政権担当能力4(公約1)

アメリカの対日基本スタンスは、戦後一貫していて日本を支配下に置く・・支配下におけないまでもその弱体化が究極の目的だったと思われます。
周辺諸国もこれに同調しているので、日本は米中韓による悪意の包囲網下にあると考えていいでしょう。
極東だけで見れば中韓の言うとおりに、日本は戦後ずっと孤立して来ました。
・・最近は東南アジアやインドなどが強くなって来たので大分日本に有利な局面になってきましたが、米中韓包囲網から抜け出す気配のある日本に対して、米中韓が焦り始めたのが最近の日中・日韓緊張激化の根本原因かも知れません。
米中韓の包囲網からすれば日本の「政治の迷走は思う壷」ということで、能力のありそうな政治家に対してはアラ探しをしてこの対応に終始させて、他方で残った小者に対しては政権担当能力のなさをマスコミ・進歩的?学者を通じて煽って来たように思われます。
民主主義国家においては政策によって競うべきであって、政権担当実務能力をマスコミが煽ること自体、(野党には実務経験がないのは当然ですからこんな基準が幅を利かすと政権交代が出来ません)選挙による政権交代を前提とする民主主義政体をぶちこわす行為です。
実務能力基準と言い出したら20年前ころまで普通だった地方自治体首長が助役や副知事上がりの時代に戻り・選挙は儀式でしかなくなります。
石原前都知事が殆ど登庁しなくとも成り立っていたのは、(有能な副知事がいたとも言えますが・・)本来政治家は大所高所からの方向を決めれば良いのであって実務は官僚に委ねるべきでしょう。
実務能力を言い出したら官僚上がりが一番ですから、政治家不要論・民主政体が成立しません。
民主政体が良いと言う以上は政治家が決める方針に併せて官僚機構が責任を持って準備して、且つフォローして行くべきでしょう。
政治家は官僚のようには実務経験がないのが当然ですから、民主政体を選択している以上は、実務処理能力を基準に議論する最近のマスコミ傾向は間違っています。
防衛大臣で言えばシビリアンコントロール・軍事のプロではありません・・に矛盾することが明らかでしょう。
実務処理能力不足問題は、与野党が変わったときに官僚が充分に下準備して補佐すべきことです。
ただし、 官僚機構がいくら準備しても出来ないことは出来ませんから、公約発表には与野党を問わずに実際に可能かどうかの官僚機構との事前擦り合わせが必要です。
野党が法案提出するには、条文にするにはどうするか、他の条文との整合性はどうかなど専門家とのすり合わせが必要なのと同じやり方です。
ただし、Dec 1, 2012「民主主義と正義9(選出母体の支持獲得1)」に書いたように、現在では国民政党化している・・支持母体が錯綜しているので、どの政党も公約に責任を持つとすれば、独自色・特色を出せずに「よりよい日本を作る」「日本を元気に」という程度の抽象的公約しか出せません。
国内企業立地が国際競争上不利になっても良いという意見は、労働者であれ資本家であれ誰もいないでしょうから、争点はもっと具体的な企業保護政策・逆から見ればどこかがその分しわ寄せを受けるかに論点が下がっていますが、これは裾野が広過ぎて公約には書き切れません。
書けるとすれば、政策選択基準を開放経済中心で行くのか国内企業保護で行くのか、農家保護中心で後はおかまいなしか企業保護中心か労働者中心に軸足をおくのか、高齢者中心か若者中心か程度は自分の立ち位置を明らかにすべきでしょう。
ところが、上記12月11日に書いたようにどの政党も労働者からも企業からも農民票も高齢者票も若者からも総体からの票が欲しい・八方美人のために政党色が表面に出ていません。
当選したら何をするのからない状態での投票勧誘・公約ですから、困ったものです。
農家保護子供手当その他諸々細かい項目ごとの賛否を公開質問しているのですが、これらを見ると個別項目と他の項目が相容れない場合が多くあります。
どちらを優先するかの質問がないから、どの項目にも賛成の大そうな選挙に有利になりそうな回答を選んで気楽に答えているのでしょう。
たとえば国際競争力の維持向上政策の必要性は誰も反対しませんが、それと原発維持拡大しあるいは縮小とどのように整合性をつけるのかの立ち入った質問も回答もありません。
都市政策に関して何回も書いていますが、旧市街地街の再開発と郊外の新市街地開発とは高度成長期には両立していたので政治家は気楽に主張していました。
今はどちらかをやめないで両方に投資して行くのでは、財政が持たないし人口減少地域は無理があります。
原発即時廃棄と燃料輸入増による電力料金の値上がりや貿易赤字をどうするのか、福祉充実と増税反対など、いろんな矛盾項目(実際には2項対立どころかもっと複雑です)をセットで考える必要があります。
一人の人間・・政党は同時にいろんなことを決めなければらないのですから、優先順位を付けて質問をし、回答を求めないと意味がありません。

 政権担当能力3

参院選挙後なお安倍政権がアメリカに譲る気配がない・・意外に手強いとなれば、再び政権担当能力批判の展開・・他所のヤクザ・・中国をけしかけて領海侵犯をエスカレートさせるなどして揺さぶり、他方でマスコミに安倍氏の無能ぶりを大々的に報道させて再び政権転覆を仕掛けるのでしょうか?
政策批判ではなく政権担当能力批判で良いとなれば、言わば揚げ足取りをしていれば良いのでマスコミにとって政権転覆操作は簡単です。
マスコミにとってはゴシップ探しも要らない・・無数にある映像の中で歪んだ口周辺の露出・前後の文脈を無視して一部だけ取り出して報道するなど、頼りなさそうに演出することはいとも簡単です。
(今回は今のところ笑顔の良い顔ばかり報道されていますが、麻生元総理の場合は当時ことさらに口周辺が歪んだ映像ばかり報道されていました・・このようにマスコミの方向性次第でいろんなイメージが簡単に作り上げられます)
本当は国民に人気がなくても韓流が如何にも良いものかのように大々的に演出した場合・・例えば事実に反して視聴率8割と虚偽報道しても、身近な多くの知り合いが誰も見ていないと化けの皮が直ぐにはがれますが、総理や大臣の頼りないイメージ作出の場合、国民は彼らを直接知らないのでいろんな表情や言い回しの中でそう言う写真や音声ばかり切り取って報道し続ければマスコミのイメージ造りが簡単に一人歩きします。
政策ではなく、担当能力と言うイメージで政権批判する風潮は困ったものです。
尖閣諸島の挑発が続いてもアメリカの応援が期待出来ないとなると、日本では米軍基地の存在を意味がないと思う人が増えるでしょうが、アメリカとしては日米同盟を破棄して戦前のように孤立化に走る勇気がないと見越しての米中の連携プレー的な嫌がらせです。
安倍さんの年来の主張・戦後体制・・極東軍事裁判の虚構性の見直しなどとても出来る情勢ではありません。
安倍政権が本気で国益を守るつもりならば、アメリカの意向によって動くマスコミとの対決を辞さない覚悟・備えがいります。
これをしないで密室で大幅譲歩して・国民の犠牲で政権維持するようでは、国民が困ります。
マスコミ批判が強くなれば、安倍氏が意外に対米交渉で頑張っていることになり、政権維持のために密室交渉で赫々たる成果を得たと報道される場合、逆に裏で大きな譲歩をした可能性が高まります。
アメリカと仲良くやるのは良いのですが、正々堂々とアメリカの要求とこれに従うときに我が国の損失・・その犠牲を払っても同盟を強化して尖閣諸島を維持する必要があるかどうかを国民に開示して国民議論でこれを決めるべきです。
重要なことに限って民意を問わずに選挙後にやる・・密室で政治家個人の利益と引き換えに取り決めるのは民主主義の原理に反します。
アメリカの嫌がらせが続けばいくら鈍い日本人でも、アメリカの言うとおりにしないと大変なことになると気がつく・・口惜しいかどうかの次元ではありません・・何かを譲るしかない・・そこまで言うなら中国側に着いた方がマシかという国民判断が出てきます。
アメリカからの脅迫と中国からの脅迫があって、どちらに屈した方が得かの国策判断です。
ところで、安倍政権は選挙の争点にはしないで、選挙後にTPPの決断をすると今から匂わせています。
何の決断もしないでズルズル行けば自然消滅ですから、敢えて参加しない決断をしなくとも良いのですから、参院選挙後に決断をするということは参加表明すると言う意味でしょうか?
野田政権の消費税増税に始まり重要な政治決断は国民の信を問わなくても良いという政治スタイルが定着して行くと、いよいよ政治不信が高まるのが心配です。
そもそもTPPが日本にとって項目別に何が有利で何が不利かの一覧表を何故かマスコミが提示しないので、どの項目にどう言う理由で反対していてどの項目にどの理由で賛成する人がいるのか国民にはまるで分りません。
最近ネットで少し出るようになってきましたが、それも一方的なので聞いているとおかしいなと思う主張が多くあっても、それに対する反論→再反論がないままですから、十分納得出来ない半端な状態です。
これも繰り返すうちにもっと説明が緻密になって行くのでしょうが、今のところ何故双方が必死になっているのかがはっきりしません。
双方共に具体化しないママ争っているのを見ると、実は選挙後に野田政権のやった消費税増税のようにイキナリ参加表明したら、そのとき反対していたことを忘れたフリして支持する思惑があるのでしょうか?
安倍政権支持層に連なる論客の多くは、昨年末の総選挙直前ころから「増税では産業が萎縮するだけだから、それよりは財政出動・景気対策だ」と口を揃えて言っていましたが、じゃ、消費税増税法案のときに何故反対しなかった(党議に反対しなかった)のか(それどころか推進していたのか)について口を拭って知らん顔です。
消費税増税法案に反対して民主党が大きく割れたのは僅か数カ月前のことですが、自民党で今の政権中枢に入った人々・誰一人として造反していたとは聞きません。
こんなに短期間で著名な政治家や経済評論家が党利党略で真反対に豹変しています。
消費税法案に関する与野党合意は民主党を分裂させるための罠だったとしか考えられません。

日米同盟強化

Dec 28, 2012「観光立国と生活レベルの低下4」で、尖閣諸島に半端な戦力(数十人規模)を駐屯していても肝腎の本格戦争に入れば日本本土防衛には無意味・・放棄するしかないだろうと書きましたが、(平時のシーレーン防衛には大きな意味があります)防衛ラインを広大な太平洋のどこに引いてもアメリカ本土の防衛にとって、(日本の沖縄防衛と尖閣諸島防衛の関係よりもなお)大した違いはありません。
(アメリカ本土向けロケット発射を何秒か早く知ることが出来るくらいでしょうか?)
仮に日本列島が全部中国支配下になって日本から攻撃機あるいは大陸間弾道弾が飛び立っても中国本土から直接飛んでも距離の比率から言ってアメリカの防衛にとっては50歩100歩以下でしかないでしょう。
日本を韓国のように経済植民地化しておけるならば、アメリカにとって第1列島線が(守ってやるぞという意味で)重要になります。
日本が経済支配下に入らない・もしかして中国経済圏に入るのを選択するなら、何のためにシーレーンなど中国から防衛してやる必要があるか・・子供でも分る道理です。
ですから「防衛分野だけ同盟しましょう」と言っても、アメリカが実質メリットを求めて来るのは当然です。
TPPや沖縄基地問題等アメリカに利害のある問題で具体的に安倍政権がどう対応(譲れる)出来るか、アメリカにじっと見られている状態です。
ヤクザにミカジメ料の支払を渋ったら、・・「じゃあ他所のヤクザが店に来て嫌がらせされても知らないぞ・・」というのがアメリカのやり方でしょう。
もしも参議院選挙までアメリカの思惑どおりに動けない・・野田政権同様に国民を騙すために選挙までは意思表示出来ないと言うなら、(アメリカにとっては国民に言えないほどの大規模譲歩引き出すには選挙後の方が有利ですから)そこまでは我慢するでしょう。
あまりにも大きな譲歩を迫られる場合、アメリカ離れを画策した方が良いかについては、中国の出方を考えてシビアーな検討が必要です。
戦後60年以上に及ぶアメリカの横暴?に反感を持っていた民主党政権は、今後中国と仲良くすれば良い・・これまで大分援助して来たし・・アメリカを袖にして近寄れば中国が喜んで大切にしてくれると思っていました。
民主党はもともとソ連圏との友好を模索して来た社会党・民社党出身議員を多く抱えているので反米基調になっていたのは当然ですが・・国民の多くもアメリカの勝手な行為の数々に不満を持っているところへ中国の台頭もあって、民主党政権誕生=親中国路線傾斜が当然の雰囲気でした。
ところが、日本には予想外の中国の対応が待っていました。
アメリカから離れたならば立場が弱いだろうと足下を見られてしまい、逆に尖閣諸島に対する領土要求を誘発させてしまいました。
日本的理解ではこれまで対立して来た相手でも、相手が弱って頼ってくれば優しくいたわるのが普通ですが、中国や韓国では相手が弱っているならこれを好機と見て、徹底的に叩く・・しゃぶり尽くす価値観の国だと知らなかったのです。
低姿勢に出れば、大切に対応するのが日本の礼儀ですが、中韓(もしかしたら世界中が)では相手が下手に出れば相手が弱っているのだから、この機会になお強く要求すれば良いという価値観の国です。
慰安婦問題・南京虐殺等々、事実無根でも相手が主張するなら、反論して揉めていないでそのとおり認めて謝れば和解出来るという発想が日本の(甘い?)価値観ですが、(ヤクザでも言いがかりをつけたことについて被害者が謝るなら、それ以上追及しない国民性です)相手の方は、事実無根でも認めてくるほど相手が弱いならば、もっと新たな要求が出来ると考える価値観の民族です。
今回はアメリカの要求がきつすぎるからと言って、簡単に中国寄りに舵を切り替えられないことも(交渉相手のアメリカには)分っています。
ところで安倍政権の対米手みやげ論ですが、ただ低姿勢で譲歩すれば上記のとおり却って悪い結果になり兼ねません。
こちらもしたたかに交渉して行く心構えが必要です。
ベトナム戦争当時、ドミノ理論が一世を風靡したことがありますが、尖閣諸島をアメリカが守れずここに中国軍基地が築かれると(日本本土防衛にとってはあまり意味のない場所としても・・・)台湾(国府軍)防衛に重大な影響が生じます。
(※ 尖閣諸島問題で日本が引けば、その内沖縄諸島まで中国が領有主張を始める可能性が高く、さしあたり石垣島など離島から占領が始まるでしょうが、順次日本がこれらの占領を黙認して行くことになると、台湾本島が中国軍基地に包囲されることになります。
こうなると台湾武力侵略(開放)が現実化して来るので、武力行使がなくとも台湾が屈服するしかなくなるでしょう。)
遠隔先端基地は攻撃側には出撃の足がかりになるので有用ですが、守勢のときには守備隊が拡大分散している方が不利になります。
(沖縄占領に後ここから出撃する爆撃機によって東京空襲が常態化したことを想起すれば良いでしょう)
我が国は専守防衛なのであまり遠くまで出っ張って戦力分散している方が不利になりますが、攻撃側の中国にとってはここに基地を築ければ台湾と日本を分断出来るし、そこから航空機が出撃出来れば有利になります。
沖縄まで要求して来るのは大分先のことであるとしても、台湾に至近距離の尖閣諸島に中国軍基地を設定するだけでも台湾を脅迫するのに充分です。
沖縄米軍による台湾応援をここで分断・妨害出来ます。
この視点から言えば、台湾政権が中国共産党政権と一緒になって尖閣諸島領有を主張していたのは不可解・・よく考えていなかったのでしょう。
台湾当局(国府軍)にとっては、日本の尖閣諸島実行支配を揺るがすのは得策どころか、自分の首を絞める行為です。
直ぐに台湾当局が静かになったのはこう言う視点が働いているからでしょう。  
アメリカの要求がきつ過ぎて、交渉決裂となってアメリカが守ってくれないなら・・・と言うことで、「尖閣諸島は要りません・諦めました」となればアメリカも大変です。
台湾防衛だけではなく、「たった1つの離島さえ守ってくれない同盟なんか意味ない」という声がわき上がるのは当然で、将来的には日米同盟が空洞化して行くのは必至です。
日本は手みやげばかり気にしないで、この辺を(直接言うのは、はしたないですが、)交渉材料にして行くべきでしょう。

密室外交と情報開示2

アメリカのような強い国・・まして中国に圧力を掛けさせて日本が困るのを待って始まった同盟強化交渉では、安倍政権がアメリカに表向き譲る方が多くなるのは当然であって、これといった土産なしに赫々たる成果を期待するのは無理です。
(日本はかなり不利な条件をのんだようでも、1月5日に書いたように愛国心が強いのと適応力が高いのでその内何とか出来るのでそんなに心配要りませんから、一見不利なようでも譲るべきは譲っても良いのですからこれを交渉担当者が隠す必要がありません)
むしろ、密室取引で外見上の大成果を上げたことにして、裏で国益上のマイナスを約束している方法だと国民が知らないために対応するチャンスを失うので、国益上大きなマイナスです。
何を(どの分野で)どの程度譲るべきかを国民が知った上で、どうしたら良いかを冷静に判断する必要があります。
不利・不当な要求だから日本はイヤだと言っても、アメリカと仲違いすればこれをチャンスと見る中国からもっと不当な要求をされる可能性が高いのですから、どちらかの不当要求を受入れるしかないという冷徹な判断が必要です。
第二次大戦後に勝者のアメリカにいろいろ不当(極東軍事裁判を筆頭に・・)な要求をされたことがあったとしても、ソ連に支配されていたのとどちらが良かったかというような議論が必要です。
同じ民族資質を持っていても東ドイツと西ドイツとではまるで国民の生活水準が違っていたことをちょっと考えれば分ります。
国際政治の現実を国民に開示してその上で国民が仕方ないと判断したことに従うことこそ、民主主義の価値観を共有する国家間の交渉です。
もしも交渉経過を公開しないで右翼の納得するような成果があったとすれば、その裏で何倍もの国益を国民の了解なしに売り渡していると推測した方が良いでしょう。
何倍もの国益を売り渡しても尖閣諸島を守ってもらう必要があるかどうかこそ・・放棄すればいよいよ中国が図に乗って来るかどうかを含めて、国民が冷静に判断すべきことですし、中国に良いようにされるくらいならここまでアメリカに譲った方が良いと言うのも国民の判断です。
要は中国の圧力に屈して中国に何を譲歩するか、中国からの圧力を跳ね返すためにアメリカに何を譲歩するかの比較考量の問題です。
情報開示によってこそ、比較考量すべき対象を国民が合理的に判断出来ます。
秘密裏に何をいくら譲っても良いから領土だけ守れというのが右翼とすれば、右翼とはそもそもなんでしょうか?
長期的な国益はどうでも良い・・愛国心などかけらもなく、子供じみた陣取り合戦にうつつを抜かすグループ・・ゲーム機愛好者のことでしょうか?
疑念を招かないために対米交渉は密室で行うのではなく、何を譲るように要求されているのかあるいは自主的に何を譲る予定なのかを明らかにして国民の判断権を尊重してこそ、民主主義国家です。
交渉内容を公開するのは国益に反するという言い訳が一般的ですが、コチラの今後の戦術を公開するのは問題ですが、相手が何を要求して来ているか、この時点でこちらがどこまで妥協の提案をしたかの開示は、既に過去にあったことですから、これを国民に知らせて何が悪いのでしょう?
既に提案したことは相手も知っていることですから、これを国民に秘密にする必要はありません。
にも拘らず担当者・政権が秘密にしたがるのは、自分のした提案が国民利益に反している・・国民の支持を得られないことの自覚があるから隠したい・不正な動機があるとしか考えられません。
「国民は馬鹿だから知らせない方が良いのだ」という旧来のやり方は民主制度を根底から否定する思想です。
良く知られる例で、独仏露の三国干渉に対する国民の不満・あるいは日露戦争後の講話交渉に対する不満・デモを歴史で習います。
だから国民には交渉に関与させないのが良いかのように・・教育されます。
しかし、これはその前提となる国際情勢・・正確な国力比較を国民に隠していたから国民が誤って不満を持ったに過ぎず、結局は情報開示不足が原因でした。
中国国民や韓国国民の非常識な反日行動は中国政府が日本からの円借款等の援助による恩恵を隠して自力で産業を興したかのように宣伝していることから起きていることです。
政権担当者が実際以上に自己の成果を強調すると、後で咎めが出て来て却って相手国との友好阻害要因になります。
我々弁護士で言えば、交渉内容や裁判の見通しを依頼者に説明しないでやっているようなもので背任行為を前提にしているのです。
100円の物を100円で買って来るのは当たり前で、100億円の商品・権益を手に入れたという自慢は良いのですが、その対価としていくら払ったのか・何を対価に提供したのかこそが、その人の交渉力を知るのに重要です。
安倍政権が対米交渉を秘密裏に行い成功したと宣伝している場合、提供した対価を公開出来ない以上は、マトモな交渉が出来なかったことを自分で証明していることになります。
会社に内緒で大幅値引きやサービスを顧客に約束して営業成績を上げていて、後に発覚して会社を困らせる営業マンがいます。
密室交渉にこだわる政治家はこうした営業マン同様で国・国民にとっては困った政治家です。

密室外交と情報開示1

手みやげなしに「軍事同盟だけ強化しましょう」と言っても、メリットがなければアメリカが乗って来ないとすれば、安倍政権は尖閣諸島防衛協力の見返りに何を、どの程度アメリカに売り渡すつもりで言っているのでしょうか。
安保条約を片務関係から相互条約に変える・・米軍防衛もする方向に変える必要があるのは当然と思われます。
これ以上に日米相互防衛の範囲を台湾、フィリッピン〜東南アジア全域(シーレーン防衛)に広げる・・この当たりでも日本が米軍に協力・補完するのは、対中国関係でも戦力強化訓練になるし、将来アメリカの防衛がそれほど当てにならなくなった場合、ある程度自力防衛出来る準備になるので日本にもメリットです。
(ただし憲法9条との関係では別の検討課題であることは当然です)
重要なのはTPP(具体的内容が何故か賛否双方からあまり開示されません)その他経済支配関係の受入れですが、安倍政権は密室取引で受入れるのではなく、これをきっちり国民に開示する必要があります。
ただし、元旦から書き始めていて横に行っていますので後に書きますが、かなりの部分で解放に同意しても日本は最先端の国ですから、欧米勢に席巻されることは滅多にありません。
誰でも知っている例で言えば、仏の世界大手カルフールが日本上陸しても日本市場ではまるで歯が立たなかった例で直ぐに分るでしょう。
(牛肉でもサクランボでもアメリカからのものは最低品としてしか扱われていません)
韓国が外資の支配を受けているのは資本蓄積がマイナスだったから起きたことですが、日本の場合世界一の純債権国・資本蓄積が厚いので心配がありません。
いつも書きますが、日本社会は何周回も世界の先を行っているのですから相互解放は日本に有利です。
ですから相互市場開放で日本が少し多めに譲っても日本植民地化の始まりではなく、実は日本に有利です。
何を譲って何を守るかを国民が知ってこそ、そのどちら(同盟強化か否か)をとるかの判断を国民が出来ます。
この取引を密室で行う・・国民判断を仰ぐのを回避する(参院選挙後に行う)のは、国民の意思によらない取引をしたいからでしょうから、結果的に国民利益に反することになります。
(国民の利益になる自信があれば、選挙前に国民に手土産・取引内容を開示すれば良いでしょう)
アメリカの要求が日本の弱みに付けこんだ不当なものかどうかではなく、不当であってもそれ以上の国益を守れれば良いし、「そこまで要求されるなら尖閣諸島防衛してくれなくて結構」と突き放す判断の前提を国民に明らかにすべきです。
不当な要求でもトヨタはアメリカで商売するために、解決金を支払っていることを3日のコラムで紹介しました。
対中国関係のために同盟を強化するならば、アメリカの要求を飲む場合の日本の不利益と尖閣諸島を死守する国益とどちらが大きいかの判断は国民がするべきであって密室取引にする必要はありません。
右翼のようにナショナリズムだけ煽って、「どんな不利な取引でも(これ闇に隠して)尖閣諸島さえ守れれば良い」という雰囲気を作り出すのではアメリカの思う壷にはまります。
湾岸戦争時の約1兆円だったかの冥加金の支払や・・トヨタのようにインチキな不具合と判明しているのに解決金を払わざるを得ない・・不当賠償金支払決断ならば1回切りのお金の損害で済みます。
国債をドンドン外国に買って貰い、企業支配まで受入れるお土産では、韓国のように半永久的に経済植民地支配を受けるようになります。
企業のみ栄えて(その利益は外国資本家・・外国流出)国民は貧民化する・・このようなことと引き換えに尖閣諸島防衛を口先だけ言ってもらうのでは、日本にとってどう言う価値があるのか分らない尖閣諸島を死守する必要があるのか?となります。
離島1つの防衛よりは、(年末に書いたようにイザ戦時になると尖閣諸島防衛は放棄することさえあり得ます)民族全体で植民地支配を受けるかどうかの方が重要でしょう。
辺境の防衛は本土防衛のために意味があるのであって、本土国民が離島防衛約束と引き換えにアメリカに隷属するしかないのでは本末転倒です。
口先表明してもらっても・・数年〜10数年先に危機が具体化したときに本当に防衛してくれるかは、そのときの世界情勢次第ですから、今からの口約束は大した約束にはなりません・・・。
(これまで60年以上も広大な基地を提供し、巨額防衛分担金を払って来ていても、今回具体的な危機が起きると口先だけでも言ってもらうのに何か手みやげがいるのが現実です)
尖閣諸島防衛の口約束と引き換えに何をアメリカに提供(先履行)するのかを明確に国民に提示すべきです。
湾岸戦争協力金のように現金支払だけならば、緊急時に本当に戦争に参加してもらうための追加支払もまた出来ますが、企業支配を許した後では、もう追加提供するものがないので、もっと酷い追加要求・・非正規雇用の比率増加・環境規制の緩和など医薬品であれ食品であれ、「全てアメリカ基準どおりであれば何でも国内パスするようにしろ」(全ての分野で国内検査禁止)と言う内政干渉そのものが待っているでしょう。
言い換えれば企業支配を受入れない・・民族資本である限り古くは東芝、最近ではトヨタのように時々不当な巨額資金の支出を求められる危険がありますが、その程度で口先防衛してくれるかどうかです。
韓国のように植民地支配を受け入れてしまえば、アメリカ内国企業並み恩恵・・時々巨額資金の支払を求められることは今後なくなるでしょう。
アメリカは中国の圧力を利用して(日本が弱ったこのチャンスに)今回は一時金ではなく国債を含めた金融支配・恒久的企業支配を求めて来ると思われます。
安倍政権が、外見上の日米蜜月を作り出す自己の得点稼ぎのためにこっそりと日本の一番守らねばならない部分をアメリカに売り渡してしまわないかと心配しています。
歴史上対外的に勇ましいことを言ったりやったりしている政治家ほど、これを実現するために裏で国の大事な部分を売ってきたのではないでしょうか?
一方的な戦勝による軍事占領であれ、何であれ一見大きな成果獲得には、必ずそれに伴うマイナス(戦費負担・傷病兵の増加・相手国に恨まれるなど後世へのマイナスははかりしれません)がつきものです。
民事交渉でも同様で、ヤクザのようにやらずぶったくりなどあり得ないのですから、交渉妥結には必ず正当な対価(以上)が必要です。
多めに譲ったように見えても上記のとおり日本社会は進んでいるので実際に(何周回遅れの後進国)アメリカが日本の懐に手を突っ込めることは殆どありませんから、右翼・言論人が大げさに騒ぐほどのことは有りません。
右翼・言論人の主張の多くは日本が大幅に遅れを取っていること・劣等意識を前提にした意見が多いことになります。
(この辺は中韓の愛国的発言も潜在意識として自国の遅れ・・劣等意識の裏返しになっているのと同じです)

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