TPPと主権1

3月6日に紹介した日米半導体協定はホンの一例ですが、アメリカの日本つぶしの謀略こそ恐るべしと言うところです。
今回TPP参加に右翼系評論家を中心に慎重意見が多いものの、具体的に何のどこにが反対かよく分らないとJanuary 5, 2013「密室外交と情報開示1」前後あるいは昨年末頃に書いたことがありますが、もしかしたら、彼ら自身具体的にはよく分らないものの、国という垣根なしにつき合うと巨大なアメリカに絡めとられてしまう恐怖感が、本能的な拒絶反応を引き起こしている面を否定出来ません。
TPPの本質的問題点は、主権がもの凄く制約を受ける・・実質的植民地支配を受けかねない側面です。
TPPはEUのアメリカ版と言えるような気がします。
EUは周知のように戦後の1951年パリ条約で成立した欧州石炭鉄鋼共同体から経済共同体(EC→EEC)へと順次発展して漸くEUに結実したものですが、それでも南欧諸国が良いように搾取される内部矛盾に苦しんでいて、主権縮小して一体化をより強力に進めるか、あるいは解体(弱小国が離脱)するかの危機に揺れています。
これに対して何らの歴史的共有経験もないのに、太平洋に面しているというだけの地理的条件だけで1つの共同体をアメリカの強引な勧誘・イニシアチブで実現しようとしています。
国際社会というものがある以上はその範囲で国内主権が制約を受けるのは当然ですが、それでも一定の信義を守ったり、個別の条約を結んだ範囲で条約遵守義務という個別制約が働くだけでした。
隣近所がある以上は適当な礼儀が必要ですが(町内会の付き合いや自宅周辺掃除に協力するなど)自宅の中の掃除その他どのように生活していようと個々人の勝手です。
TPPの場合、家の中の掃除の仕方、朝何時に起きるか食事の仕方、食物の内容(無農薬食品にこだわろるか否か)まであらゆる分野で干渉されるようになりかねないところが不安です。
当初は、当然自制的・緩やかでしょうが、徐々に大国の思惑によって干渉品目、分野が膨らんで行くのを止める力が弱小国にはありません。
TPPのルール造りに参加して自国の主張を通せば良いだろうと言うはたやすいですが、アメリカと言うライオン一頭の外は対等にもの言える国がない・・その他は馬やウサギや鹿みたいな弱小国の集まりですから実際には至難です。
TPPで決めるルール内容は、殆どの分野でダントツの発言力を持つアメリカの言うとおりになってしまい勝ちですから、従来の主権や固有文化を大切にする立場(主として右翼思想家がこれに一番敏感です)からすれば、尖閣諸島をとられるどころの話ではありません。
隣の家との境界争いで境界30センチ幅ほどとられるのを防ぐために、ヤクザ・助っ人と半永久的に同居するのとどちらが良いかの話です。
日本の軽自動車の分類は(アメリカにはそんな分類がないので)非関税障壁だというのですが、(アメリカも同じ分類を作れば良いでしょうとは言えないのが日本の現実です)一事が万事こんな具合でアメリカの基準以外は認めないのがアメリカの流儀ですから、内政干渉どころの話ではなくなってきます。
車の排ガス規制や公害規制や薬・金融・食品で言えば遺伝子組み換え、狂牛病その他全ての分野でアメリカの決めた基準に反する規制があれば、殆どすべてTPPのルール違反になると思っておいていいでしょう。
ルールに採用された以上は、日本独自の公害規制・排ガス排水・安全基準などは、違反になり兼ねませんから、内政干渉どころの話ではなく直接支配を受けるような感じになります。

円安効果の限界3(アメリカの場合1)

この辺で為替安の効果を見るために、為替操作によって自国経済が長期的に浮揚した国があるのかどうか、あるいは自分に対する挑戦者を蹴落とすために次の挑戦者を育てるやり方と国力消長の歴史を振り返っておきましょう。
アメリカは、第二次世界大戦前から日本つぶしに奔走していて日本が戦争せざるを得ないようにしむけて来たのですが、戦後も一貫して日本が再起出来ないように画策し続けてきました。
共産圏との対決があったために已むなく日本の独立を認めたに過ぎずいつでも日本つぶしに転じるのが長期的国策でした。
こうした流れについては、2012/12/16「第二次世界大戦の戦後処理から見たアメリカの意図2」前後でも書きましたが、客観的資料としてそのような文書が最近開示され始めたようです。
アメリカは日本の経済攻勢に圧倒的に負けるようになってニクソンショックを経て、国内企業の圧力を受けて挽回を図るためにプラザ合意で急激な円高を強制しました。
この間にアメリカの製鉄に始まって自動車製造業のビッグスリーは円が安すぎるとか非関税障壁が悪いと言っては通商法による圧力をかけるなど、いろいろやって日本叩きに精を出してきました。
アメリカはどんな圧力を加えても日本の経済力が強くなるばかりなので、所謂ニクソン訪中によって、日本を出し抜いて、第二次世界大戦中の援助以来の米中蜜月時代復活を画策しました。
その後は米ソ冷戦終結によって遠慮なく日本を叩けるようになったので、第二次世界大戦中の米中密約復活を基礎にする米中韓結託で、陰に陽に日本叩きに精出して来たのがこの約30年間だったと考えています。
この辺の意見は、「米英系マスコミ支配1」Published November 7, 2012「悪しき隣人との交際4」〜 December 29, 2012前後で連載しました。
田中英道氏の意見では、ルーズベルトは、世論向けには反戦を標榜していたために何とか日本に戦争開始させようとして画策して日本が絶対に飲めない要求(ハルノート)を突きつけていたことを述べています。
彼の意見によれば、ルーズベルトは共産主義の手先だったので国民政府よりは中共の方に軍備等でかなり肩入れしていた(・・この結果中共が勝ってしまった原因かな?と私は想像していますが・・)ことも述べています。
3月3日の日経新聞朝刊11面には、日本の半導体業界が台湾や韓国の台頭を許して日本はどうにもならずに壊滅して行くための布石がアメリカ主導で打たれていた軌跡が紹介されています。
これによると日進月歩の技術革新で日本企業はコスト削減に成功してアメリカ市場を席巻していた(世界市場占有率9割を超えていた)のですが、アメリカは通商法の発動その他の脅迫を繰り返した結果、遂に日本との半導体協定(1986年)を結ぶことに成功しました。
この協定は向後10年間日本は製品値下げしないという法外な強制でしたので、その間に韓国台湾ががいくらでも値下げ攻勢をかけられたことから、日本企業から市場を奪い日本企業が壊滅してしまったようです。
また日本人は切磋琢磨して少しずつコスト削減して行くのが得意ですが、この協定によって日本人職人がコスト削減意欲をなくしてしまい、いくらでもコスト削減出来る韓国や台湾へ再就職して行ったことが両国の技術レベルアップに繋がったようです。
日本人職人は金儲け目的で精出すのではなく少しでも消費者が安く良いものを使えるようにしたいと言う願望が中心です。
身障者用の車いすや義足などの工夫をする職人がいますが、ある程度儲け期待が全くないとは言えませんが、その動機は少しでも障害者が楽に使えるようにして欲しいという意欲が基本です。
3〜4日前に、移植手術で拒絶反応抑制のための免疫材が不要になる技術を京都大学かどこかで開発したと報道されていましたが、こうした研究開発をお金儲け目的でやっている人は滅多にいないでしょう。
日本の発明者が特許料に恬淡としていることが多いのも、日本人の特徴と言えます。
いくらコスト削減しても値下げしないカルテルがあるならば、企業にとってはうまい話ですが、日本人職人にとっては消費者に還元しないで企業の金儲けだけのためでは、やる気が起きません。
やる気を出すために韓国、台湾企業に誘われて多くの優秀な技術者が韓国・台湾企業で新技術開発に努力するようになって品質向上に成功して値下げ出来ない日本企業を市場で追い越してしまったのです。
右翼等の議論では、日本の敵対国韓国へ行って僅かな給料目当て技術を売ったとんでもない技術者と理解されていますが、金儲け目的では意欲が出ない日本人の職人気質をこそ誇るべきでしょう。

円安効果の限界2

円安によって価格差が縮小すると、価格以外の面でも負け始めている分野・・商品企画力の分野では時間がかかるものの(血のにじむような)努力さえすれば、巻き戻しが可能ではないでしょうか。
日本は元々明治以降高度成長期まで欧米とは企画力やセンスその他で大きく水を開けられていたのですが、次第に欧米を追い上げて来た歴史がありますので、高度成長時代の歴史を繰り返せば良いのです。
我々個々人で考えれば分りますが、もう一度人生をやり直せば良いと口先では言っても実はしんどいものです。
人生競争に成功して来た人でも、もう一度人生をやり直したいかと聞かれると「もう良いや・・」という人が殆どでしょう。
子育てのような楽しみのあることでさえ、娘に先立たれて孫を育てるのはしんどいことから見ても明らかです。
高度成長期の追い上げ体験を繰り返せば良いと言われても、実際には困難なことですから、企業人・国民による余程の覚悟・必死の努力にかかっています。
今朝のユースを見ているとパナソニックが有機EL商品のアメリカの発表現場でサムスンを見事に追い抜き返した明るいニュースが出ていました。
このように企業は日々努力しているので何とかなると期待していますが、企業や、個々人の努力に期待するだけでは足りません。
3月3日に書いたとおり、機械化の進んだ現在の国際競争力の差はインフラ負担や人件費負担差と基礎的コスト構造格差にあるのですから、この格差をなくして戦い易くして行くこと・・成長戦略こそが、政治に求められています。
成長に資するのか足を引っ張る方向へ政治家が動くのかによって、日本企業の明暗が分かれます。
競争力維持・・あるいは上昇には、個々の企業努力ではどうにもならない公共コスト負担を軽減する政治が必要です。
競争力維持・向上に反する内需拡大政策によって競争力に関係ない高度なインフラの維持経費の負担・・高コストに負けてしまい長期低迷・・戦後イギリスが辿った長期停滞の軌跡をたどるしかなくなります。
この辺・・・アベノミクスで国内公共工事の増加を期待する声が大きいようですが、全国過疎地に散らばった公共設備を廃棄して、都市部に誘導してコンパクトに作り直すための投資ならば意味がありますが、誰も使わない過疎地の公民館やトンネル等の設備を拡散したままで更新工事をするのでは、長期的にインフラ維持経費が国際競争力の足かせになってしまいます。
中国の大気汚染や飲料水汚染を見れば分るように、新興国(エジプトやインドも大変な状況らしいです)は人件費を安く抑えるだけではなく、公害除去負担その他の負担なしにその分、安く生産している・・言い換えれば国民の健康被害と引き換えに輸出していることになります。
レアーアス生産で中国が世界市場を席巻出来たのは、元々アメリカでもどこでも採れていたのに中国では公害・自然破壊などおかまいなしに、無茶苦茶採掘して安値攻勢をかけたので諸外国が競争力を失っていたに過ぎません。
日本では国民健康被害を我慢してまで中国のように輸出競争力維持を図ることは許されませんが、1日に一人が二人しか通らない農道やトンネルあるいは各種公的設備維持経費を(税として)負担し続けるのでは、経費増で負けてしまい、企業努力する意欲がわかなくなってしまうリスクを考えるべきです。
国鉄時代に政治の力で赤字の駅や線路を作り続けていたときには、国鉄マンがまじめにコスト削減努力する意欲をなくしてしまったことがあります。
民営化して政治家が口を出さなくなって、見違えるように生き返りました。
公的設備は直接企業コストに関係がないようですが、企業で言えば現在使っている設備が最新鋭で効率が良いとしても、遊休設備を無駄に保有していてその管理コストを負担している結果、企業全体の効率が低下してコスト増になるのと同じです。
企業は日本で生産する場合の(人件費だけではなく、保険や税負担を含めて)全体のコストで国際競争しています。
無駄な公共工事をしたり、無駄な施設維持費を垂れ流し続ければ、その負担が回り回って国内企業の負担になって来ます。
国鉄で言えば、政治家の圧力で赤字路線を造り続けると、儲かっている路線で働いている人までやる気をなくしてしまった経験に学ぶべきです。

円安効果の限界1

3月2日〜3日に少し書いていた円安による国際競争力復活効果についてもう少し書いておきます。
価格差が2倍あるいは10倍もあったり、商品企画力でも負けるようになってしまった分野に対する円安効果はどうなるでしょうか?
2〜3割の価格差で競合している分野で勝つようになっても、2倍の価格差や10倍の価格差がある場合、2〜3割の円安程度では何らの競争力も生じませんので輸入商品が減らずに逆に商品構成部材が値上がりするデメリットばかりになります。
(資源輸入も同様です)
例えば原発事故以降、代替電源として大流行の太陽光発電装置・・設備増強が活発ですが、この資材に関しては、日本企業は総崩れ・・中国製に負け続けてほぼ全面撤退あるいは廃業に向かっているようです。
3月1日、日経新聞朝刊11面記載の報道によれば、08年に比べて重要素材のシリコンやパネル価格が約10分の1に下がってしまい、日本企業は価格的にどうにもならない・・作れば作るほど赤字が膨らむ状態で、撤退または縮小計画が目白押しとのことです。
これでは2〜3割の円安どころか半値になってもどうにもならない格差ですから、為替相場では解決出来ません。
また韓国がウオン安を利用して競合する日本製品を駆逐し始めたと強調されていますが、その効果があることはそのとおりとしてもそれだけではない部分もあることを見落としてはなりません。
即ち例えばアップルやサムスンのスマホ関係で言えば、価格が少し安いから日本企業が負けているのではありません。
そもそもその方向への商品企画をしなかった・・遅れを取ったことが日本企業の大負けの原因ではないでしょうか?
商品企画力で大負けしているとすれば、円が2〜3割あるいは5割〜10割下がっても、それだけでは国際競争市場で逆転することは不可能です。
この辺の真摯な反省がないまま、円安効果を賛美して浮かれて国内需要喚起のために公共工事をいくら増やしても、太陽光発電の例に限らず鉄鋼製品その他各種分野で輸入が増えるばかり・・国内企業は受注窓口、マネジメント料しか入らなくなってしまい、輸入資材価格が上がることから貿易赤字が膨らむ一方になり兼ねません。
円安になったのには安倍政権の政治姿勢に功績があると手放しで喜んでいる場合ではなく、それだけの基礎的条件の悪化があることを意識して、日本経済は大変なことになっていることを覚悟してかからねば危うい状態です。
しかし、私は円安が意味がないというのではありません。
円安がせっかくの起爆剤になるチャンスをしょぼっと消してしまわないように、手放しで喜んでいないで、政治家及び国内企業人の奮起を促すためにここでは書いています。
例えばそれまで5割の値段差があった商品との価格差が1〜2割差の競争になって行くと、この程度の値段差ならば努力次第で品質の差で勝てるようになったり、海外に逃げなくとも企業努力する気持ちにもなって行きます。
その勢いで効率化して元々は6〜7割も価格差があった分野でも価格差が1〜2割に縮小して何とか競争出来るようになって行くという順序で復活して行くことが可能ですから、5〜6割以上の価格差がある場合、円安は何の効果もないとは言い切れません。
最後には大きな差になってしまっていて(価格差ではない)商品開発力でも負けなくなって行くことも期待出来ると思います。
あまりにも実力以上の円高が長く続いて(円安になった場合のJカーブ効果と同じことで円高になっても実力以上に長く貿易黒字が続きます)価格差が開き過ぎたために、サムソンなどに商品企画力でも負け始めたに過ぎないことを祈るしかない・・円安になった機会に挽回して欲しいと願っています。
(あまり大きな価格差があったからこそ、優秀な日本人がサムスンなどに引き抜かれる事例・・あるいは日本企業自体が海外に研究所まで移す事例が多かったのです。)
挽回するには円安に安住せずに「この機会に挽回するぞ!と言う意気込みと努力こそが必要です。

円安効果3(生活水準引き下げ)

円安持続性には問題がないので安心して設備投資出来るとした場合、円安にさえなれば全般的に競争力が復活するのか?こそが一番の問題です。
価格差が1〜2割前後で競合している場合、1〜2割の為替相場の浮き沈みが大きな影響を与えます。
仮に10倍以上の値段格差がある場合、2〜3割程度為替相場が下がっても競争力回復には関係がないので、3月2日に書いたとおり逆に円安によって値上がりした部品や原材料を買うしかないので、貿易赤字は増えるし企業は製品値上げ(電力で言えば電気代の値上げに直結します)しなければやって行けなくなります。
これがインフレ期待論者の期待するリフレ効果でしょう。
回り回って人件費が置き去りに(本質的に後追いですから)されて企業全体が、賃下げ効果を享受出来る・・国民生活を犠牲にして競争力を復活する政策となります。
実際我が国の苦境は新興国に比べて人件費が高過ぎることにあり、アメリカは連続するドル下落の結果、製造業の復活をアッピールするのに今では中国苦並みに人件費が下がっていると豪語していることからも競争力の基準は人件費にあることが明らかです。
現地進出すれば足りるのでどんな優秀な機械設備を作っても機械化が進めば進む人の能力差よりは、人件費や地代等の差の比重が大きくなって来るからです。
この辺のパラドックスは、全自動化した場合を例にして05/16/05
「究極の機械化と国際競争力(人材の重要性1)」前後で書きました。
まして過去の貯蓄で生活しているリタイアー層にとっては賃上げさえないので、単純に老後生活費が縮小する・・貧困化が待っています。
円高が実質賃上げ効果があり、円安には実質賃下げ効果があると繰り返し書いてきました。
借金している国(1000兆円を越えかけている国の債務等)や企業は、インフレになれば返すお金が少なくて済むので大もうけですし・・1500兆円に及ぶ個人金融資産・・年金等の受給者・過去の資金蓄積者にとっては1割インフレで1割の債権目減りですから巨額損失です。
1割物価が上がれば、1500兆円の個人資産が一瞬にして150兆円目減りですから借り手(個人金融資産と同額の借り手があります)にとっては150兆円寝転んでいて大もうけになります。
円高に関するコラムで何回も書いてきましたが、為替相場変動の究極的効果はこれによって技術革新・本来の競争力強化を計るというよりは、国内人件費をそっくり上げるか下げるかあるいは負債を労せずして減らせる安直な期待効果しかありません。
これを実際に徹底的に実験して来たのが、韓国李明朴政権による大幅なウオン安政策でした。
大幅ウオン安政策の結果、サムスン等の巨大企業が世界企業に成長する一方で、国民は低賃金化・塗炭の苦しみ・・個人金融資産はマイナスで、若い女性の多く(9人に一人の比率と言われています)が世界中に売春婦として出稼ぎに精出すような状態になっていることは世界中周知のとおりです。
(フィリッピンの伝統的メード輸出より哀れです)
自国通貨安政策は、人件費減を通じて企業を太らせるものの、人件費削減を通じた国民窮乏化政策とほぼ同義と言えます。
国民が働き以上に高収入を得て贅沢している・・その結果貿易赤字が累積して危機的状態・・デフォルトリスクがあって、どこの国からも商品を売ってもらえなくなる危険が目前に迫っている場合には、国民に倹約して貰うしかありません。
倹約効果を出すには貿易収支赤字をそのまま受入れていれば、自国通貨安になって輸入物価が上がるので国民は購買力が下がり自然に消費を抑える・・生活水準を落とすしかないので合理的・ソフトな政策と言えます。
南欧諸国の危機解決にはこれしかないのですが、自国通貨をもたないために為替相場切り下げによる全般的水準引き下げ解決が出来ないので、増税・緊縮財政政策という強制力行使しか選択肢がなくて困っています。
我が国では、野田政権が消費税増税で活路を(財政赤字縮小→国債等の借金縮小や生活水準引き下げ)見いだそうとしました。
こんなことは為替相場の市場原理に委ねれば上記のとおり自然に解決出来る問題ですが、これを増税と言う強制力で対応しようとする発想(強制力に頼るには徴収業務や例外対応システム等関連経費・・公務員も増えます)自体が時代に合っていませんでした。
※円安=輸入物価上昇→インフレになれば、増税・増収しなくとも債務負担がその分軽くなるし、国民は生活水準低下で自然に支出を抑えることになります。
生活保護費支給水準の引き下げや社会保障給付の引き下げ等も強制的にするのは抵抗が大きくて大変ですが、これをしなくとも、物価が上がれば自然に(実質的に)引き下がります。
右翼左翼双方に最近流行の「新自由主義反対・市場原理反対」という教条的発想が、(大きな政府志向)市場に委ねれば自然に変化する柔軟なシステムを利用しない方向に自公民(与野党一致)共同で向かってしまったのではないでしょうか?

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