運営責任から目をそらすために世代間扶養だったと言い出せば、後に続く現役の納付者数と納付額次第になりますから、解決策としては現役納付者を増やす・あるいは納付期間を長くするしかないので必然的に高齢者雇用延長政策にシフトして行かざるを得ません。
若者は非正規雇用が多いので就労機会を増やしても社会保険加入率が低い上に掛け金額が少ないのに対し、高齢者雇用延長は大企業中心の政策ですから、ほぼ正規雇用中心に労働者が増えますから年金納付者・額が増えるメリットを狙ったことになります。
しかし、雇用期間延長=納付期間長期化すればその分高齢者への年金支給額を増やさないと延長納付者が納得しない(加入者は掛け金を多く掛けた分支給が増えるのが楽しみです)でしょうから、却って支給総額が膨らみます。
我が国では世代間ワークシェアーこそが最重要課題なのに、年金運営ミスを棚上げにして納付者数不足に原因を求める=少子高齢化に原因を求める政策では、却って若者の職場が縮小してしまうことについても、これまで定年延長問題その他のテーマで01/08/03「ゆとり生活 2」01/07/10「終身雇用制2→若者就職難2」何回も書きました。
繰り返しになりますが、仮に年間100万人ずつ定年退職し100万人ずつ新卒が参入し(総労働人口一定・出入り均衡)且つ労働需要が前年比変化のない超安定社会を前提にすると、55定年を60歳に延長するために毎年1歳ずつ退職年齢を繰り下げて行くと、新卒が毎年100万人・100%就職し損なう計算になります。
わが国で実際に新卒が100%就職不能にならなかったのは、企業の定年延長が60歳定年に到達するまで5年間ではなく20年ほどかかったことと、ある程度雇用拡大があったこととマダラに定年延長が進んで来たことによります。
労働需要が一定・労働人口も一定の場合を仮定すると、定年5年延長を20年かけて完成した場合、毎年新卒の4分の1ずつ就職し損なう計算になります。
経済成長中ならば職場はいくらでも拡大しますが、今のように海外展開加速によって職場が減少中の場合、既得権者の定年延長政策をとると若者・新規参入者にとってはダブルで就職難が発生します。
2月1日の日経新聞夕刊には、総務省2月1日付き発表による記事が出ていますが、(製造業の海外展開の進行により)、製造業従事者は12年12月の就業者は前年同月比35万人も減少し、1000万人(998万人)割れになったと報道されています。
1992年10月の1603万人がピークで、以降一貫して減少し続けてついに1000万人を割ったとのことです。
建設労働者も14万人減となりサービス業などの比重が上がっています。
総就業者数を見ますと前年同月比38万人減の6228万人ということです。
製造業が減っているだけではなく、サービス業を含めて総数でも減って来ているということでしょう。
雇用数が一定でも定年退職時期を60歳から65歳に伸ばして行くと、若者の新規参入枠がその同数分少なくなるのに、職場減少局面ではなおさら大問題です。
年金の運営責任回避のためにへりくつをこね回しているうちに、窮余の策として定年延長を画策しているのですが、却って若者を腐らせてしまう政策になっています。
筋の通らないことをやる・・「無理が通れば道理が引っ込む」と言いますが、年金政策のミスを認めないで付け回ししているから弱者の若者が行き場をなくしてしまうリスク・・日本の将来へのリスクを広げることになってしまいました。
物事は責任逃れのために、嘘で塗り固めるとロクな結果にならない・・矛盾がドンドン拡大して行くばかりであるといつも書いているとおりです。
社会保険や年金赤字は、運用責任を明らかにして、どこに原因があったのかはっきりさせた上で別途抜本的に解決すべきです。
関係のない少子高齢化・・更には年金赤字(高齢者は原則として一杯資産を持っているので心配してやる必要がありません・資産のない人だけ考えれば良いことです)などにかまけて誤摩化している暇はありません。
ともかく今の緊急課題は次世代を元気にすること・・年金資金不足は、年金制度内で責任を取るべきは取って解決することが必要で、責任問題をうやむやにするために若者の職場を減らす方向での解決を図るべきではありません。
雇用問題を年金の後始末に使わないで労働問題はその範囲内で考えることが必要です。
以前から書いていますが、仮に一定数の失業が必須とした場合、若者を失業させるのと高齢者を失業させるのとどちらが社会の発展性にプラスになるか大きなマイナスになるかの視点で考えるべきです。