独裁と結果責任主義1

中国では、底堅いと言われていた上海でもマンション価格が昨年秋頃には下がり始めたことに危機感を抱いていました。
マンション価格下落が全国的に進行している現状に打つ手がなくなってしまい、国有大手企業ばかりではなく中小企業も放置出来なくなって来たことと、ローン金利引き下げや2戸目購入に対する規制緩和するなどによって何とかマンション購入意欲を引き上げに誘導したい意図が見え見えです・・バブル破裂の先送りを策していると見られています。
この辺は昨年夏から秋に書いておいた原稿ですが、その後の経過はこのシリーズで書いているように、今年5月までの短期間に3回も次々と金利引き下げ・・6月以降の株価下落では、各種金融緩和をするしかないほど追いつめられています。
投資家・投機家?とすれば、困って来れば政府が次々と手を打ってくれるので、その間に儲けられると思って、再参入する人が増える・・景況感悪化が報道されると却って政府のテコ入れ期待でマンション購入が増えたり株が上がったりする国民性です。
採算割れで海外投げ売りによって企業業績悪化が鮮明になっているのに、景況感悪化の報道があると逆にこれを理由に政府テコ入れ期待で上海株が逆に急上昇する不思議な国です。
原発事故後に整理ポストに入った東電株式など、その段階から大儲けしようとハイエナのように群がるプロ投資家心理が知られていますが、中国では庶民までこれに競って参加する社会です。
欲深と言えばそれまでですが、これまで書いてきたように専制制度の下で2000年も生きて来たので、「権力は何でも出来る」・・権力の崩壊は何百年に一回で・・それは滅多にないので、権力者や君主の顔色を見て先を競って行動していれば自己保身や金儲け・・出世に繋がると言う生き方が骨の髄までしみ通っているからかも知れません。
政府が株式相場を上げようとしていると知れば我先に買いに走る・・大方損はない・・政府が手じまいしようとしているとなれば、我先に売り逃げる・・この辺で政府がテコ入れしそうだとなればまた買いに走る・・こう言う生き方です。
政府の煽りとおりにして来た以上は、結果が悪かったら政府に責任をとってもらいたいという意識が強くなるようですから、独裁政権・強力なリーダほど責任転嫁出来ないので、被支配者の不満に敏感にならざるを得ません。
我が国で言えば消費税増税による景況感悪化に関してはむしろ安倍政権に同情的世論でした・・その違いを見れば明らかです。
民主国家では思うように行かない分政権の責任も軽くなる・・安全弁になると言う実例です。
もちろん・・指導力がなくて何も決まらないとそれはそれで国民不満が生じてきますので、民主国家ではその塩梅が難しいところです。
自己責任の原理は・個人の主体的判断によって生まれて来るものですから、何事も強制による社会では、主体的判断が許されない・・訓練のないところに自己責任の思想は生まれないでしょう。
個人の主体的判断によって行動する社会では、行動の結果は自分で負うしかない・他人の責任に出来ないので政府責任もありませんが、その判断の前提たる情報が判断を左右することから、その加工や隠匿に対する責任追及社会になります。
民主主義・自由主義社会では、情報透明性が重視される所以です。
他方政府の言うとおりで良い社会では、情報の透明性需要がなく、むしろ政策の強制性に頼っている状態ですから、(統計がデタラメでも)何の不満にもなりません・・「言うとおりする代わりに結果責任とってね・・」と言うのですから・・。
スポーツその他強いリーダーシップが要請される分野では、民主国家においても結果責任主義です。
強いリーダーシップを求める社会では、庶民の方は何も考えずに将棋の駒のように動くだけですから気楽と言えば気楽ですし、言わば能力差や階級差の激しい民度の低い社会向きです。
サムスンなどでは、決断が早いと日本マスコミが賞讃しますが、合議する習慣のない社会ではそれで良いのです。
大量生産の1万人単位の大工場の誘致で成長する段階では、この種社会の方が効率が良かったでしょうが、一定以上の賃金になってこの種工場が低賃金国に負けて来ると、次の段階に進むには、個人の工夫能力等が重要になってきます。
日常的に主体的判断している社会かどうかでこの差が出て来ます。
中韓では大規模工場があっても、中小企業の存在感が少ない所以です。
大企業はサイバーテロや技術者招聘・引き抜きなどで、先端技術を導入出来ますが、中小企業の方はこんなコストをかけていては成り立ちません。
旧ソ連では、人工衛星を飛ばせたのに、日常的な製品であるクルマ1つマトモニ作れなかったのはこの原理によりますし、今の中国も同じです。
ただし中国地域では、古代から商業社会・・都市国家製で始まっているDNAがあるので、商業面での個人才能を侮れないことは大分前から書いています。
中国が商業国家から始まっていることについては、12/14/05「海路の発達と中央アジア交易の縮小」前後を参照して下さい

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