企業の政治離れ2

官僚出身政治家に頼って来た自民党政権の凋落は、官僚不信とセットでしたので、政権交代では、民主党は官僚排除(官僚答弁禁止など・・)を公約に掲げるほどになっていました。
昨年の原発事故が自民党政権下で発生していたら、これまでの安全だと言い張っていた官僚答弁は何だったのかという批判が噴出していたでしょう。
原発のような大事故が起きる前から、官僚に対する国民の信頼が地に墜ちていてその約1年半以上も前から官僚批判を中心にして政権交代になったのですから、国民の目は確かです。
原発事故当時の菅総理はまさにこうしたときの追及型政治家としてピッタリの資質ですから、彼が事故収束に骨を折リ、長かった自民党政権下で形成された安全基準や危機対応プロセスの整備がお粗末だったことに対して国民に陳謝するのはミスマッチの配役でした。
政権交代が一年半ほど早過ぎたことになるのでしょうか?
平成に入ってから、政治環境変化に対して企業の逃げ足が速くなって来て、個々人あるいは海外に逃げられない労組が国内政治の主要ステークホルダーになった以上は、以後の政治は彼らからの直接的支持なしには存立出来ません。
この受け皿としては、伝統的野党である民主党あるいは公明党や共産党・社民党くらいです。
企業利益目的の公共工事がひいてはその従業員・・個々人に恩恵が及んで行く間接効果を期待する時代から国民個々人への直接的バラマキが横行するようになってしまった原因でしょう。
国民から直接支持を受ける上記各政党は批判・・要求政党としては訓練を積んでいますが、いずれも業務遂行の主役になった・・実務経験のない点が最大の弱点です。
経営・・業務遂行の実務経験のない砂粒のような国民の支持で実務経験のない野党が政権を取ると、政権を鍛える実務家がいないので、政権党になって何をやってもつまずきが多くて危なっかしいのは当然です。
韓国はアジア危機以来海外展開を進め多国籍化を推進して来た結果、(自由貿易協定に世界一熱心です)サムスンなど多国籍化した企業が支配的ですから、日本より一足早く企業支持を受けない野党の弁護士出身のノムヒョン政権が誕生したのは偶然ではありません。
彼が大統領になってみると実務能力がないとの散々の評判でしたが、韓国に限らず多国籍企業の多い国々では、財界が国内政治に対する意欲をなくし勝ち・・ひいては自国民に対する福利・ウエルフェアの意欲が薄まるので、韓国等の個々人は悲惨です。
韓国では大企業が自国民を植民地の現地人扱い・収奪の対象にしているのじゃないか・・国内植民地という視点でJune 3, 2012に書きました。
韓国民の海外脱出熱が世界一高いのはその結果ですし、多国籍企業中心の時代が来れば(海外にも軸足をおく経済界の利害と国民の利害が一致しなくなって来るので)どこの国でも政治に対する不満が強くなります。

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