新興国(特に中国)の将来にテーマを戻しますと、社会保障制度の実現は工業製品等と違い先進国からの製造装置輸入や製品模倣で間に合わせることが出来ないので、後から来る後進国の追い上げによるリスクよりももっと大変な事態が待ち受けています。
社会保障分野の蓄積が進まないうちに、次の後進国に追い上げられ、更にはもうすぐ高齢化社会に突入すると悲惨な結果・・社会大混乱になる可能性があって中国政府は「未富先老」を恐れて必死です。
たびたび中国の景気減速を書いてきましたが、金利下げ報道の翌日の6月9日の日経夕刊では中国国家統計局の9日発表を紹介しています。
これによると今年4月の消費者物価指数はまだ3、4%アップですが、(その内生活必需品の生鮮野菜は前年同月比31、2%増)工業生産者出荷価格が3ヶ月連続して前年同月比1、4%低下と発表しました。
製品を作っても売れないための卸売り価格低下傾向が続いていることが明らかとなってきました。
同時発表によると鉱工業生産は9、6%増となっていますが、3ヶ月も連続して出荷価格が下落しているのに、9、6%も増産していたとする発表はおかしなものです。
売れないから値下がり続いているのに、もしも本当に3ヶ月も増産を続けていたとすればこの後急激な在庫整理・・減産にならざるを得ません。
これに伴い労働時間減→収入減が続く筈ですが、生鮮野菜で30%台の値上がりが続いているのではエンゲル係数の高い庶民にとっては大変です。
これを防ぐには輸出ドライブしかないのですが、6月11日の日経夕刊第3面では5月の輸出入統計が発表されて、1兆4800億円の黒字・・1〜5月累計輸出額で前年比8・7%増、輸入額は6、7%増にとどまるとされています。
昨年からの輸出急減と対中投資減少で人民元相場が下落しているので、これを利用した輸出ドライブがかかっている様子です。
(それでも2011年通期の輸出額が前年比20、3%増だったのに比べて伸び率は半減以下ですし、中国の需要減速でアジア諸国の素材価格が2割減などと報道されている状態ですから、輸出の急速な持ち直し発表も真相不明と言うべきでしょう)
政府発表が正しいとしても中国経済が20%増を前提にした経済で、8%台に下がると急激な失速感は否めないということでしょうか?
生産量は、各地方政府の上乗せした報告の集計なのでしょうが、経済は価格次第ですので何ヶ月も売れ行きが悪くて出荷価格の下落傾向が続いているときに、増産を続けられる企業はありません。
価格相場は市場・・外国企業関係者の目があるので余り大きく誤摩化せないとすれば、価格動向によって経済指標をみるのが正確さに一番近いでしょう。
人間は過去のパターンが続く前提で行動するものですから、前年まで20%成長であれば今年もそうなると思って設備増強している企業が多く、10〜20%増産したら8%増にしかならなかった、・・その結果出荷額が値下がりしているのでしょうか?
生産設備だけではなく新規労働力がまだ年々10%前後も増えて行く新規労働力供給社会ですと成長率が8%前後に落ちると大変です。
中国社会・経済はどの程度の低成長に耐えられるのかが今後の課題になってきます。