為替相場が規制されている国の場合、通貨相場の動きを見ても数年〜5年程度の短期間での国力変化のメルクマールにはなりません。
たとえば、規制値上限を実勢相場に大幅に遅れて引き上げても引き上げても為替相場が上限に張り付いているからと言って、現在国力増進中とは限りません。
4月28日に書いたとおり過去の調整残りの差を埋めるエネルギ−が溜まっているので、貿易収支や資本収支が実際にはマイナスに転じてからでも一定期間上がり続けるからです。
数年単位の瞬間速力・短期的国力変化を見るのには、貿易収支統計が一番簡明ですが、中国の場合統計発表自体が信用出来ない・・・実態を表していないのが問題です。
大手マスコミや日本政府は中国の発表数字を怪しいと思っても、中国の統計は信用出来ないと公式には言えないのと中国びいき(マスコミは共産圏は素晴らしいと言うスタンスで一貫していました)の心情から、統計発表どおり中国はすごいすごいと賞賛一方でやってきました。
戦後北朝鮮は地上の天国とマスコミが賞賛したので、これを信じて多くの北朝鮮系人が帰国してくれたし、中国で5000万人も飢え死にしているときに中国政府発表どおりに大躍進政策の大成功を報道しまくっていました。
その上、短期資金移動は規制されているのでその流出入はアングラ的・・即ち貿易代金決済の衣をかぶって・海外から輸出入代金決済資金名目でかなり流出入していると言われます。
輸出入統計上の黒字は(当局による発表数字の誤摩化しがあるだけではなく)この紛れ込み入金部分が真実の貿易黒字に上乗せになっている面があります。
資金引き揚げが始まっても為替相場に直ぐに反映するのではなく(規制されているので裏金として逃げるので公式に反映出来ませんが)、表向きは貿易黒字の減少として現れるのでしょう。
(しかし貿易統計自体が粉飾だとどうにもなりません)
ホットマネーや長期資金の直接的な引き上げは別として、毎年1000億ドル規模で流入していた新規資金流入が1〜2割減るだけでも、毎年一定量入って来る前提で運営されて来た中国経済には重荷・・ボデーに効いてきます。
中進国の罠にはまりそうになっている中国経済に関して、長期投資資金の引き上げが始まっているのかの関心があるところですが、これに関する直接的な統計発表はあり得ないので憶測するしかないでしょう。
間に大分いろんなコラムが挟まってしまったので6月8日ころに先送り・紹介しますが、昨年は3、7%外資流入減だったという勝又氏の論文引用の記事発表の意味は資金流入より引き揚げの方が多かった結果・・収支として純減した結果を言うのかも知れません。
貿易統計の誤摩化しに関しては・・最近では台湾の対中赤字が約1%減だった発表に対し、中国の発表では対台湾の貿易黒字が何割も増えたとなっていることや、対香港では同じく10倍単位の誤差が生じていること・・中国の貿易発表の信用性について、大々的に報道されています。
(ただし、この辺は2週間ほど前のネット報道を見たことによるうろ覚えですし、正確には知りません)
相手のあることでもこんな具合に虚偽発表して臆するところがない(北朝鮮同様に何でも相手が間違っていると言い張って終わりです)のが中国ですから、国内諸統計にいたっては相手のいないことですから、粉飾のし放題で何が正しいか誰(ソ連崩壊時のゴルバチョフのように中国の権力者ですら)にも分らないでしょう。
現在の中国の経済力・・方向性を見るには、(成長が止まりつつあるのか?一旦止まってもまた動き出すのかは別として)先ず「現在停滞し始めたかどうか」を知るには、中国の貿易統計を含めた各種統計は(粉飾が多過ぎて)全く当てになりません。
中国の貿易統計を含めた各種統計が当てにならないので、比較的経済動向を敏感に反映し易い上海株式市場の総合指数の変動・・グラフで見るのが最も近い傾向(ストックは別として傾向だけ)を表している数字になると思います。
(まさか指数作成データ処理を操作しているとは思えませんが・・?、その内経済失速が鮮明になって来ると新たな投資が入らなくなるといよいよ困るので指数作成用のデータ改ざんが始まるでしょう・・)
これはアナリストが独自にデータ入力してチェックすれば判明する理屈ですが、日本で言えば個別の証券会社は自社の取引履歴しかないので、東証から全部のデータを貰うしかないのと同様で、データをどうやって中国政府関係から入手出来るかと言うところです。
結局は自社と他社・数グループ機関投資家間で連携して内部データ・・その日の出来高や騰落率等をつき合わせて、中国政府関連機関発表総合指数との乖離を指摘して行くしかないでしょう。
中国政府は、貿易収支のように多数にのぼる他国の公式発表との食い違いでさえ自国データが敢えて正しいと言い張る国ですから、民間のデータなど信用出来ないと歯牙にもかけないでしょうし、データ発表しようとする金融機関には認可取り消しを匂わせて脅すのでしょう・・。
アメリカを後ろ盾にするグーグルでさえ脅しに屈したと言うか、結局中国市場からの撤退を余儀なくされました。
上海株式市場参加資格は、後で書きますが、A株市場と言って中国政府の認可を受けた機関投資家しか参加出来ませんので、何やかやと言いがかりをつけて認可取り消しや更新拒絶するのは簡単です。
個人なら株を買えなくなれば買わなければ良い・・「他所で買います」と言えば終わりですが、機関投資家の場合、現地事務所を構えて多くの従業員を雇用し、コンピューターなどの巨額投資し、宣伝して顧客の注文を抱えていますので、「ア、そうですか」と簡単にやめる訳には行きません。
中国ではまだ法治国家とは言い切れない・・司法機関外の権限が強烈・・法による保護は殆どありません。
薄煕来事件の帰すうを見ても明らかなように、裁判も何もなく闇に葬られたままです。