貿易収支赤字転落(原発事故)1

これまで新興国の停滞ラインがどの辺になるかの関心で書いてきましたが、・・今後我が国の(国際平準化後の)安定ラインはどの辺になるかを見て行きましょう。
イギリスが第一次世界大戦前からドイツやアメリカの追い上げを受けても、我が国のように産業高度化に構造転換して穴埋め仕切れなかったことが、現在に続くポンドジリ貧の原因でしょう。
(勿論イギリスも一定限度で高度化出来ていてロールスロイスのように世界最先端技術もありますが、国・社会全体の裾野の広い転換が出来なかった・・トータルでみるには貿易収支でしょうが、貿易収支が黒字にならない限り転換がうまく行ってないと言えるでしょう)
ちなみにイギリスの国際収支を日本の財務省の統計でみると1980年以降1回も黒字になっていない・・ずっと赤字の連続です。
日本はバブル崩壊後も約20年間巨額貿易黒字のままGDPが微増あるいは現状維持を続けていたことを国際収支表を紹介しながら書いてきました。
世上失われて10年とか20年と揶揄されますが、国内総生産が微増を続け、経常収支の黒字が莫大なまま推移していたことを見れば、結果として昨年の大震災までは日本は中国等新興国に追い上げられながらも構造転換に成功していたことになります。
まして、対ドル円相場がこの間に2倍近くも上がっていることから、ドル表示で見れば、驚異的高成長を続けて来たことになります。
昨年の大震災以降発電用燃料の大規模輸入により貿易赤字が原則化し始めているのは心配ですが、石油ショック時にも一時貿易赤字になったことがありますが、苦節何年・・ついに盛り返して経常収支巨大黒字のままで現在に至っています。
今回も試練・・燃料輸入増による貿易赤字化のピンチをチャンスの切っ掛けにして更に強い日本を再生出来ることを期待しています。
貿易赤字が定着するとなれば、ギリシャ並みに緊縮・・更なる構造転換の必要性が現実化してきます。
先ずは貿易赤字の行方・・解消見通しが重要です。
石油ショックのときは、企業の海外展開はホンの僅かでしたので企業も一丸となって全力投球で適応するしかなかったのが功を奏したのですが、今では、大手企業の大半が世界各地に工場を持っていて国内生産はその一部でしかありません。
今では企業に取っては輸出・生産環境の変化は、内外生産比率の変更で事足りるので、政府に円高対策を求めるとしても切実ではないし、その他環境や規制変化に対し企業にとっては血のにじむような新展開努力をする必死さが薄れています。
国内のスーパーなどが各地方自治体の政治には関心があるものの、その結果に対して早く反応することが主目的であって政策実現に向けた努力を殆どしないのと似ています。
全国展開のスーパーや大型電気店にとってはどこかの県にこだわる必要がなく、より有利な所に出店を加速すれば足りる関係ですが、多国籍企業もこれに似ています。
6月24日日経朝刊第一面を見ると、ホンダ(はその一例)も日本からの輸出(生産)を減らしてアメリカで増産してアジア諸国への輸出に切り替えて行く戦略が出ていました。
こうなって来ると日本企業の定義って・・・?と疑問を感じる人が増えるでしょう。
こうした動きが目白押しですので、燃料輸入増で困っているので本来は輸出を増やさねばならないのに、日本からの輸出が減る方向の動きが多くなっていることと石油ショックのときにはまだ伸び盛りの時代でしたが、今は高齢化社会に入っていることもあって、今回は貿易赤字解消がかなり難しいかも知れません。

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