社会構造変化と非正規雇傭の増加2

非正規労働者の増加原因の分析については、製造業等のオートメ化・電子化等の合理化による雇用減少や産業の海外移転による労働者の受け皿削減分がどのくらいで=本来新たな受け皿がなければ職からあぶれるべき人の受け皿になった分がどのくらいあったかを数字で明らかに出来る筈です。
内訳を明らかにした上で論じないと、ムード的なスケープゴート探しの主張に過ぎず説得力がありません。
非正規が増えたので正規職員が減ったのではなく、正規職場の減った分に近い非正規の受け皿を何とか用意出来たので、わが国では欧米のように失業率(欧米では10%前後が普通です)が上昇しないで済んでいると言えます。
ちなみにギリシャの失業率を見ると、調査機関ELSTATによると今年の第2・四半期で16、%の失業率と言われ、15─29歳の若年層で、失業率は32.9%だった報じられています。
ちなみに、平成バブル崩壊後増えた職場は殆どが内需振興型・・公共工事や医療・福祉関連等のサービス業・・一種の失業対策事業であって、対外的収入を獲得出来るものではないので、これは膨大な貿易黒字の蓄積があってこそ可能になったものです。
ちなみに、製造業や公共工事が駄目なら医療・福祉へシフトすべきだ・・その分野ではまだまだ人手が足りないという主張が多いのですが、一家の働き手が失業して遊んでいるならば家の掃除やお婆さんの病院への送り迎えや介護を手伝うべきだというのと同じで、一家(国家)の総収入が減ったままであることは同じです。
本来収入減に合わせて支出を抑えるのが本則ですが、景気対策としてこの逆ばりで内需拡大・・支出を増やす政策を世界中でとってきました。
この方面へのシフトは必然的に一家・国家の貯蓄食いつぶし・・フロー収支で見れば赤字政策ですから、このシフトが始まった平成のバブル崩壊以降財政赤字の拡大・・年金や医療保険の赤字が始まったのは当然です。
(年金や保険の赤字原因は、少子高齢化だけの問題ではありません)
・・ですから、対外純債権(日本国の対外貯蓄)のあるうちにこの余剰人員・失業者を減少させて労働市場の需給を均衡させてしまう必要・・・・人口減少政策を促進すべきと言うのが年来の私の意見です。
純債務国になってもまだ過剰労働力を抱えてままで失業対策的内需拡大=赤字政策を続けていると、アメリカやギリシャの二の舞になってしまうでしょう。
世界の工場として輸出していた時期に需給が均衡していた労働力は海外輸出の減少・・貿易収支の均衡化=国内需要分を越える生産力不要化に合わせて労働力過剰が生じますから、これに合わせて労働力を減少させて行かないと失業者が溢れてしまいます。
急激な労働需要の縮小に対応する人口減は(30年以上かかるので)直ぐには間に合わないのでその間の緩和策として内需振興・失業対策事業があるのですから、対外純債権国である間は貯蓄を使ってやって行けるとしてもいつまでも続けていて、その内貯蓄(対外純債権)を食いつぶしてしまうと大変なことになります。
対外純債権・貯蓄のあるうちに早期に財政赤字政策を打ち切るためには一刻も早く過剰労働力解消・・人口減を急ぐしかありません。
国際競争に不適合を起こしていた農村人口は幸い、高度成長期の余録をつぎ込んでいるうちに何とか人口縮小に成功しました。
今後は、対外純債権国であるうちに下層単純労働人口の縮小に成功出来るかが、我が国の将来を決めることになります。
この種の意見は、February 1, 2011「非正規雇用と高齢者雇用」その他で繰り返し書いてきました。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC