知財や金融では国民多数を養えません。
アップルが大成功して、株式時価総額が最大になっても、アメリカ国内雇用がそれほど増えた訳はありません。
世界を席巻したアップル製品製造の殆どがアメリカ国内ではなく、アジア諸国での生産増になっているのが現実です。
知財に限らず金融業も一人で100億円の取引も出来るし10億の取引も出来る・・人数を必要としません。
製造業であればどんなに機械化しても、そこで働く人は基本的に対等です。
仕事が人より早くとも力が2倍あっても生産性が2倍を超えるのは滅多に有りません。
農業も同じで、以前書きましたがどんなに努力しても能力差があっても、2倍以上の耕地面積比を逆転する収穫差をもたらすことは不可能です。
製造あるいは農業従事者では能力差だけでは2倍以上の収入格差を生み出せないのですが、商業では能力次第で店舗面積比ではなく何倍どころか何十倍の格差を生み出せます。
金融や知財となれば何百倍何万倍の格差も可能です。
我が国は、飽くまで愚直に農業・製造業にしがみついていることによって、格差の多くない社会を維持していることになります。
繊維〜電気〜製鉄〜自動車といくら日本たたきで規制しても日本に負け続けて、製造業での国際競争から事実上下りてしまったアメリカでは、その結果前回書いたように超格差社会・アメリカンドリームが目出たく?実現しているのです。
格差をなくすには,格差反対のスローガンでどうなるものではなく、製造業の維持が不可欠でしょう。
製造業があっても併存している僅かな商業金融業でも、一攫千金が可能ですから、(紀伊国屋文座衛門など枚挙にいとまが有りません)士農工商のような(勤勉を尊重する)価値観を維持して行く工夫が必要です。
私の言うのは身分差を造れというのではなく,お金を無茶に稼ぐのはどこか恥ずかしいという価値観の重要さです。
日本では松下幸之助でもソニーの創業者でも,仮に創業者利益が何千億円であろうとも,これをひけらかすような大邸宅を造りません。
明治の三菱創業者もそうですが、文化財として屋敷を残して直ぐに寄付していて東京の貴重な公園になっているように個人で飽くまで固執することをしない文化です。
大邸宅を構えることが許されない文化と言っても良いでしょうか?
天皇家でさえ,平成になってから皇居に入るのを控えたままですし,鳩山元総理も親の遺産である音羽の大きな屋敷には住んでいない様子です。
何らかの行事のときに使っているようで,言わば企業の迎賓館的役割です。
士農工商のような価値観のないアメリカで製造業が衰退して行った結果、格差拡大がモロに表面化して来たのは当然です。
製造業が衰退してから,内需拡大のためにアメリカ国内での財政支出を増やしても国内生産が増えません。
増えた内需目的に国際競争力のある日本やドイツ、最近では中国などの製品輸入がかえって増える状態です。
たとえば生活保護費を増やせば、そのお金で安い中国製の衣料やおもちゃなどを買う人が増えるだけです。
内需拡大政策・・結局は弱者対策ですから、高級品・ブランド品購入の奨励が出来ませんので、廉価品がその対象になりがちです。
後進国では内需拡大政策が国内弱小産業の育成になりますが、先進国が赤字化した場合、高級品しか造れない・・汎用品市場は輸入品に席巻されている社会ですから、(ここ4〜5日前の報道では日本の電機メーカーでは、テレビ生産から基本的に撤退して行く方向になりそうです)景気下支えの内需振興に対する供給は海外企業に頼る傾向が有ります。
太陽電池の例で言えば、内需拡大目的で補助金を出しても中国や韓国の廉価な輸入品に負けそうになっています。
(オバマ大統領が持ち上げていたアメリカの希望の星とも言える太陽電池企業がホンの1〜2年足らずで倒産の危機に瀕しているようです。)
ここ数週間タイ王国での浸水被害で日系企業の部品生産が滞っていて国内でも代替生産をする必要に迫られている企業が多いのですが、既に国内企業には技術者がいないためにタイから数千人単位の技術者が半年間だけ国内労働出来る例外制度が昨日成立したような報道がありました。
国内生産が空洞化して来ると,国内技術が喪失してしまう・・これが続いたら容易に回復出来ないとOctober 25, 2011「円高対策2(生産回復力)」前後で書いて来ましたが、今回の動きを見ると汎用品生産(と言っても後進国に移管するレベルが徐々に上昇して行き、その分失われて行く国内生産技術が足下から次第に水位が上がって行きます)では、既に国内技術者がいなくなっていることが白日の下に曝されました。
後進国だと思っていたタイ王国から国内労働者の指導をして貰う技術者を数千人規模で招かないと国内で代替生産が出来ない時代が足下から始まっていたことが明らかになりました。
まだ技術喪失してから10年前後でしょうから(分野によってはまだ2〜3年)ちょっと指導してもらえれば、日本人が直ぐに適応出来るでしょうが、今回のような水害がなければタイその他の東南アジア諸国に移管しっぱなしですから、数十年も経過すれば完全に喪失してしまうことになります。