GDP分配論に戻ります。
労働分配率が低く法人の儲けが多いのに、法人税が安く所得税や消費税等労働者個人の納める税の多い国(韓国)では、金融資本を持たない人・階層が痩せる社会になります。
まして外資中心(株式や金融商品保有者が外資中心)社会で法人税や、利子配当課税を安くするのでは、所得の国外移転奨励税制になります。
GDPが一見大きくても、外資が多くてGDPを分配したお金の大半が外国へ逃げて行く社会では国民生活は悲惨です。
豊かさや国力がGDP(国内総生産)だけでは(外資比率を見なければ)計れなくなっているのです。
日本の国力は国内総生産だけではなく、国外を含めた(日本企業の)総生産で計るべき(海外生産比率が5割を超える企業が多くなっています)だと言う意見が最近出ているのはこの意味で正常です。
世界中で法人税が安い国では外資率がドンドン高くなるし、逆から言えば外資比率が一旦高くなるとその影響力が強くなって、利子配当課税や法人税率引き下げ圧力が強くなる一方になります。
外資比率が上がって経済植民地みたいになって良い国・なりたい国はどこにもありません。
それでも後進国では先端技術導入のために、背に腹は代えられないの(鄧小平の言う「韜晦」戦術)で実力を蓄えるまでの間外資導入に躍起になっているに過ぎません。
外資導入必要性がない国では、参入の敷居が高いのは理の当然です。
名刹でも観光で生きて行くためには誰彼なしに「いらっしゃい」と言わねばなりませんが、本業で施設や組織を維持できていれば、敷居(参入障壁)を高くしておいて特定の関係者だけ国宝級の奥の立派な部屋に通してやれば良いのです。
このコラムでは観光立国政策は、本業の衰退を前提にした亡国の第一歩であって望ましいことではないと批判してきました。
我が国の法人税率(敷居)が諸外国に比べて高いのは、世界標準から見て恥ずかしいことではなく、国内資金あまりで外資導入の必要性が低かった・・その上先進技術国ですから、先進国の技術導入の必要性もなかった・・健全な国であった証拠です。
最近の報道では、日本でも外資比率が30%に達したと(もっと比率が上がったら良いと言うような報道ぶりですが・・)言われていますが、今後外資比率が上がればあがる程、法人税減税の要求が強くなり・労働分配率引き下げ要求が強くなって、一種のがん細胞みたいになります。
日本では藩主と領民が一体化して(藩主が自分の懐だけを肥やす目的ではなく)特産品の開発に励んで来た伝統がありますが、外資比率が高まると企業の得た付加価値を労使双方プラス現地社会・地域で共有する社会ではなくなります。
彼ら外資にとっては、生産・物流に必要な道路などのインフラ・・この典型的投資は工場団地造成とそこから港湾等輸出入基地との直結道路整備や外資関係者宿泊用や食事用の大手系列ホテル整備などには関心があるでしょうが、外資に関係のない庶民街の生活道路など裏道の充実などの投資資金や教育投資・保育所補助金、社会保障資金・景観保持コストなどを負担したいインセンチブがありません。
この象徴的施策(進出企業にとっては進出に直結しない周辺地域底上げまで面倒見切れないと言うこと・・)が深圳特区などの特区制度です。
特区制度は古代からの都市国家のやり方・・・進出先では、先ず橋頭堡として城壁でかこって特別地域を作ったことの現在版です。
中国古代は、我が国のように農業集落から始まったのではなく、商業都市国家・・未開地に進出してはそこに橋頭堡として砦を作ったことが始まりであったと書いて来たことがあります。
未開地に進出しては先端部分に砦を作って駐屯地を設け、鶏鳴にあわせて朝城門を開けて夕刻市が閉まれば城門も閉鎖して安全を守るやり方でした。
中国が開放経済化したときに提案した特区制度は、自分の方が日本等に対して未開地・後進国になったこと認めて、進出して来るのは怖いでしょうから特区・・「昔未開地進出用に作っていた昔の砦を自分で用意したので、この中で工場操業してくれたら安全です」と言う逆バージョンを提案したことになります。