤと言う気持ちが背景にあります)結果的に公的施設・文化振興などの整備に回る費用がその分減少するので、国民が薄く広く負担する点は同じです。
ただ、朝三暮四の故事と同じで、目の前で自分のお金が出て行かなければ良いという気持ちもあるのでしょうか?
とは言うものの高額医療に対する保険適用を認めて行きあるいは、可哀相だからと免除対象を増やして行くと、増やした分だけ保険料を上げない限り保険は赤字になるしかありません。
かと言って赤字だから明日から保険給付出来ませんとは言えないので、赤字分は踏み倒せないし、実際に踏み倒していませんので、国税で補填しているので赤字とは言うもの収支は均衡している筈です。
赤字、赤字といつも騒ぐので大変なことになっている印象ですが、経理的に収支均衡しているに決まっているので、収入源が保険掛け金だけか国税によるかの違いです。
国税からの収入分を赤字と騒いでいることになります。
保険赤字が如何にも悪いことのように言う意見は、保険は保険収入だけ賄うべきと言うに等しい論理です。
民間ならば当然条件ですが、公的保険の場合、保険料が保障額比例ではなく収入差による掛け金設計ですから、収入の基礎からして経済合理性を無視しています。
支出の方も掛け金に関係のない病種によって、負担率の差を付けるなど、その他各種優遇措置の積み重ねですから、収支計算のときだけ保険論理を持って来て均衡させろと言うのは無理があります。
赤字と言っても実際には収支均衡していて、収入が保険料だけで賄っていない=不足分=税投入と言うだけですから、不足の原因が社会福祉政策によるならば、その分に税を投入するのが何故赤字と言い、悪いことのように言うのか分りません。
公立小中学校の経営を独立採算にして、税を投入しているから赤字を何とかしなくてはならないと言っても笑い物です。
元々税で負担すべきものは税で負担するのが当たり前のことでこれを赤字とは言わないでしょう。
赤字のうち保険制度に関係ない、福祉政策分は税で見るべきですから「赤字」の中身の分析が必要でしょう。
赤字のうち,保険料をアップすべきものをしない分は保険設計者の怠慢・ミスですし、政治決定で貧者の保険料を下げたり高額医療費の自己負担を下げているならばその分は税で見るべきです。
税で見るべき保険赤字=税投入であるとすれば、これを何とかする必要があると言う意見は、税投入をなくせと言うに等しいでしょう。
何かあると可哀相だと言う報道ばかりで誰も反対出来ない状態・・やっと保険適用が認められたと言う・・如何にもこれまで適用が認められなかったのが遅れた状態であるかのような報道を繰り返していながら、他方で保険赤字を批判する矛盾したマスコミ論調は、子供のわがままを大人が言っているような姿となります。
マスコミは中立であるべきですから、相対立する主張を併記しても良いのですが、併記ではなくある場面では患者家族の苦労を報道してやっと高額医療に保険適用が認められて良かったと言う前向き記事ばかり連載しておいて、かなり経過してから、赤字論を展開する・・このときは社会保険庁の役人がだらしないと言うイメージ記事中心になっていて政治的決定による本来の赤字の原因を全く書かない・・これでは両論併記ではないでしょう。
中立→併記するならば、高額医療の自己負担減額を認めるかどうかのときに「これを認めると国民負担が年間これだけ増える」と言う紹介こそが必要でしょう。
上記のとおり保険の赤字とは殆どが国税注入の言い換えですから、保険の経済原理を離れた社会保障コスト(生活保護者の無料化や障碍者の無料化などなど・・透析コスト)は税で負担すべきであるとすれば、赤字批判=税投入批判ですから、一方で税投入するしかない免除決定に賛同しておきながら、赤字解消=税投入反対の議論自体が矛盾です。
赤字論は透析などの高額医療に保険適用を認めるかどうかの議論のときに紹介すべきです。
赤字分がよくないと言うことは税投入が良くないと言う言い換えですから、収入源のうち税投入をやめるならば、保険料の増額しかないし、これもイヤならば、支出を抑える・・高度医療の適用を否定し高額医療の負担減免措置等をやめるか縮小するのどちらかはっきりした両論併記すべきです。
今の赤字論は、・・「可哀相だ」と言いながら、自分がお金を負担することを嫌がって「赤字,赤字(税投入いや)」と言っているに過ぎません。
マスコミは国民がわがままなので仕方なしにそのとおり矛盾した報道をしていると言うのかも知れませんが、それならば、同時に矛盾記事を載せるべきです・・そうすれば国民はどちらが良いか合理的判断をすることが出来ます。
これをしないのは、マスコミが中立義務を放棄して一方(可哀相論)への肩入れをしているからではないでしょうか?
「高額医療の免除を認めるとその穴埋めがどうなる」と言う子供でも分る論理を報道しない・・見ないことにしていても支出が増える一方ですから、赤字が累積して行くのは当然です・・。
その辻褄合わせに「高齢化が原因だ」とすり替え合唱している姿になります。
マスコミが合唱していて異論が全くないときには、大方怪しいのが普通です。