中国がリーマンショック後約40兆円の財政出動すると宣言したときにその資金をどこから引っ張るのかについての報道がなかったので、以下は推測に過ぎません。
私が常々書いているように、自国通貨建ての国債の場合には、中央銀行が無制限紙幣発行(約40兆円分)をして、その紙幣で無制限に国債を引き受ける方式が可能です。
・・あるいはその応用かもしませんが、外資による中国国内への投資金をそのまま外貨準備にしないで、人民元に両替したりして国内で使う・・それでも不足する分は、外貨準備金を取り崩して人民元に両替する方式を取ったのではないかと推測されます。
これまでは人民元を国内にだぶつかせないためと人民元の為替相場が上がらないようにするためにトヨタ・日産などのドル外貨による投資があると、その資金(ドル)そのままで(人民元に両替する元が上がってしまう)アメリカの国債を買って人民元に両替しないままで来たのですが、この逆張りをやっていたと思えば良いでしょう。
リーマンショック後人民元の対ドル相場が少し上がったのは、外資による投下資金をそのままアメリカ国債購入資金にせずに国内で人民元に両替して国内で(中国政府債の引き受けに)使ったりそれでも不足する分はドル外貨準備の還流(ドルを売って人民元を買うのですから)の結果と見れば整合します。
17日の日経新聞朝刊11面では
「中国の為替制度がドルやユーロのバスケット方式なのに、ドルが下がっても対ドル相場だけ上がって来たのはアメリカに対して配慮してきた結果であり、ここに来てユーロに連動して下がっているのはアメリカに対する配慮がなくなっているからである」
と書いていますが、配慮の問題ではなく経済合理的な行動結果・ドル預金を減らしていることによるものではないでしょうか?
(ここに来てユーロと連動して下がっているのは、欧州経済依存度の大きい中国経済の実態・・対欧州貿易黒字の減少によるものでしょう)
中国が上記の通り外貨準備の取り崩し、あるいは外貨準備に回すべき資金を国内で人民元に両替して使うことによって、外貨の両替があった分だけ国内に人民元紙幣が多く出回ります。
この約40兆円分の紙幣増加が不動産バブルと食品インフレ発生の元凶になったでしょう。
何回も書いてきましたが、我が国のように生産過剰で飽食高齢化社会の国では、紙幣が2倍流通しても野菜や牛乳、アイスクリームを2倍食べたい人が少ないので消費が伸びないで預貯金が増えるだけですが、中国ではまだ飢餓線上の(大げさかも知れませんがこれに類する)国民が何億人といますので、紙幣が仮に2倍手に入れば消費材全部平均に資金が向かうのではなく、底辺層では生鮮食品に集中しますので消費が2倍どころか5〜10倍に伸びることになるのは当然です。
一定の収入以上になっている・・例えば上海の中間層にとっては食料品への渇望は卒業していますが、今度はマイホーム入手が夢ですから、そこへ殺到します。
仮に5%の紙幣増刷供給増があったとすれば、生鮮食品と不動産にこれが集中したので食品関連では50〜100%前後のインフレとなり不動産関連ではバブルとなってしまったのです。
補助金の関係で白物家電製品等へのシフトもありましたが、これは元々リーマンショック→輸出減による生産縮小の下支え目的ですし、需要に応じていくらでも増産可能なので、インフレにはなりません。
すなわち現在社会では、工業製品は補助金を出しても(車であれパソコンであれ・・)生産過剰の下支えになるだけで物価上昇には全く寄与しませんが、(我が国でテレビの地デジ移行に伴う特需がありましたが、量が売れただけで値上がりはしませんでした)食品関係は(野菜であれ豚肉であれ・・牛乳であれ)需要急増に合わせて増産を始めても一定期間かかるのでその間急激なインフレになります。