アベノミクスとは?4

安倍政権もまだ発足したばかりで成長戦略が具体化し切れていないのでしょうが、仮に財政出動→国内公共工事増に頼ることになれば、海外企業の直接参入がまだ少ないので、海外企業との競争が不要・企業は努力しないで儲けられるので、国際競争力強化どころか、却って長期的には体力低下・マイナス効果となってしまうでしょう。
国際競争に負け始めているときには、本来企業を筋肉質にするために役立つことに注力するべきですが、多くの国ではさしあたり貿易赤字=国内生産減=雇用喪失の結果にばかり目が行ってしまい勝ちです。
目先の失業を減らすには、公共工事は手っ取り早い政策です。
仮に海外企業が工事用資材の供給の8〜9割占めていても、現地作業はその国の労務者を使うことが多いからです。
ところで、成長戦略というスローガンだけ掲げるのは簡単ですが、企業の競争力強化には何をすれば良いのか、どのくらいで効果が出るのかすら前もって分らないのが実情です。
そもそも何をしたら成長出来るかなどと政府や政治家・学者が決めて指導出来る分野ではありません。
後進国が先進国に追いつくには目標がはっきりしていて政府や先進国で学んで来た学者がその受け売りすれば良いので、所謂指導者という単語がぴったりですが、先進国で何をしたら成長するのかを誰も分っていません。
ここ1〜2年躍進著しいアップル・サムスンによるタブレット系新製品を見ても分るように、政府や学者が「これから重要なのはこれだ」と言って前もって企画出来るような時代環境ではありません。
先進国では成長のためにどのようなテーマ・分野に資源を注力するかの判断は、民間経営者の経営判断・嗅覚に委ねるしかないのは明らかです。
これが計画経済が凋落して自由主義経済へ変化した潮流の基礎にあります。
政治は成長分野を決めるのではなく、民間の自由な発想を規制したり妨害するのではなく応援助長するにはどうしたら良いかの議論こそが重要です。
規制しないでおくだけではなく成長分野に補助するのは良いじゃないかとなりますが、「これが成長する分野」だと、誰が決められるのかという視点が必要です。
今回の日航の再建問題を見れば分るように、日航が優遇されると競争相手(全日空)が不利益を受けます。
ある分野を補助すれば、補助を受けない分野を冷遇する効果が起きるのですから、プラスワンするだけなら良いとは言えません。
実際政治では、成長の基盤になるべき規制緩和では、規制によって恩恵を受ける既存業界から反発を受けるばかりで票になりません。
政治家は国内政治配慮・・政治家は票が重要ですから、こんな手間ひまのかかる・・企業ごとに意見の分かれるテーマの判定に政治のエネルギーを注ぐよりは手っ取り早い方に走り勝ちです。
安倍政権の成長戦略というのは、結局のところ直ぐに景気が良くなったように錯覚し易い=国民をごまかし安いバラまきに類する国内公共工事に特化してしまうリスクがあります。
2013年3月4日に3月1日の日経新聞に出ていた記事を紹介しましたが、太陽光発電では、パネルやシリコンなど資材分野では今後日本企業が全面撤退する方向のようです。
これが正しいとすれば、国内受注工事の資材全量を中国からの輸入に頼るとすれば、太陽光発電をいくらやっても国内現場組み立て作業等の労務者の仕事が増えるだけです。
例えば100億円の事業を受注をすると、その企業の売上は同額増えますが、実際には資材係に100%輸入するとなると国内に落ちる資金は現場労務者の人件費・本社のマージンだけになります。
国内企業にとっては帳簿上当面売り上げ上昇の利益があるので、補助金枠の拡大期待が大きいでしょうが、投入した税金の多くは海外からの資材輸入費に消えて行くばかりで、国内に落ちる金が労務賃ばかりでは国内企業の生産性向上には結びつかず、何らの成長も期待出来ません。
国内受注業者の名目利上げは伸びるでしょうが、資材の手当や職人等のコーデネートする仕事中心ですから、パネルやシリコン等の生産性が上がることはありません。
これではしのぎを削る国際競争上必要な筋肉質に鍛えるどころか却ってマージン目当ての商売ばかりはやってしまい、国内生産能力が緩んでしまう結果になって来たのが、アメリカであり第二次世界大戦後のイギリス衰退の原因です。
長期的国力を付けるには、輸入してお金を使うことではなく国内生産を元気づける政策しかありません。
国内製造業を元気づけるには、公共工事はカンフル注射のような効果しかないので却ってマイナス効果になります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC