借金先送りシステムに話を戻します。
東電も一般企業同様に22日まで紹介した「借り換え繰り返しモデル」で資金運用していた・・自己資金で返す準備金を全く用意していなかったところに、大事故が発生しました。
巨額賠償金の手当が出来ないだろうという市場予測から、・・社債の借り換えが出来なくなってしまう予測・デフォルト含みから株式の大暴落になりました。
株式の暴落が社債市場に影響しますし、社債市場でのデフォルト予測が将来を織り込んだ株式相場に反映される相互関係ですが、社債発行は1年〜半年に1回程度しかないのに対し、株式市場は毎日開いているので刻々の変化が株式市場で先ず現れる関係です。
国政選挙が仮に2〜4年に1回しかなくとも、途中の補欠選挙やしょっ中行われる地方選挙で、政権の動向を読み取るのと似た関係です。
今回の賠償支援法・スキームが緊急に必要となったのは、
① 東電は賠償資金がなくて早晩行き詰まる予測から、
② 現在の株価が大暴落し、(2000円台から400円台まで)
③ 直近に期限の来る既発行済社債の償還資金用借換債の発行困難化
④ 既発行社債を期限に償還出来なければ倒産→原発事故処理が滞る
⑤ 東電の当面の資金手当の必要性
⑥ 事故直後に1兆2000億あまりが金融機関から緊急供給
⑦ 緊急資金は、次々と到来する社債償還資金にはなり得ない
⑧ 恒久的資金供給枠組みを造るか、賠償責任の限定が必要
⑨ 賠償責任限定は政治的に不可能
⑩ 新たに作った中間組織による社債発行=資金準備
⑪ 新機構から東電へ社債償還資金を供給
⑫ 新組織の信用力不足を政府保証で補完
⑬ 将来的には東電の賠償資金の手当もこのシステムを使う。
ので、賠償資金の心配が要らないと言うことでしょう。
賠償支援法ですので賠償資金を直接捻出するための法かと思うのですが、東電が賠償資金を借りられないから賠償資金の調達を今直ぐに政府が保証するのではなく、外形から見ると先ず目先の倒産を防ぐために借換債発行の代わりに機構から供給を受けられる仕組みを作ってやったことに過ぎないことになります。
(これは賠償金支払ではなく結果的に既存投資家保護になります)
そして当面の資金ショート危機が去った後で、具体化して来る賠償金支払資金もこのスキームに乗せて順次機構による新発発行社債で集めた資金から東電が供給を受けて賄って行こうとするものでしょう。
これが軌道に乗れば東電の信用不安が解消されるので、賠償資金用途以外は東電が従来通り東電名義の社債を発行して資金を循環して行くことが期待されているのでしょう。
借金に切り替えても支払義務・負債の増えた点は同じですから、利益が出ないので長期間利益配当出来ない・・株式相場には影響するでしょうが、信用不安払拭にはなります。
社債は元々半永久的に自腹では払わないシステムですから、政府保証の社債発行残高がいくら増えても東電の信用・デフォルト不安には響かないことになります。