中国経済の動向5(単純作業・模倣社会から抜け出せるか?3)

5月5日に紹介した日経論文(5月3日付)のように共通市場化が進めば進むほど開かれた社会になって良いことではありますが、共通市場に出回る部品・商材は誰でも入手可能ということですから、これの組み合わせの工夫程度ではローエンド製品に限定されることと、既存部品の組み合わせの新規工夫による新製品創作の効果は多寡が知れています。
(思いつき程度ですから、陳腐化が早く持続的発展には不向きです)
社会の発展にとって実際に価値があるのは、従来の部品では不可能であったことが部品の小型化や耐久性の強化あるいは高機能化等の研究によって、全く別のものが作れたり新技術が創出され、新たな分野に応用出来るようになることによるものです。
電気自動車や太陽光発電・医療技術等々全て部品改良・新製品開発の積み重ねで新たな内視鏡手術・放射線・レーザー治療・ハイブリッド車・・ユニクロのヒートテック等が出来るようになったものであって、既存の汎用部品を組み込めば出来るという発想では新たな製品は生まれてきません。
一時期、今後電気自動車になれば装置が簡単になるので誰でも簡単に参入出来るという報道が充満していて、実際中国でどこかの企業が参入しましたが、失敗に終わっています。
電気自動車と言っても電池その他各種部品を改良に改良を重ねないとやって行けない(・・しかもそれは企業秘密であって共通部品市場に出回るのはかなり遅れてからです)実態は、今やだれでも知っているとおりです。
(日本の最も得意とする分野です)
・・市場に出回っている既存部品組み合わせという当時のマスコミの発想自体・・5月3日の日経新聞掲載論文も同じですが、社会発展の実態を理解しない議論だったことになります。
既存部品の組み合わせ等による新商品企画では、本質的に模倣の域を出ませんから、外国から新部品の絶えざる導入がない限り・・自前では作れない社会のままということですから将来性がないでしょう。
(ココ数日ネットを賑わしている・・反日教育に邁進している筈の韓国の教科書の表紙の幸せそうな家族写真が、実は日本人家族の写真であった・・その写真家は誰だ→日本人写真家→了解を得ずに使っていたという事実が次々と明るみに出ていますし、中国の北京5輪でもテーマ音楽が日本人大分前の作曲だと分ったことがありましたが、このようにあるものを継ぎ合わせる文化では剽窃が当たり前になります)
この点はいろんな産業の盛衰に共通しています。
低賃金による海外生産開始・・海外展開による新発想で新機軸を出して一時日の出の勢いだった企業がいくつかありますが、誰よりも先に着手したり先鞭を付けるだけでは、他社が真似をし始めたら優位性がなくなります。
最初にラーメンにトウモロコシやキクラゲを入れたりして目新しさで販売を伸ばしても、周囲が真似したらおしまいです。
(他社が真似出来ない秘伝の具を入れるなら別ですが、どこでも売っているような具材を入れるアイデアだけならば・・共通部品市場に頼るということは汎用品に頼るという意味です)
結局は味の良い方に負けてしまいますし、トヨタは海外展開が他社よりも遅いことが多いのですが、結局は海外でも最後に勝つのは元々の技術力・開発力の違いです。
いろんな業態でも一番乗りの企業は当初は有利ですが、直ぐに同業態に進出した同業者との技術力・販売力等の差になります。
スーパーダイエーは草分けとして意味がありましたが、販売実力が弱いので結局は後発のスーパーに負けてしまいました。
日経新聞掲載の上記論文は中国の発展性を書いたつもりでしょうが、商業民族である中国人はそもそも既成品の組合わせしか関心がない民族性・・汎用品すらも自分で作れないし、作る気持ちが元々ないと言う私の中国に関する歴史認識を証明する結果になっています。
これでは、ローエンド製品の末端組み立て産業社会からぬけ出すのは困難でベトナム等の後発低賃金国に投資が逃げて行くしかなく将来は暗いでしょう。
既製品の組み合わせ(中には写真の切り貼りや楽曲の挿入等剽窃も簡単に入り込みます)で安易に金儲け出来るので、如何にも自前の技術が身に付いたかのような錯覚にとらわて見誤ります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC