海外進出と国内生産過剰5(人口過剰4)

グローバル化=消費地またはその近辺での生産→供給が究極の姿・・完成型でしょうから、これが完成するまで=海外進出能力がなくなるときまでの過渡期には、輸出用生産能力の過剰化→縮小圧力が止まりません。
この辺の意見は、05/27/07「現地生産化の進行と加工貿易の運命2(人口減少策3)」前後でグローバル化→所得平準化→現地生産になって行くしかないと書いたことがありますので参照して下さい。
グローバル化による海外進出が完成する=調整が終わるまでは、企業にとっては負担(無理して輸出するので利益率減少)が残りますが、なお少しは輸出代金が稼げます。
日本の場合高級部品(炭素繊維など)を現地生産しないで当面輸出して行けますので、この辺である程度稼いで原油や資源・食糧等の輸入代金の一部を稼ぐことが可能です。
これでも不足する分は、海外進出による利益送金で(所得収支黒字)穴埋めして行く必要があります。
グローバル化=現地生産化の進行自体を否定できない流れですから、貿易収支悪化を危惧して海外進出を怠っていると、(配当収益の送金が期待出来ないので)将来輸出自体がドンドン細って行き最終的には輸出が殆ど出来なくなったときに食糧等の各種資源輸入が出来なくなって大変なことになります。
高齢化に備えて誰もが貯蓄に励む・・利子配当(年金)収入で老後生活費を維持しようとするように、国家も輸出で外貨を稼げなくなる日に備えておく必要があります。
後進国では今のところ制限すると工場進出してくれないので寛容ですが・充分行き渡れば、利子配当の本国送金に規制がかかるようになるのは目に見えていますので、この日に備えるには結局自国資源の範囲内で生きて行けるように長期計画で適正人口にして行く努力が必要です。
人口縮小は数十年単位で時間がかるので、その間の食い扶持として利子配当収入が重要だと言うだけで永久に有効と考えているのではありません。
この辺も大分前から何回か書いています。
マスコミを見ているとFTA等の流れで貿易は自由化→活性化する一方のように見えますが、この動きが完成すると逆に輸出入数量縮小を促進・・国際貿易停滞するための動きにもなって行きます。
貿易とはある地域にないものをある地域から持って行くことが原型ですが、産業革命以降は、工業製品を品質の割に安く作れる国から安く作れない国・あるいは新製品開発した国から新製品のない国への輸出行為が主流になってきました。
グローバル化が進むとどこにでも需要あるところに先進国の先端工場が立地されて行き、どこでも似たようなものが生産される社会になります。
世界中で同じような製品が存在(現地生産)する社会になれば、産業革命以降主流になっていた工業製品の輸出入貿易が主流の地位から転落して、再び資源移動が交易品の中心になる時代が来ます。
(完全になくなる訳ではありませんが・・新製品をどこかの国で先に作ると伝播が早くなると言うだけです・・iPhoneをアメリカで作って50年も独占していれば50年間貿易品ですが、開発発表と同時くらいに中国で生産が始まる時代です)
この辺は先行者利益の期間が短くなっていると言うテーマで、05/26/07「現地生産化の進行と加工貿易の運命1(先行者利益の寿命)」で古代には文明の伝播に数千年かかっていたのが、次第に短期化されて来た経過を紹介しました。
こうなるとそこに存在し(作れ)ない希少品だから売れるのではなく、新製品開発後短期間で世界中どこでも作れる時代が来ますので、国際競争が加速すればするほど僅かのコスト差や現地顧客ニーズキャッチ差が現地販売競争の差になります。
インスタントラーメンで言えば、当初日本の味にちょっと工夫しただけでで輸出できていたでしょうが、時間が経つと現地人の好みに併せて行かないと似たようなものを作り始める現地資本に負けていきます。
工業品も消費地から遠く離れた本国で売れ筋の研究や指令をしていると・・あるいは遠くから部品調達していると時間差で現地進出した競争相手の企業に負けてしまいます。
厳しい競争を勝ち抜くには、現地生産だけではなく、現地密着したデザインや研究開発をするしかありません。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC