現在の超円高は、過去の貿易黒字の蓄積の調整によるばかりではなく、円キャリー取引で海外流出していた=円を借りてドルに両替して海外に流出していた巨額資金が、アメリカでも低金利になったので日本から低利で借りているうまみがなくなって日本の銀行に返すためにドルを売って円を買う動き=ドルやユーロの売り圧力による側面もあります。
この後にも書きますが、日本は長年の貿易黒字の一部を海外投資に振り向けて来たので、その利子・配当収入が大きくなってその所得収支黒字が原因になっている面もあります。
(リーマンショック直前には貿易黒字を追い越して年間16兆円の黒字でした。)
超低金利によって実力以上の円安を演出していた無理が、一挙に逆流し始めたことになります。
(無理がとおれば道理が引っ込む」と昔から言いますが、それは短期のことであって長期的には無理を通しているといつかはその結果が出ることについては、「ショック」等の意味でこの1月8日に書きました)
産業の国際競争力は貿易収支のプラスマイナスで見るべきで、上記のようにその他の要素によって決まる為替相場の変化で見るべきではありません。
貿易赤字下の円高の心配があることをNovember 8, 2011「利子・配当収入(鉱物資源)で生活する社会2」前後で連載しましたので、今回はその続きです。
我が国の場合、海外投資による所得収支が、リーマンショック直前の最盛期には16兆円ばかりありましたので、(リーマンショック以降は世界的低金利になったので11兆円前後に下がっているらしいです)貿易赤字になってもサービス収支の赤字との合計額が所得収支の黒字と同額になるまで(移転収支がトントンとした場合)なお経常収支では黒字ですから、円が上がり続けることになります。
言わば所得収支(海外投資残=蓄積)があるから貿易赤字になってもまだ大丈夫というよりは、蓄積がるから却って傷が深くなる・・貿易赤字・競争力が既になくなっているにも拘らず円が上がり続けることになります。
健康管理同様に国の場合も鈍感よりは敏感(病弱な人)の方が早めに手当て出来ますし、・・蓄積の少ない韓国のようにその場その場の経済実力が直ぐに為替に反映する方が傷が浅く済みます。
セーフテイネットが充実していると当面悲惨な結果を回避出来ますが、その病理現象と言うか、失業保険が貰える間は無理することがないので対応が遅れる・・ランク落ちの職探しする気にならない人が多いのが現実です。
長期間遊んでいると仕事からはなれていた結果仕事勘が薄れるもので、数年にわたる無職期間があると採用側でも嫌がって再就職が難しくなります。
貿易赤字で大変な状態・・すなわち国内企業の倒産・縮小が続いても所得収支の黒字(個人で言えば貯蓄の取り崩しで)何とかなる限り、国民も失業前よりもランクの低い再就職に本気になり難いし、政府もバラマキはやめられないでしょう。
高度成長期と違って、国内産業縮小過程での失業の場合、前職よりランク落ちしないと就職先が滅多にないのが普通です。
これに順応する国民が多いと高賃金の是正作用が速やかに働くのですが、失業保険の保障期間が長かったり、貯蓄が多いときには簡単にはランク落ちの再就職に踏み切れない傾向があります。
中高年での割り増し退職金をもらっての失業者や定年退職者たちにとっては、失業保険受給期間中のランク落ちになる再就職には乗り気ではありません。
高齢者向け失業保険支給期間が長いのは高齢者が再就職に困るからと言うよりは、自分たちが長く保険料を払って来た権利だという意識で、満額までもらわねば損という感覚の人が多いようです。