憲法違反の疑いと国会議員の職責3(日弁連声明)

選挙民に対して、内容の説明よりは「憲法違反を許すな」「戦争する国にするな!」と言うスローガンばかりが目につきましたので、実際はどうだったのか「野党声明 民主党声明などのキーワードでネット検索してみましたが、ソモソモ民主党などの党声明が出て来ません。
やっていたのは別働隊のマスコミあるいは個人的ブログだったのかも知れません。
そこで代替措置として強力な反対運動をしている日弁連声明を見ておきましょう。

安全保障法制改定法案に反対する会長声明
本日、政府は、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法等を改正する平和安全法制整備法案及び新規立法である国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定した。
本法案の問題点は極めて多岐にわたるが、次に指摘する点は特に重大である。

まず、以下中略・・・これは、憲法第9条に違反して、国際法上の集団的自衛権の行使を容認するものである。
次に、・・中略・・憲法第9条が禁止する海外での武力行使に道を開くものである。
さらに、・・中略・・その危険性は、新たに自衛隊の任務として認められた在外邦人救出等の活動についても同様である。
これらに加え、本法案は、・・中略・・これは、現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に高めるものである。
以上のとおり、本法案は、徹底した恒久平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法前文及び第9条に違反し、平和国家としての日本の国の在り方を根底から覆すものである。また、これらの憲法の条項を法律で改変するものとして立憲主義の基本理念に真っ向から反する。さらに、憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとするものとして国民主権の基本原理にも反する。
        2015年(平成27年)5月14日
            日本弁護士連合会      
            会長 村 越   進 

日弁連は政党とは違い、基本的人権擁護の立場ですから若干ズレがあるのは当然で、憲法違反論が中心であること自体を異とするにあたりません
ただし日弁連は憲法違反行為があれば追及すべきですが、憲法に改正手続を書いてあるのですから、改正そのものに反対することは、憲法違反行為を自らしていることになり許されませんのでそこまでは踏み込んではいません。
ただ「平和主義に反する」と言う文言は異論があり得るところでしょう。
平和を維持するために友好国との相互協力関係を約束しておくのも平和主義のあり方ですから、どちらの方が平和に資するかは政治で決めて行くべきことであって政治団体ではない日弁連が一方に肩入れするのは、一方の政治勢力加担のそしりを免れないように思います。
以上国会・・法案に対する政党政治家のあり方に付いて、書いて来たのは冷静な人のための意見であって、政治と言うのは、選挙民大衆は冷静客観的に判断する人よりムードに反応する人の方が多いことから、きれいごとを言ってられないので宣伝競争になるのはまだ仕方のないことです。
実際の政治では、マスコミを味方に付けて、大量洪水報道でスローガン・キャッチフレーズを決めた方が勝つ惻面があることは否めません。
結局は国民レベルの問題で、法案内容の議論(利害関係)を隠して、観念的・・「憲法違反を許すな・・」「戦争◯◯反対」と言うアッピールに反応する程度の国民がどの程度いるかで結果・・世論調査の結果などが決まります。
私たちの法律相談でも冷静な事実説明より「相手が酷いとか、みんながこういっている」と言う感情論中心に言い募る人がまだ多いですが、次第に少なくなっています。
日経電子版のニュースを21日に引用しましたが、民主党や野党は実際の利害関係を言うと支持されないのを知っているのでしょうか?
「何故その法案に反対か」の具体的理由を言わずに入り口の憲法違反論に問題をすり替えて「駄目なものは駄目!と言う宣伝戦に持ち込んでいると思われます。

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