海外進出と国内生産過剰1

グローバル化=企業の海外工場立地加速によって、工場進出=現地生産分輸出市場が縮小するので輸出で稼いでいた国では、国内生産能力が縮小して行くのが原則です。
中国その他後進国進出の場合、現地政府は輸出産業の進出を求めるのが普通ですので、進出先へそれまで輸出していた分の輸出がなくなる外に周辺国への輸出も失います。
東南アジアの雁行的発展時に日本からアメリカへの輸出代替基地(対米巨額黒字削減による対日批判鎮静化効果が期待されていた)になっていたことが知られています。
タイ王国を例にすれば、車など同国から周辺国への輸出基地になっています。
国内に残った工場の競争力を高めても進出先子会社の工場と顧客奪い合いをして、進出した工場をつぶすわけには行かない・・むしろ進出したばかりの工場を成功させないとならない立場ですから、部品供給をしたり未進出先の新規顧客開拓くらいしか出来ません。
進出先は概ね過去に輸出市場として大きい・・成功している顧客ニーズの確かな地域から始まるので、母国としては大口・優良輸出先を失うような結果になります。
この辺が出張所を営業所にして更に顧客が増えると格上げして、現地法人を設けて行くパターンの商社やサービス系・・成功すればもっと他店舗展開すれば良いコンビニ等との違いです。
トヨタの例で言えば、海外立地・進出を続けていますが、上記パターンで考えれば、(完成品輸出に比べて部品輸出では比率が下がりますので)国内生産を大幅に落とさねばならないのですが、国内空洞化を避けるために国内生産能力を落とさないと言う姿勢で頑張っています。
トヨタほどではないにしても、例えば海外に年産100の工場を立てると、国内生産能力をすぐに100全部縮小するような企業は皆無に近いでしょう。
国内雇用維持等のために海外生産増加=国内生産縮小の何割ずつ程度しか徐々に縮小して行けないとすれば、(1割ずつ人員削減の場合10年間)その差額分の何割かは海外工場に移管していない高級機種への転換・・アフリカ等まだ工場進出していない地域での新規販売拡大に振り向け、それでも補充しきれない分を企業が毎年社内失業者として負担し続け、雇用維持し続けて来たことになります。
この間に内需が縮小するどころか、逆に膨らんで来たとすれば社会全体で大変な負担があったことになります。
この負担分(公共工事に限らず新たな介護関連分野の需要掘り起こしや社内失業を抱え込む企業には雇用助成金が支給されていましたし失業保険や職業訓練など)が財政赤字として蓄積されて来たのです。
財政赤字を減らせと言う論は、言わば「政府や社会全体の負担を減らして経済原理どおり失業者は食うに困っていれば良い・・仕事がないなら仕方ないでしょう」と言う結果主張をしているのと同じです。
日本は長期間儲けた蓄積があるのですから、このような社会システムの変換期にこそイザというときのための蓄えを使うべきです。
システム変換と言えばその最たるものは少子高齢化社会への変換でしょう。
国際平準化によって現地生産化が進むと長期的には輸出産業は縮小して行くしかないのですから、自給自足で足りない分の輸入代金・・海外収益による送金で国民の食糧や燃料その他資源輸入をするには、養う国民が少ない方が良いに決まっています。
海外から送金額が100単位であって国民が100人ならば一人1単位しか使えませんが、国民が30人になれば一人3、3単位使えます。
将来海外からの送金に頼る時代が来れば養う人口が減っていた方が有利に決まっています。
この辺の仕組みは親の遺産が一定のときには、子供の数が少ない方が一人当たり相続額が大きいのと同じです。
この辺は財政赤字で負債を子孫に残すのか?と言うキャンペインに対して、国債発行残高よりも多い個人金融資産を子供が減って少人数で相続すると、却って得する関係になると書いたことがあります。
相続前には、親の介護をするには子供の数が多い方が良いのですが、この過渡期にあって苦しんでいるのが日本ですが、この過渡期にこそ過去の蓄積を使えば良いと言う意見を以前から書いています。
こう言うときに使うために貯蓄して来たのですから、一定期間の財政赤字は当然のことで(親が入退院を繰り返せばお金がかかりますがその内巨額相続が出来ます)これを大騒ぎしているのはおかしい(約30年間経過で多過ぎる老人が退出して人口構成が完成して安定した社会に落ち着くのを待つのが正しい)と言う意見を大分前から何回か書いたことがあります。
自宅や店舗の建て替えのときには、その日その日の稼ぎで足りないし売上減になるのは当然で、こう言うときにこそ長年の蓄積を使って凌いで行くべきです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC