国際競争力低下と内需拡大7

国際競争力がなくなってからの財政支出増・・内需拡大策は貴重な資金が海外流出してしまうばかりで、国内生産誘発効果が少なく景気の下支えになりません。
内需拡大政策は、貿易黒字国が忙しく働き過ぎで生活を顧みる暇のない国にとって、稼ぎに見合った生活水準の向上を図るためには良いことであって、(行き過ぎた貿易黒字是正にもなり輸出量の縮小をしなくとも均衡出来るので)意味が有ります。
しかし、貿易赤字国化(輸出競争に負けて逆に輸入される側になると国内生産は縮小せざるを得ません。)した結果,生産過剰になって不景気になっている場合には、内需拡大のために財政資金を投入しても、国内産業が弱体ですから,その殆どが海外業者の受注になってしまいます。
あるいはその下請けとして国内業者が少しのおこぼれを貰う関係にしかなりません。
却って輸入拡大に結びついて余計赤字が増えて・・他方で国民は職場が縮小している・・失業者増あるいは残業手当減なのに消費が増える・・国民を甘やかすことになるだけで産業の復活には役立ちません。
アメリカは国際競争力を喪失しているから貿易赤字が続き、結果的に対外純債務国になって久しいのに、国民に質素倹約を求めずに景気対策として,財政出動拡大や金利を下げたり流動性を増やす・量的緩和と言えば聞こえが良いですが,紙幣の乱発=配給などしてきました。
しかし、紙幣を配って支出奨励策で国内景気を盛り上げようとしても、その供給の殆どが価格競争力のある日本やドイツ・今では中国、韓国,東南アジア、インドからの輸出を増やす・・輸入増加による赤字が増えるだけで、アメリカ国内企業の生産誘発効果が少なかったのです。
現在でもロサンゼルスの地下鉄や高速鉄道の受注で日本企業がしのぎを削っているのもその例です。
アメリカは汎用品等低レベル産業を海外依存しても上級品を造っていれば良いと思って長年やって来たのですが、10月29日に書いたように海外依存の汎用品のレベルが徐々に上がって行くので、今や、地下鉄や高速鉄道まで海外企業がになう時代が来ているのです。
ここまで来ると国内企業がやれる仕事は・・航空機やロケットくらいになってきますが、航空機でさえ、大分前から日本企業がその重要部品の分担を担うようになっています。
地下鉄など日本企業が受注しても,現場労働者・現地雇用は増えるでしょうが、骨格基幹部品・システム等は日本からの持ち込みになる比率が上がりますので、(地元で全部賄えるならば、地元企業が受注出来た筈です)内需効果とはそんな程度・・末端労働者に対する失業救済効果に留まります。
貿易収支が赤字に転落している国では競争力がないので、内需拡大政策は輸入拡大に繋がる面が多く、国力挽回どころか国富を流出させて疲弊して行くばかりです。
この40年ばかりこんな無駄な支出ばかりアメリカがやって来たのは、(日本も真似してここ20年ほどやっていますが、需要がザルのように海外企業に流出しているので)何の経済効果も出ていないのは当然です。
素人の私が言うのもおこがましいですが、世界中の経済学者の能力・構想力が低かったと言うべきでしょう。
農業補助金の無駄・・補助金行政ではその産業が復活することは出来ないという現実(補助金を出しても農機具や肥料メーカーが吸い取ってしまうばかりで農家は疲弊して行くばかりでした)は、国全体の補助金である内需振興策でも言えることです。

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