03/29/06「法の支配と被支配2(ローマ法支配の意味)」で法の支配について書いたことがありますが、ある国の法の精神枠組みが別の国で適用されると国民はその法を学び且つ行動規範をそこに求めるしかなくなります。
その国の法を学びその法で規制する・・行動様式を決めて行くようになればその国の思考方式を生活の基礎にする・・その国の思想や道徳律を受入れることです。
支配とは自分の意思を他人に強制することですが、腕力による強制はなく法で強制するのが現在国家ですから、アメリカの法の殆どがTPP参加国で共通法化するようになれば、アメリカ支配・・アメリカ議会の決議を自国の法として受入れるのと同じです。
属国の場合は間接支配ですが、TPPの場合かなりの分野で直接支配になります。
TPP参加表明するか否かはアメリカによる囲い込み・・現在版植民地支配に入るかどうかの踏み絵を迫られていることになります。
私がJanuary 7, 2013前後のコラムで、TPPに参加しない限りアメリカは尖閣諸島問題で良い顔をしないだろうと書いていたのは、この意味になります。
自分の版図に囲い込めるなら一緒に防衛もするし、参加しないでアメリカ支配領域外に出て行くのなら防衛する必要がなくなるのは当然です。
EU条約は英独仏3カ国の大国グループとベネルックス、北欧諸国などの中間の国々と南欧や中東欧の周辺諸国からなる同心円的関係ですが、それでもドイツの支配力が強まってることが最近問題になっています。
TPPの場合、ダントツのアメリカを牽制する対等者のいない組織ですから、アメリカ唯一支配を貫徹する道具立てになる可能性が高いでしょう。
EC→EU成立時にイギリスの参加が拒否された事例を想起するべきです。
当時ドゴール大統領はイギリスはアメリカの手先だから内部に入れるとトロイの馬の役割になると言って拒否していたのでした。
TPPはトロイの馬どころか、アメリカそのもが内部で直接支配するのですから、民主的運営をするには、アメリカ以外の諸国の団結・協議機関設置が必要です。
我々弁護士の世界で言えば、関東弁護士連合会というのがありますが、マトモに一対一で議論していると巨大組織である東京3会に叶わないので、東京3会を除く10県会という内部親睦組織が別に造られています。
弱小10県の単位会が集団で東京3会に対してもの申すことになっていますが、こうした運営方法も参考になるのではないでしょうか?
組織面の工夫がないまま、自国の主張を遠慮なくすべきだと言っても、絵に描いた餅になります。
(・・労働者は遠慮なく意見を主張すれば良いというよりは、団結権・団体交渉権保障の方が意味があります・・・)
主権問題に敏感な右翼系が概ねTPP反対論を展開している根源的理由は、主権が損なわれる恐怖にあるのでしょう。
ところで商品規格の画一化・・許可基準は(車等の規格・食品衛生・排ガス規制や公害基準その他)すべて法律で決まるのですから、欧州議会のようにアメリカが主催する会議でいろんな基準をドンドン決めて行くと、文字どおり日本の国会で独自に決める国内法・・はこれに整合するように手直しする仕事しかなくなって行く・・主権制限になるのは当然です。
ハーグ条約を3月8日に紹介しましたが、条約で決めても已むなく受入れるしかない以上は同じことになりますが、個別の問題ごとに条約を結ぶかどうかが国会で議論になって、分り良い点が違うと言えるでしょうか?
包括的なTPPの場合、参加後は個別品目別基準造りは政府の恒常的な交渉になって国民には見え難い点が難点です。
これまでの国内的分類で言えば、国会で作る法律よりは官僚の作成する政令、省令あるいはガイドラインみたいな細かいレベルの交渉になって来ます。
建築基準や防火基準、レストランの保健衛生基準などのガイドラインの作成等は優秀な官僚にお任せで、関心を持たない・・マスコミは詳しく報道しないし政治家も関与しないのがこれまでの国民の習慣でした。
この結果TPPは密室的交渉になっているので、これだけの大問題になっているのにマスコミは詳しく報道しないし、何が問題で何を揉めているのか国民には未だに訳が分らない印象になっています。