独裁体制と情報規制3

預金金利が強制的に安く設定されていたことから中国のインフレ(成長)・物価上昇率等からして、預金の実質マイナス金利状態が続いていました。
これでは普通の人(まして中国人は利にさとい特性があります)が高利回りのシャドーバンキングへの投資?預金?に走ってしまったのは仕方のないことです。
規制された低金利では銀行預金が集まらないので、低金利で集まった?特定資金を国有企業中心に貸し出すことから、一般民間企業は殆ど銀行を利用出来ない・シャドーバンキングやヤミ金融に頼るしかないと言われていました。
シャドー・・まさに影のヤミ?高利回り保障の銀行?が発達してしまった結果、今やこの処理が大変なことになっています。
以前書いたことがありますが、中国民間企業は高金利借入金に頼っているので、一定の成長・・毎年前年比何割増の売り上げがないと高利を返せなくなる仕組みです。
これが、7%以上の成長が至上命題になっていると言われていた金利的基礎でした。
リーマンショック以降実質(公表統計が信用出来ないことを書いてきました)マイナス成長に陥って来ると、高金利を払えない・・ひいてはシャドーバンキング自体の経営が成り立たなくなります。
世上不動産バブル崩壊→シャドーバンキング倒産と言う図式で語られてますが、それは引き金になるでしょうが、その前に一般企業へ高利で貸していた資金が焦げ付くこと・・不良債権率の増大で体力消耗が限界に来ていると言うことです。
4兆元投資では収まらずに次々と大型国内投資連続で先送りして来た延命策でも、どうにもならなくなって来て、最近では統計誤摩化しも限界・需要の強制創造・過大投資継続による需要不足の先送りも限界になってきました。
超低利でうまいことしている国有企業や共産党幹部にコネのある企業グループと恩恵のないグループの二局化があっても、高成長期にはみんなが儲かっていたので、気にならなかったでしょうが、マイナス成長になって、バタバタ倒産・夜逃げが増えて来ると、2極化を是正して、市場金利・市場競争一本(公平)化していかないと国内不満が収まりません。
裸官等の巨額収賄が政府公認で大騒ぎになって行ったのも、同じく不公平感のガス抜き・是正圧力に苦しむ構図と見れば理解出来ます。
現在の収賄官僚の大規模摘発は粛正策・権力闘争であると同時に国内不満のガス抜き策でもあることは、周知のとおりです。
本音は、政敵粛清目的ではあっても、習近平周辺も大っぴらに賄賂収受が出来難くなりますから、不正・不透明収入分野は、粛清の嵐が終わった後も、大きく是正されて行くでしょう。
金融システムを正常化・・資金繰りを(コネの有無にかかわらせず)公平化するには基になる銀行預金金利を正常化するしかありません。
これに向けた第一歩として昨日紹介したウオールストリート記事のように昨年から徐々に金利の裁量幅を引き上げて馴らし運転をした上で、その内自由化するつもりでしょう。
(為替取引の変動幅を広げて来たのもこの流れです)
預金金利幅を需要実勢に応じて引き上げて行くと、銀行の仕入れ価格の上昇になるので、裁量の幅を引き上げられても銀行はすぐにはこれに応じられません。
預金金利が実勢近くなって来る→これに比例した融資金利引き上げとならざるを得ません。
国有企業・幹部コネのある企業だからといって、預金金利以下の低金利融資が出来ず、民間との競争条件が金利面で平等になって行き、この辺での経済民主化に資すること・・再編成に発展します。
超低金利貸し付け受けられるかどうかが死活的重要性があるとコネで借りられるかどうかは大きな意味がありました。
預金金利が市場実勢で決まる→貸し付け金利も預金金利の上乗せで貸すしかない・・市場実勢で決まる社会になれば、コネに頼って借りても、コネなしの借入企業も同じ金利であれば、大したありがたみはありません。
これが怖くて(幹部の影響力がなくなるので)国有企業や共産党大幹部が、金利自由化に反対する仕組みです。
日本でも、族議員が業界援助・・補助金削減に反対する・・農林系議員の例で分るように役に立たないと族議員支持のありがたみが失われます。
独裁政権=政権交代が予定されていない政体では、取り巻きの幹部に自然とコネ期待の特権が集中しますが、この特権維持に必須の装置があらゆる分野での規制による不公平チャンス制度です。
何らかの規制があると不透明なサジ加減が起こり、政権幹部周辺とのコネの恩恵が大きくなる関係・・維持には大きな効力があります。
自由化があちこちで進むと幹部の特権が次第に蝕まれて行く関係・・民主化が進みます。
社会の民主化は「民主化が必要」とか賄賂社会がいけないと言う正論だけで公正な社会に進むものではなく、地道な実態関係の変化があってこそ進むものです。
いろんな分野で外資への自由化があるとその取引に従事する人が実際の動き・・需給関係が肌で分りますが、自由がないと、たとえば、金利の動きが実際の資金需給を表さないので、統計を見ないと分らなくなります。
他方で民間企業がアングラ的シャドーバンキングに頼っていると本来の金利実勢が分り難くなります。
一方でいろんな公式統計は政府が操作し放題の傾向になるのがソ連や解放前の中国であったし、現在中国も同様・・独裁国家の特徴ですが、一部国外企業に解放している分、ウッチャーがその気になれば個別観察可能になっている程度です。
ホットマネー規制だけではなくいろんな分野での自由化・資本自由化、金利自由化、為替取引の自由化等々・・が進んでいないと、ウオッチャーの個別観察情報だけであると、部分からの判断になってしまうので、中国の本当の経済実態が大づかみで分りません。
それが中国の狙いでもあるでしょうが、ホットマネーを解禁すると全体の傾向を分り易く表し易いので中国は怖いのではないでしょうか?
明治時代までの漢方医の診断では、帝王の身体・玉体に直接触れるのは恐れ多いので直接脈が取れないので、糸脈による診断方法しかなかったのと同様で、タクシーで通りかかった工場敷地に輸入鉄鉱石が利用されずに積み上がっているなどの、偶然的現象把握から推測するしかないので、却っていろんな憶測がはびこります。
私のコラムでの中国経済の危険性・・ひいては政治暴発の危険性に関する懸念も、憶測の一種・・部分現象から全体を推測するものでしかなく根拠が薄いことも確かです。
正確な情報・統計がない結果、流言蜚語がはびこって(今風に言えば、百家争鳴で論壇を賑わして良いことですが・・)社会が混乱する原因になります。

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