中国の過大投資調整23と個人の弱さ8

政権内権力闘争から経済に戻します。
マンション2戸目を買ったり投機して来た階層は、言わば共産党幹部またはこれにコネのある高級官僚から中間層に広がっていました。
政権の安定性は支持層が同心円の外側に広がれば広がるほど安定性が増しますが、マイナス局面では、外側から順に離反して行き中間層にまで離反が広がると危険ラインになるのが普通です。
日本で言えば共産党や公明党その他コア支持層は簡単に変わらないのですが、浮動層・中間層の支持変化が政党の消長を左右します。
中国では、支持層離反を食い止めるために不動産バブル現象が起きていると分っていても、直ちに引き締めて不動産関連事業者や金融関係・地方政府やマンション購入層を切り捨てることが出来ずに、金融引き締め・緩和の繰り返しやマンション2戸目購入禁止したり、緩めたりして試行錯誤を続けて来たのでしょう。
引き締めたり緩めたりの繰り返しではどうにもならなくなって、(外資流入が減って新規流入資金不足が基礎にあるのですから、)昨年末からの株投機の勧誘=これまで投機に関係のなかった庶民を引き込んで新たな資金流入を図ったものと思われます。
城で言えば外郭陣地を放棄して本丸としての共産政権だけ死守するのは最後の最後ですから、外郭陣地にあたるマンション購入・中間層を守り切りたいでしょう。
昨年からの動きは城塞都市の外にいる庶民・農民から食糧を取り上げて城内の食糧備蓄を増やそうとしたような段階です。
資金吸い上げ策として株式バブルを煽って株バブルで儲けた庶民にマンションを買わせて、投機目的マンション購入層・・中間層の売り逃げ・救済してしまおうとするのが今年前半までの動きでした。
株購入の場合は不動産を買うほどの安定収入やまとまった資金のない者も参加出来ると言う触れ込みで、(このために中国では個人の信用取り引き比率がバカに高いと言われていました)中間層の外側の庶民を巻き込もうとする作戦です。
(手持ち金の百倍変えるよ!と言うキャッチセールで百分の1の僅かな資金でも吸い上げてしまおうとする戦略です)
この大宣伝に載って多くの庶民が家族そっちのけで「株未亡人」と言う流行語が生まれるほどのめり込んでいると5月ころには報道されていました。
ねずみ講同様で、当面は新規参入者増加で株価は当面上昇を続けるでしょうから、うまく売り抜けた人が夢のマンションを手に入れられます。
買う人がいると言うことは売る人がいる訳で、既存株主が値上がり益で大儲けしたこと・・バブル崩壊で損をしている階層の穴埋めになった・・バブル崩壊による大量デフォルトの先送りになったでしょう。
庶民の参入資金が尽きるまでは上昇を続けるので、その間に売り抜け出来る中間層が出る・・・・高値づかみして困っていたマンションの売り抜けが出来るし、・・新規参入でマンションを手に入れた庶民は自分が住めば良いのでこれはこれで良い結果です。
早めに参入して早めに手仕舞いした人は儲けだけ手に入れて良い結果になっているでしょうが、そんなこと出来る人はホンの数%あるかないかでしょう。
ねずみ講形式は結果から見れば、損をする人の方が多いのが原則です。
権力支持層が政界や経済界・・中間層を当てに出来なくなって、城で言えば本丸を守る軍部だけを頼りにするようになると、政権末期になるので今は必死でしょう。
もっと弱い庶民大衆に大損害を付け回すようなことが成り立つのは、中韓共に個人がものすごく弱い立場にあるからでしょう。
北朝鮮では張成沢処刑の例を見れば分るように、どんな権臣であっても、権力を継承したばかりの金正恩に直ぐ処刑されてしまう状態です。
中韓両国と北朝鮮ではどんなに権勢を振っていた高官と言えども、専制君主の逆鱗に触れると一朝にして獄門入りの歴史しか経験がありません。
中国では今でも薄煕來に始まる粛清騒動・・周永康・令計画などひとたび政敵になった元高官・幹部の運命がそうです。
このために権力者層にとっては、いつでも国外に逃げ出せるようにいわゆる「裸官」が一般化しています。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC