東京メトロ株売却の話題から、国有資産売却の功罪・増税のメリットに関するテーマにそれてしまいましたが、もう一度9月28日の円高の続きに戻ります。
アメリカは日本の逆で1986年から純債務国に転落しています・・蓄積がない国となれば、サラ金地獄同様で借金はフロー収入から返すしかないので年収・GDPが重要な基準になります。
日本は純債権国になって久しく・豊富な外貨準備があるので仮に日本を標的に売り浴びせをしても日本が「じゃあ、外貨準備を取り崩す」となれば、売り浴びせている方の国の外貨が暴落する・・日本の円が上がる結果になるので、どこの国もそんな攻撃は仕掛けられません。
これが現在のところ(日本も将来純債務国に転落すれば話は別ですが・・)究極の避難先として円が選択される・・円高の根源です。
ところで、単に避難先としての臨時的な円高だけではなく、実際には、日本の場合長く続いたデフレ状態で、国内物価が大きく下がっているのに対し、アメリカなどかなりの割合で物価上昇していましたから、(中国でも最近では生活必需品の豚肉の値上がり率が14〜5%にもなっていると報道されています)購買力平価(理論値)で見れば、5〜6年前よりは実質的な円相場水準はまだ円安状態らしいですから、安過ぎている円相場の実力相応への収束過程も加わっていると見るのが正しいような感じです。
何故実力以上に円が安かったかと言えば、08/07/08「国際資本市場の条件1」その他あちこちで円キャリー取引のテーマで書いておきましたが、我が国だけがバブル崩壊後の処方箋として超低金利政策を続けてきたことによって、円キャリー取引が進み、経常収支黒字相当分以上の円の流出が続き、その分黒字累積分に対応するべき円高が押さえられ、流出の方が多かったので円が下落していたのです。
リーマンショック以降アメリカも低金利政策を採用したことによって、投資家が日本から金利の安い円を借りて持ち出すメリットがなくなったことにより・・アメリカへの資金環流システムが崩壊したので、今になってその帳尻合わせ・・復元過程になっているに過ぎません。
ジリジリと続く円高は、結果的に輸入価格を押し下げて行き、国内企業の(たとえば鉄鉱石や原油・天然ガス・食料など)仕入れ価格の低下を通じて、国内物価の低下を進め、国内製造業の製品価格を下げて国際競争力がつくので、長期的にみれば悪でも善でもありません。
人件費だけ下方硬直性があるので、結果的に人件費が割高になる・・裏から言えば、個々人への所得分配率が上がりますから、経営者にとっては苦しい・・これが円高に対する悲鳴の基本でしょうが、これは経済というよりは分配率がどうあるべきかの政治の問題です。
上記に加えてアメリカや中国その他諸外国では上記の通りインフレが進んでいたので、年々ドルや元の購買力が実質低下していたので、そのバランス回復過程との複合過程が最近の円高基調と言えます。
投機筋の思惑で短期的に下がり過ぎたり、上がり過ぎたりしても長期的には、購買力平価に落ち着くのが為替相場ですから、大騒ぎする必要がありません。
乱高下があると短期的には調子が狂いますが、長期的に見れば国の評価が上がっていることですから目出たいことであって、これを悲観するのは異常です。
円がドンドン下がって行き底が見えなくなる方が怖いでしょう。