民度と政体7(中国2)

外敵に注目させるには対外緊張が必要ですが、これで隣国を威迫して逆に隣国から反撃を受けて負けてしまったのでは却って政権の命取りですから、軍事力を経済実力以上に養成しておくことになるので、対外冒険主義のリスクが高まります。
中国や韓国の民主化と言うか民度を越えた庶民の発言力が高まるのは、日本にとって、歓迎すべきことではなく逆に危険なことです。
何回も書いていると思いますが、日本の明治維新が成功したのは、その前の室町〜鎌倉・平安・奈良〜古代から)江戸時代には庶民レベルの民度が高かったことによります。
新興国の場合、先進国が順次発展して来た生産技術や社会技術を同時的一斉の導入ですから、経済成長が急激である分に反比例して、人間的成熟が追いつきません。
外部から設備導入による(自力開発部分が少ない)借り物経済の場合、民度が経済成長に比例して上がる訳がありません。
自分であれこれ工夫していろんなものが出来るようになると、その分、思考力も磨かれます。
まして意識の変革には、文化は3代と言われるように、何世代もの世代交代が必須です。
借り物技術による急成長は目覚ましい分に比例して、急激に金持ちになったいわゆる成金体質でしかありませんから、文化・政治経験・・総合力としての民度が追いつきません。
法制度もいろんな経験による修正の繰り返しで成熟して行くものですが、後進国が経験もなしにその結果だけまるごと真似してもうまく行きません・・。
この辺がオートメ化した製造設備の丸ごと導入とは意味が違います。
韓国の法制度は私が弁護士になった頃には、日本戦前の民法制度そのまま・・旧法的言えの制度そのままと言われていましたが、民主化後韓国の法改正を見ると果敢に改正して行き、日本の制度をドンドンを追い越していることを紹介したことがあります。
今では戸籍制度さえ廃止してしまっています。
刑事訴訟法関係も長期勾留制度を廃止していて、(200年代に入ってからだと思いますが・・時期をはっきり記憶していません)日本の刑事手続を大幅に追い越していることも紹介しました。
理想的にドンドン改正して行けば見た目は良いですが、これに乗り切れない国民意識にひずみが生じます。
工場設備は先端化すればするほど現場の熟練要求度が下がるので、最貧国でも丸ごと整備導入すればそのまま製造出来ますが・・社会制度は人権屋の言うとおりに理想的に作れば良いものではない・・社会制度はそうは行きません。
中国など新興国は急激な生活水準引き上げが始まると政治意識・・権利要求だけは一人前になりますが、社会能力や政治的妥協能力が低いのが致命傷になて行きます。
社会経験がないので自分の要求が通らないことに対して、(100のテーマで100人集まれば平均して自分の意見は1回しか通りません・・結果的に99%の不満が蓄積されて行き、「政治不安定になるのは必至です。
利害対立・違う意見がありながら、合意して行く智恵は、数千年単位の長い経験値が必要です。
幼稚園児に任せれば最後はつかみ合いの喧嘩しかないのと同じで、自主的合意に委ねれば良い年齢・・レベルがあります。
社会始まって以来・合議で決めて来た経験のない北朝鮮のような社会では、成長しないで貧しいままの方が、政権が安定します。
中国の場合も専制支配下の経験しかない点では、対等者間の合意形成経験がない・・民度は似たようなものですが、国民がある程度成長の恩恵を受けてしまった点で北朝鮮よりも国家運営が困難です。
文化人・マスコミは頻りに、中国を豊かにするのに協力すれば、民主化が進んで対外冒険主義がなくなると言う宣伝をしています。
彼らは、もしかして民度が低い場合に発言力を認めると社会が混乱するかないと言う歴史を知らないか、または世界征服の野望を遂げたい中国の意を受けた国際プロパガンダに精出している過ぎません。

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