紙幣の強弱と真の国力1

貧困層と言えども需要の多くは、今では食料品ばかりではなく工業製品の比率が上がっていて、工業製品は工場増設や輸入でいくらでも供給出来るので需要が伸びても物価(例えば車やテレビ・携帯の値段)は上がりません。
供給増の困難な資源・不動産バブルになるのが普通です。
我が国でも今回の紙幣大量供給に先ず反応するのは、不動産価格や株価である点は前回のバブル時と同じです。
ただ、我が国の場合4月21日に書いたように世界一の低金利=紙幣の価格競争力が高い・・金利の低い国の紙幣が輸出競争力・世界最強ですので、余剰資金を海外へ押し出す力があって、国内余剰資金が行き場を失って前回のような大規模なバブル再来にはなり難いでしょう。
世界で日本の低金利政策に対抗・・負けずに低金利に出来る国はない・・低金利競争に勝ち残れるか否かこそが、現在での国際競争力・国力の集中的表現です。
欧州危機の再燃あるいはアメリカ経済の変調の兆し・北朝鮮情勢の緊迫等々・・リスクがあると怯えるだけで、その日のうちに円が高くなりドルが下がるようになっていることから分るように、マスコミが何と言おうと今や円は世界最強通貨です。
米ドルが基軸通貨のママだと世間ではまだ言われていますが,世界の金利水準の最低を画するのは日本の政策次第になっている・・どこの国も日本より低い金利水準の設定が出来ない時代が大分前から来ています。
この辺の意見は最近では「基軸通貨とは」5Published April 14, 2012前後で書いている外、リーマンショック前からこのコラムで書いています。
日本国内で日銀が公定歩合→基準金利設定で銀行貸し出し金利を規定し、紙幣需要を規制していたような役割を、日銀が世界各国に果たしていることを未だに誰も論じません。
個別の物品で言えば、どこまで価格競争に耐えられるかの基準・・これが競争力の基準ですし、紙幣の競争力はどこまで低金利に出来るかの競争です。
この競争力を規定するのは本当に保有している外貨・・他所から引いて来た資金ではなく純債権額の多寡によるしかあり得ません。
アメリカは戦後世界で最大の純債権国であったことから基軸通貨の地位を獲得していたのですが、純債務国に転落してからも基軸通貨の地位を維持していると世界のマスコミが認めているのはアメリカに遠慮したまやかしでしかありません。
ちなみにアメリカが純債務国に転落したのは、以下に引用する「アダム・スミス2世の経済解説(http://stockbondcurrency.blog.fc2.com)」によれば1986年ころのようであり、その後債務がふえ続けて2011年末には4兆ドルをこえるようになっています。

「以前、世界最大の対外債権国日本の対外純資産が、いかに円高によって傷付いているかを示した(*1)。一方、世界最大の対外債務国は、言うまでもなくアメリカである。アメリカの対外純負債は、2011年末の時点で、4兆0303億ドルと、文句無く世界ダントツの第一位である。この債務は、基本的には、毎年の経常収支の赤字の累積である。この巨額の対外純負債のため、将来ドルは暴落するのではないか、ドルは世界の基軸通貨の地位から転落するのではないか、等々の心配をする人が多い。ここでは、その心配は半分は正しく、半分は杞憂であることを示す。」

我が国の場合、上記のとおり世界最大の純債権国である結果、紙幣と言う商品の国際競争力が世界最強であるので、(どこの国も日本以下の低金利にすることが出来ません)今のところ余剰紙幣をいくら印刷しても国内に滞留しないで海外需要があるのでUSドル等に変換して海外に出て行くので、前回(1990年ころ)のようなバブルにはならないのではないかと期待しています。
例えば1兆円国内で余剰になったとすれば、その分を海外投資家が日本の銀行から円で借りて海外に持ち出して(あるいは日本国内でドル等に両替して)新興国や欧州等でドルその他に両替して再投資して利ざやを稼ぐのが円キャリー取引ですが、円が世界最低金利の場合、円を大量発行しても利ざやを求める投資家の力で直ぐに海外流出してしまいます。
需要増大に対して海外から輸入品が増えて物価が簡単に上がらなくなっていることの裏側で,紙幣も余剰になれば海外に漏れ出る時代です。

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