シンガポールが何故国際化・TPPに熱心かという点はこの後で書きますが、東南アジアの統括拠点をシンガポールに移転する企業を増やす程度を我が国も目指すならば気楽ですが・・・。
地域拠点程度での勝ち残りを目指すとしても、極東に限定すれば競争相手が中国と韓国ですし、日本は外れに位置していて地理的優位性を持っていないので、これも実は大変です。
日本は志を大きく持って飽くまで世界拠点・世界本社機能維持・拡大を目指すしかないでしょう。
地球は丸いので世界地図にすれば日本列島を真ん中に描くかアメリカ中心に描くかの問題であってどこを中心にしても良い関係です。
昔は巨大な太平洋の彼方と交易することは考えられなかったので、日本はユーラシア大陸の東端でしたが、交通手段の画期的な進歩によって、日々東端にあることの不利さが縮んで行く状態です。
日本が世界をリード出来る秀でた能力さえあれば、日本を中心にした知識・技術伝播や物流だって考えられます。
TPPに限らず今後グローバル化が進む潮流自体を否定出来ませんから、日本が世界の文化・技術の中心位置を占められるように努力するしかないでしょう。
大阪は東京に次ぐ第二の拠点都市として戦後頑張ってきましたが、各種決定機能の集中する首都東京に引きずられて行き、次第に事実上の本社機能(東京本社の増加)〜本社そのものが移転してしまった歴史に学ぶべきです。
日本を拠点にして東南アジア諸国やアメリカへの物流や人的交流があるならば良いのですが、アメリカが事実上全ての決定権を有しているTPPが機能し始めると、決定組織のあるアメリカの周辺地域にことを有利に運ぶために首脳とその側近が蝟集する傾向を阻止出来ません。
日本もTPP参加後数十年はトヨタその他の企業本社が残るとしても時間の経過でTPP規制基準決定をする事務局のあるアメリカに吸い寄せられない保障はありません。
アメリカが事実上のヘゲモニーを握っているだけで、法的な決定機能のない現在でも、ソニーがアメリカ本社を構えざるを得なくなっている現状を、軽視すべきではないでしょう。
経済活動が世界規模になって垣根が低くなる一方になるとNo.2やNo.3はなくなって、一強とその他大勢・・フラット・・すなわちその他は地域拠点程度になり兼ねません。
人材需要で言えば中間層が減少しつつあるのと同様に、企業間競争も似たような関係になっています。
国内で言えば県庁所在地が地域拠点から脱落し始めているように、世界的な地域拠点も集約される一方になるでしょう。
日本での本社機能や国内生産機能を守りこれの海外移転を阻止するには、さしあたり神戸大震災以降失いつつある物流や交通(空港)の拠点回復から始めないと、難しいように思われます。
こうなると人的移動もアメリカを中心とする放射線状の移動となりますし、アメリカから直接東南アジアに出張することが増えて来るでしょう。
アメリカから製品輸出した方が合理的となると、トヨタもアメリカ産の車を直接アジアに輸出し、ニューヨークからアジア諸国へ出張する時代が来るかも知れません。
実際に円安によって韓国市場での日本車の逆襲が始まったと言っても、FTAの関係もあってアメリカ国内性産車両を韓国へ輸出しているに過ぎない実態があります。
日本で輸出向け生産がなくなって国内需要分だけの生産になれば、国内の関連部品生産や物流も減って行きますので、国内需要がさらに減退する・・ひいては人口維持機能が減って行き、縮小再生産のスパイラルに陥りかねません。
以上書いて来たようにTPP参加によって市場規模が大きくなり一体化が進むことの問題点は、日本所在企業や産業が目先有利か否か・生き残れるか否かにあるのではなく、本部機能や生産部門もこれに連れてより便利なところに移動して行くのを阻止出来るか否かこそが重要です。
これらが移って行けば、民族の個性・文化その他もかなりの勢いで失われて行くようになります。