為替相場1と輸出産業の変遷1

介護や保育所の増設とそこでの雇用吸収は、一家で見れば共働きのうち一人が失業したときに、それまでかまけていた子供の世話(保育所の増設)や、高齢者の面倒(介護分野の充実)を専属で見られるようになったのと同様です。
ただし、これを収入を失った失業救済という後ろ向きで見るのではなく、別の前向きの見方も可能です。
リーマンショック以降の超円高によっても生き残れる企業にとっては、ドル換算では約1、5倍以上の高収入になった勘定です。
ここで、円相場と国内総生産の関係を見ておきますと2012-1-16日の円相場は1ドル76円79銭ですが、1998年7〜8月には143円70銭台で、2007年ころでも1ドル120円平均でした・・・98年に比べて円は約2倍、2007年比でも約1、5倍に上がっています。
バブル崩壊後失われた20年と言われていますが、国内総生産はこの間高度成長ではなくなっただけで円表示でジリジリと上がっていたことについては、以前から紹介している通りです。
(19日の追加ですが、同日の日経朝刊1面「日本の企業力」の記事の冒頭に「2000年から07年まで日本の名目総生産は13兆円増加した」と書かれています。)
仮に同じとしてもドル表示で言えば98年比で約2倍に、07年比で約1、5倍に総生産が増えていたことになります。
実際、昨年暮れから年初にかけてのデパート等で高額商品が何割増の勢いで売れています。
上記比率は労働人口が同じとした場合の比率ですが、団塊の世代が退職し他方で少子化の影響で若年労働力の新規参入が減ったので労働者の絶対量が減っているばかりか、失業者や非正規雇用が増えているので、残った正規雇用者だけで見れば上記比率以上にかなり生産性が上がっている計算です。
ドル表示が上がっても自分には関係がないと思っている人が多いでしょうが、実は円が上がれば我が国では、輸入物資で生活していることが多いので、直接間接にいろんな分野で物価が値下がりして国民の実生活は豊かになっています。
(マスコミや学者はデフレ脱却を目指しますが、デフレは国民には良いことであることを、以前からこのコラムで書いています)
一家で2人で働いていたときに、その内一人の収入が2倍になれば一人の方が外から稼ぐのを休んで、(2人とも早朝から深夜まで働き詰めで)それまでかまけていた家庭に花を飾ったり整理整頓し祖父母や子供の世話をして生活水準を上げる仕事に就くのは、失業ではなく合理的選択とも言えるでしょう。
豊かになっているのに睡眠時間まで削って2人で目一杯稼いで貯蓄を殖やすばかりでは、さらに円が上がってしまいます。
2倍にまではなっていないまでも5人で働いていた分を4人で働けるとなれば、一人は生活水準向上に振り向けても良い関係です。
高度成長以来の主力産業変遷の歴史を振り返ると、石炭が駄目になってから製鉄や石油コンビナート、造船、建設、繊維〜電機、機械等々次々と出て来る強い業種が大量の雇用吸収産業でもあったので、入れ替わりに淘汰される石炭産業以降いろんな産業がありましたが、衰退産業の底辺労働者を新たに主役になった産業が吸収して日本は低失業率を維持出来ていました。
日本の場合、戦後、繊維や造船〜電気〜自動車といつも大量雇用出来る産業が次々と発達してドンドン黒字を稼いでいたし、生活水準向上に伴うインフラ整備需要拡大に伴う関連職種・・これも底辺労働者の受け皿になっていました。
これらが稼ぐ黒字を前提に(しかも年末・12月30日に書いたように本来輸入すべきものまで補助金や関税で阻止していたので・・)次々と為替相場が切り上がって行きました。
グローバル化以降の約20年間は、それまでとは違って言わば輸出の主力が最終組み立て・大量生産品から、利益率の高い主要・高級部品製造あるいはソフト産業に移っているので、貿易収支の黒字を維持していても、底辺労働の雇用吸収力が弱いのが社会に暗い影を落としている原因です。
人材構成はどこの国でもピラミッド型ですので、底辺の方が数が多いことから高度化すればするほど適応出来ない人の方が、多くなる社会になるのを否定出来ません。
この現実が格差社会発生の原点であり、このテーマの関心で今書いているのですが、もう少し円高について回り道して行きます。
これら利益率の高い高度部品製造・高収益業種では、円高になってもそれほど驚きません。

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