非政治組織と政治8(労組2)

労組幹部は不当労働行為に対する交渉や闘争には慣れているとしても、労働者の中には、実際に怠け者もいればミスばかりする者もいるし、身体の具合が悪い人・・あるいは乳幼児や介護の必要な家族を抱えている人などいいろんな事情の人がいます。
多様な人が働ける社会にする必要があると3月23日「弱者救済とその方策2」等で書いてきましたが、団体交渉・画一処理体制ではこれに対応出来ません。
こうした場合、会社側もどの程度の処遇をして良いのかよく分っていないし、労組幹部もどうして良いか分らない状態です。
そもそもこの種の解決策を探るには、机を叩いて交渉する古き団体交渉向きではありません。
労組よりは会社から独立したコンサルの出番でしょう。
政治闘争から、多様な問題を抱える弱者?多様なニーズに応じた処遇になって来ると、敵対的な団体交渉や政治闘争で叩き上げて来た労組幹部はどうしてよいか分らないのが現実です。
・・組合に入っている人が組合に相談しても始まらない・・、うつ病その他の弱者は組合を頼らない個人での対応が普通になっていました。
うつ病等で困っているときに労組に相談しても残業時間が多過ぎるのが原因ではないか・・人権侵害だとか闘争的話題に進んでしまって、会社と戦う方向しかないのでは、相談者の意向とミスマッチになります。
子供の保育や介護、ちょっとした怪我や病気で休み休み柔軟に働きたい・・その他で仕事の両立に困っている相談者は、(会社が保育所を作るべきだと言う運動をして欲しいと言うのではなく)会社に責任があるかないかではなく、自分が困っているのでどうしたらよいかの相談に乗って欲しい人が大半でしょう。
会社の方も病気療養者の処遇や介護に困っている人の増加やミスばかりする従業員の処遇などに困っていることが多いのですが、政治闘争の経験しかない労組幹部相手では話になりません。
3月8日以来連載して来た集団指導体制の農協同様に労組の機能が大幅に減退して来ているのです。
これも一種の戦後体制・・ソビエット式集団処理システム崩壊の流れになります。
米軍の強制した戦後レジームは、きめ細かな対応を求める日本民族のレベルに合わないことからあちこちで無理が出ている1場面です。
労組が具体的に困っている労働者の味方になっていない傾向が端的に現れて来たのが、非正規雇用の問題ではないでしょうか?
個々人の困っている状態に応じて心細い弱者のバックになって、組合は個々の雇用条件改善・解決を目指して活動するのが本来の役割です。
その解決の過程で企業内で保育所を作るような解決・柔軟勤務を認める社内制度改正が工夫されても良いのですが、そうした大きな方向へ行くのは積み重ねた話し合いの結果の智恵でよいのであって、最初から政治闘争的になって行くのでは相談者はダシに使われているようでやり切れません。
実際、個人はすぐに(既に始まっている介護など)解決が必要なのですから、数年単位で運動をするから協力してくれと言われても間に合わないでしょう。
労働者のための組合である以上は先ずは、困っている労働者の親身になって相談することが必要ではないでしょうか?
政治的に労働者の味方と言う立場で教条的対応するのは図式的で分りよいですが、具体化に踏み込んで解決しようとすると、きめ細かな理解力がないと、マトモな議論が出来ません。
今日、事務所でタマタマ取り調べの可視化議論を読んでいましたが、公判前証拠開示手続の具体的運用が分らないと弁護士でもなかなか分り難いところがあります。
審議会等では労組代表として委員が選任されていますが、図式的議論ではなく具体的議論ですから、立場によって答えが決まるものではありません。
この意見はお宅の業界に不利ですがどうですか?と聞かれれば反対するでしょうが、今ではそのような分りよい議論はなく、専門分野の個別議論になって来ることが多いので、きめ細かな理解力がないと、議会や連合あるいは婦人団体代表など組織派遣型委員の場合、多くの場合黙って聞いているだけになっています。
プライバシー保護や、人権擁護の必要性のレベルではみんな価値観が同じですから、今ではその先・・このシステム構築をどのようにいじればどうなるのか・・人権擁護とどう関わるかが見え難い議論が増えています。
「人権意識の強い闘士?」として派遣された人では・・これをどうやって守るかなどの具体的議論に付いて行けてない様子です。

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