新興国の将来4(人材養成)

同胞意識の低い新興国では格差是正が容易でないことを書いてきました。
後進国の追い上げに対し、一方では先進国へのキャッチアップにも連なる高度化のための高学歴者大量輩出政策が功を奏するでしょうか?
中国も韓国も産業を早期に高度化に対応することを焦って?多量の大卒を生み出しているのですが、この分野の産業が育っていないので就職先がなく、どちらも大量失業者(中国ではネズミ族というのかな?)を輩出しています。
需要がないのにこれから産業高度化が必要とする発想で大卒を大量に生み出しているのですが、受け皿がなくて大卒の大量失業が大変な事態になっている点は中国・韓国共通の悩みです。
我が国の公認会計士や弁護士大増員政策でも同じですが、需要を無視して政府が先に大量供給したからと言って需要が増えるものではありません。
シリコンバレーで大量の失業者が出て、その人たちが先端産業を興した成功体験に刺激されたのでしょうが、失業者は一応熟練・・一定の技術・経験(営業その他で取引に習熟しているなど)を持っている人たちでしたから起業するに足りる経験・準備ができていました。
大学を出ただけで社会経験の全くない大量の学卒が就職出来ずに腐ってる場合、就職出来ない人材は学生の中の比較劣等生が中心ですから新規産業を起こせるような人材が滅多にいません。
(日本でも長銀倒産に絡んで優秀な人材が起業に成功している例があるように・・企業倒産の場合優秀な人材の放出があり得ます)
就職出来ない若者が親の家に居候して、フリーターを10年もやっていても人材が腐るばかりです。
我が国でも新卒が就職出来ないままモラトリアムを続けるばかり・・働いてもフリーターや非正規雇用しかないと技術修得の機会がないまま中年化して行くリスクが問題になっています。
彼らが新産業を創出するなど全く期待出来ないことが明らかです。
需要の先読みをして供給すれば大当たりですが、先の見込みもないのに・・山奥にいくら巨大なデパートや遊園地を作っても客が来なければどうにもならないのと同じで、そう言う見込み生産は民間に委ねるべきで、どこの国でも政府がそのような先見能力があるとはとても思えません。
装置産業の新規投資でも慎重に需給動向を見通してやるものですが、学生やドクターの養成・・人材養成の場合設備のように簡単に設備廃棄出来ないのですから、より慎重にやるべきことで供給を増やすにしても1〜2割くらいずつ様子を見ながら増やして行くべきものです。
弁護士の例で言えば、従来の年間合格者500人(・・判検事になる人が約120人いましたので400人弱が弁護士になる時代でした)から3000人→年間2500人も増やすとなれば、(ちなみに増員決定時ころの千葉県登録弁護士の総数は200人前後でした)千葉県の規模の弁護士会が年間10数個以上も増やす無茶な計画でした。
企業の海外展開に対応するなど新たな分野への法律家が必要としても、年に1〜2割ずつ増やして様子を見て行くのが普通の経済感覚です。
経済原理を無視した計画が行き詰まり、今年の春には総務省自体がこの増員計画の見直しに言及する事態になっています。
このように中国韓国等も高度産業界の需要見通しもなしに大卒を大量供給すれば何とかなる・・需要が増えるという乱暴な実験は失敗に帰しつつあると言えるでしょう。
両国の輸出が増えれば日本からの高度部品輸入が増える構造(両国共に対日貿易赤字)ですので、この打開に必死ですが、学卒や修士博士の大量輩出ではなく、中間人材の技術力の差ですから、その養成こそが必要です。
現場技術力は現場で時間をかけて磨いて行くしかないので、学校さえ大量に作れば促成出来るものではありません。

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