自然環境・・ひいては小さな生物・弱者も大切にする価値観では日本が必ずしも孤立している訳ではありません。
太平洋島嶼国あるいは海岸線居住民族では、専制権力が成立し難い・・概ね日本的気風が濃厚です。
日本としては、太平洋島嶼国や大陸沿岸諸民族との関係を重視すべきですし、これまでもうまく行っていました。
(元々思いつきコラムですので、その道のプロではありません・・全てどこかで読んだ借り物意見であることを繰り返し書いています)大分前に読んだキリなので本の名称も、忘れていて誤解している部分の方が多いかもしれませんが、・・・)
以下は、梅棹氏のスケールの大きな文明論に触発された借り物的発想ですが、過去においては、自然発展的に海洋型と大陸型とでは違った発展パターンがあったと言うのですが、今回は海洋国中心に始まったTPPと(中央アジアハイウエー構想を主軸とする)中国主導のAIIBが同時期に始まろうとしているのは、偶然とは言え、梅棹氏の論文どおりの展開です。
AIIBは大陸系文明を基礎とし、しかも中央アジアの開発を目標にしている点が象徴的です。
大陸系諸国では閉鎖領域を前提にするので、その域内では絶対権力が成立し易いことから中央集権システムになじみが深く確固とした権力に基づいて指導者に全員がそのママ従う・・秦の始皇帝以来の専制権力・ソ連のスターリン支配や現在ロシアのプーチン強力指導体制などでやってきました。
海洋系社会は簡単に遠くの社会と交流が出来るので、領民も移住が簡単ですし、他所からの情報流入が簡単で閉鎖空間を作れない点が大きな違いでしょうか?
AIIBはこの伝統に従い・・(・・運営方式が中国独善的で不透明と言って日米が批判して参加を渋っていますが・・)元々大陸型は独裁制・・権力集中が基本ですから「そのとおりやるよ!」と言うのが中国の開き直り宣言でしょうから、これを合議制に修正することはあり得ないと思われます。
中国は古代ギリシャのペロポネソス同盟など海洋国(緩やかな連帯)文明を基礎とする米英主導の19世紀以来の海洋型組織(IMFやADB)と違った仕組みを作ろうとしているように見えます。
実はアメリカ自身の本籍は大陸国家(州に分かれていると言ってもインドほどの個性・・独立性がありません)ですが、(大統領の命令一下で動く行政組織・・日英のような合議を基本とする内閣制ではありません)タマタマ体力が余って来たので、海を渡って、西欧とアジアで影響力を行使するために海洋型の仲間入りをしているに過ぎない点も気をつける必要があります。
合議によらない・・専制的権力行使を前提とする・・上命下服構造を基本とする・・大陸型構造で運営するAIIBに米中が並び立つことは不可能です。
イギリスは、周辺に海洋諸国が少ないことから仕方なしに大陸同盟であるEUに半端に足を突っ込んで来たのと同様に当初からAIIBに参加しましたが、対EUに対するのと同様な役回りを期待していると見るべきでしょう。
日本の場合イギリスと違い、周辺に東南アジア諸国や太平洋島嶼国が一杯あることが大きな違いで,古代から大陸とは一線を画して来られた理由です。
アメリカの場合、なお世界の盟主のつもりですからオブザーバー的相互乗り入れをするのが限度で正式メンバーとして中国の下風に立つことは、出来ないでしょう。
TPP交渉はヘゲモニーにこだわるアメリカの意向どおり、当初一強多弱構造でしたが、これを嫌がる島嶼国の尻込みで殆ど進んでませんでしたが、緩衝国として大きな存在になる日本が参加してから一気に交渉が前に進みました。
その結果、アメリカの言い分だけではない一応海洋型システムになっていますが、それでも裁判権など事実上アメリカが握る方向性・・ヘゲモニーを手放さない方向性での決着でした。
韓国がTPP参加に遅れを取ったのは、海洋国日本の経済圏の仲間入りしてから、まだ約100年で、なお大陸性の本籍意識(Nov 20, 2015「民度政体」前後で国内政治は合理的合議が成立出来ない民度であることを書いてきました)が強固だからです。
韓国が中米の狭間でウロウロしている狡い戦略と言うよりは、日本統治下で組み入れられていた海洋経済圏から離脱して(合議でやるよりも、専制的支配の方が似合っている社会状態を含めて折柄中国の経済力が魅力に見えていたこともあって)大陸性経済・文明圏に戻るかの基盤意識がふらついている結果によると見るべきでしょう。
フィリッピンが最後の締め切り日に署名したように島嶼国もAIIBに加入していますが、その本音は相互乗り入れ・除け者にされたくないと言う思惑が基礎です。
海洋国イギリスが、EUに参加したように韓国はイギリスよりも、もっと弱い立場ですから、中国主導秩序に参加するしかないのは長期的必然です。
以上のように、本籍が大陸系文明か海洋系文明かの区別に本質的重要性があるとすれば、「TPPの参加ハードルが高いから中国の参加困難」と言う一般的説明は皮相の見方に過ぎないことになります。
習近平氏による中華の栄華復権目標の宣言こそは、大航海時代以降海洋国家に圧されていた大陸型発展形態の復権目的に本籍があり「その盟主たらん」とする宣言です。
中国にとって、大陸型覇権復権の象徴としてAIIB設立をしたものですから、海洋発展型機構TPPに(膝を屈して)参加するのは無理があります。
ところで、大陸国家が海洋系に口を出すのは無理があり,海洋系国家も大陸国家に口を出すのは無理があります。
(イギリスの海洋系遺伝子を一部継承している筈のアメリカでさえ、戦後の突出した腕力に任せて太平洋と大西洋を越えて張り出していたものの、その影響から逃れたい西欧からはEU創設で弾き出され、中東湾岸では、イラク戦争以来ことごとく失敗して今や収拾がつかなくなりかけています。
アジアだけでは、日本と言う強力なパートナーがあって(今回のTPPもそうですが・・・)何とか格好がついている状態です。
(日本がTPPに参加しなれば、TPPは成立しなかったでしょう)
中国は、(低賃金を利用して世界の工場になっただけですが、アメリカ並みに体力が余って来たと錯覚したのか?)最近海軍力増強して海洋系文明参加・ヘゲモニー発揮に意欲を示しているものの、今のところ大陸系の専制権力行使しか知らないので、アメリカよりも強引過ぎてなおうまく行っていません。
将来中国が本当の大国になっても世界で発言力を真に発揮するには、日本のようなしなやかな大国の協力が必須であることは間違いがありません。
その一方で本籍が大陸にあることを鮮明にした動きが始まっていることから見ると、(2正面作戦は概してうまく行きません)海洋進出能力が殺がれることは確かです。
中国がTPP参加するにしても・・イギリスがEUやAIIBにオブザーバー的参加している程度・あるいはそちらにも発言力を確保しようとするおまけ程度しか意味を持たないように見えます。