為替相場2と輸出入の均衡1

輸出主力産業の入れ代わりの歴史を比喩的にみれば、売上高利益率が5〜10%の企業にとっては円が1割以上上がると利益が吹き飛び赤字または輸入産業に転落ですが、利益率2〜3割の企業にとっては円がⅠ割上がってもなお黒字を維持出来ます。
比喩的に言えば(具体的な統計に基づく意見ではないという意味です)、繊維系が輸出主力から落ちて行き、例えば売上利益率が数%に落ちてかろうじて輸出している状態で、代わりに電気系(家電から半導体や電子関連)業界や新興の車業界の輸出利益率が2〜3割を超えて来たときに電機系その他産業の儲ける黒字と原油・食糧・鉄鉱石等その他輸入等を総平均して円が10〜12%上がると、繊維系は赤字化して輸出競争から振り落とされてしまいます。
円が切り上がる都度、上がった後の円水準でも輸出出来る産業に輸出主力産業が次々と入れ替わって来たのが高度成長期からバブル期までの我が国産業界でした。
輸出主力の変化に伴い、効率の高い産業に労働力が入れ替わって行く方が合理的ですから、ついて行けないで泣き言を言ってる産業を保護する必要はないし、保護すれば却って効率の良い産業へ人や資源が移動・集中出来ずマイナスです。
転進出来ない弱者に対するセーフテイネットの構築の必要性があるのは別の問題です。
所得収支や移転収支の効果を度外視した場合の為替相場変動の効果を少し見ておきますと、閉ざされた世界・競争相手が限定されていれば、360円時代から順次円高になれば日本との競争に負けていた西洋先進国が為替上有利になって復活できることになるので、いわゆるプラザ合意はこれを期待したと思われます。
欧米先進国では日本に対する為替切り上げ要求(プラザ合意)によって日本からの輸入は減らせたものの、日本はその穴埋めを新興の韓国・台湾等・・更には東南アジアに広げて現地生産して迂回輸出し続けました。
輸入相手が日本から韓国・台湾・・次にはタイなどからの輸入に入れ替わっただけで、欧米諸国の貿易収支の修正・・輸入を減らして国内産業保護の目的を達成出来ませんでした。
欧米諸国は日本を叩き過ぎることによって、パンドラの箱を開けたかのように日本以上に低賃金の競争相手が無限大に増えてしまった・・これがグローバル化開始の根源です。
アメリカは為替だけではなしに通商法301条を制定して日本からの輸入を規制して来ましたが、日本はアメリカ現地生産を増やした外に第三国経由(部品等の輸出で韓国や台湾・タイ・最近では中国で第三国生産して)ですり抜けたので、結局欧米諸国の大量生産は復活出来ないまま現在に至り、ついにはその咎めが一番弱い南欧諸国に出たということでしょう。
欧米諸国は日本の次はどこそこと順次為替切り上げ圧力でやってきて、ここ数年で言えば、為替の切り上げ標的が中国になりましたが、中国の元をいくら切り上げても、次はベトナム、ラオス・インド等新たな競争相手が出て来る仕組みになってしまったので、この連鎖が始まった以上は、アメリカや欧米あるいは日本の大量生産が復活することはあり得ません。
(ましてや中国の日本等との工場労働者の賃金格差が今でも約十分の1ですから、5%や10%元が切り上がっても先進国との競争では問題になりません)
インドやブラジルの為替が将来切り上がっても今度はアフリカが参入するでしょうから、近代工業化が世界の隅々まで行き渡って(生活水準の平準化が完成して)初めて為替相場変動による輸出入の均衡理論が妥当することになります。

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