ギリシャ危機とEUの制度矛盾1

グローバル経済が始まるまで日本の驚異的な輸出増によって輸出縮小・・国内生産減少に見舞われていた欧米の内アメリカ中心に書いてきましたが、ここから日本の攻勢に対する欧州諸国の対応を少し見ておきます。
アメリカは戦後世界の半分以上の生産力を誇っていて、超豊かな時代があったので日本やドイツからの輸入が増えて貿易赤字になっても、内需拡大で国内生産縮小を補えてたのですが、その惰性と言うべきか、蓄積を使い尽くして対外純債務国に転落してもそのまま贅沢をやめられなかったので、リーマンショックを引き起こしました。
欧州諸国は第一次と第二次世界大戦の戦場となって国富・蓄積を使い尽くしていたので、アメリカのような超豊かな時代がなかったので、日本に輸出で負けるようになっても内需拡大政策をとれませんでした。
その代わり採用したのが、10月18日に紹介した低賃金外国人労働力の導入でした。
ドイツやオランダの外国人労働力が有名ですが、イギリスでもフランスでも欧州諸国はどこへ行ってもアフリカ系や中国人や南欧など外国人労働力で溢れています。
20年ほど前にパリへ行ったときに帰りにホテルから空港までタクシーに乗ったら、運転手はアジア系で聞いてみると中国人とのことでした。
ま、日本人ではタクシー運転手になるために外国移住する人は今でも稀でしょう。
パリでもロンドンでも道路清掃やバスの運転手系は黒人が圧倒的に多い感じで人種別階層が出来上がっている感じです。
こうなると白人系の底辺層が(自分で敬遠して)こうした現場系労働から閉め出されがちですから、底辺層に人種差別運動・外国人排斥運動が起きるようになります。
今年の夏にノルウエーだったかで青年が外国人労働者増加に反対してこれを推進している大会に向けて無差別発砲事件を起こしたことで、こんな寒いところまで外国人労働力が浸透していることに驚かされたものです。
欧州諸国は外国人労働力導入によって日本に対抗しようとして、国内に高賃金の自国民と外国人労働者という2階層を作り出していたのですが、元々階級社会性・意識が色濃く残っている社会だから許容出来るのでしょう。
(ココ.シャネルの映画を見た感想として、所有権の絶対性に絡んで階級意識が色濃いことを、08/10/09「大名の没落と西洋貴族1(所有権の絶対性1)」以下のコラムで
少し書きました)
しかし民主主義国家ですから、賃金格差を維持出来るのは来たばかりの外国人だけであって、2世になると同等の待遇をせざるを得なくなります。
即ち外国人労働者を導入して4〜50年以上経つと、2〜3世の教育問題その他社会コストが増大して来る割にレベルの低さに悩まされるようになります。
フランス以北の欧州を覆う真の問題点でしょう。
ユーロ誕生後は単一経済圏誕生の恩恵で独仏以北の先進工業国は南欧諸国や東欧諸国を内庭として有利な輸出環境になったので、輸出が伸びて潤いましたが、その分南欧東欧諸国は借金まみれになってしまいました。
南欧の主な債権国は独仏英蘭であることは、独仏等輸出国が金を貸して輸出していたことの裏返しです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC