ドイツ国債の売れ残り1

借金で誤摩化していても大きな企業や国は海外法人を巻き込んで複雑な操作が可能なので結果が出るのに長くかかるだけであって、その代わり結果が出たときには被害が大きくなります。
(オリンパスのバブル崩壊時の巨額損失先送りが、外国人社長の解任劇に端を発して最近明るみに出て大騒ぎなっていますが、規模が大きいと長期を要することが分ります。)
ギリシャのような小国と違い、イタリアがもしもギリシャのようなことになると,世界第7位の経済規模ですから、世界経済に与える混乱は半端なものでありません。
この混乱の影響が既にフランス国債相場へも波及しつつあると思っていたら、11月24日、欧州経済の要石であるドイツ国債でさえ発行額の約3分の1も売れ残りが出たので、大騒ぎになってきました。
私見によれば、ドイツ国債の売れ残りはドイツ国債そのものの信用力低下に直截よるものではありません。
ドイツの突出した国際収支黒字を背景にドイツの銀行等金融機関が貿易赤字国である南欧諸国の国債を大きく買っていたことによるものです。
貿易赤字諸国では赤字財政を組もうにも貸してくれる国内金融機関が脆弱・・資金不足ですから、国外勢に自国国債を買ってもらうしかありません。
ドイツ等黒字国が赤字国の国債を買うことによって、赤字分とほぼ同額の還流資金を得た赤字国は財政出動が出来、(公共工事をして失業救済したり、年金支給資金にしたり、)ひいてはその恩恵で国内生産高以上の国内購買力が維持出来ます。
この結果、赤字国国民は収入以上の買い物が出来るので・・国内経済が回って行く代わりに貿易赤字が続き・黒字国は赤字国の借金による消費力を利用して更に売り込める(貿易黒字を続けられる)仕組みでした。
これを繰り返していると赤字国の借金は膨らむ一方ですから、いつかは破綻するのですが、この辺のアフリカ最貧国に対する債務免除に関するローマクラブなど債権国会議の時代をNovember 5, 2011に紹介したことがあります。
今回のギリシャや南欧諸国の債務危機は、これまでのアフリカ最貧国に対する債権国会議のヨーロッパ版と見るべきです。
最貧国の債務が雪だるま的に増える状態になって来ると債権国は棒引きの会議をするしかないのはこれまで同様です。
ですから、南欧危機は独仏等の黒字・債権国の金融資産の大幅劣化・損失危機でもあったのです。
独仏等の金融機関はギリシャ危機によって保有債権の値下がり損失が大きくて、自国の国債を購入する資金余力がなくなって来たために、今回の自国国債を購入する資金が足りなくなったために売れ残ったのでしょう。
ですから,直截ドイツ国債の信用力がなくなって買い手がつかなかったのではないとしても、結果的にドイツの黒字蓄積と言っても同じ経済圏内の貸したり借りたりの数字に過ぎなかった意味がはっきりしてきて、国内金融機関が買わないと外国勢が買わないということは、長期的に見て信用力が落ち始めたことになります。
この辺はドイツの黒字と言っても、EU内の蛸足配当的黒字に過ぎなかったことをNovember 16, 2011「ギリシャ危機4(財政赤字の結末)前後で書いて来た通りの結果が出て来たに過ぎません。

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