前回書いたように技術革新の結果、絶えざる価格破壊が進む社会では、名目成長が止まっているように見えても実質的には成長が進んでいるのであってそれなりの効用がありますが、技術革新による価格破壊もなく単に他につられて物価が下がるだけのデフレの場合・・あるいは成長の止まった社会では、既得権益・既得資産の価値比重が増すので、格差固定しやすい点が問題です。
労働者の立場で喩えて言えば、1時間に作れる数が2倍に増えているのに労賃がⅠ、5倍にしかかならないとすれば、労働者の品質・・労働効率が良くなって労賃が割りに安くなっている場合は前向きですが、就労機会が減ったためにダンピングによって労賃が下がっているだけとしたら、言わば悪いデフレです。
商品で言えば、何の改善・効率化もないのに競合他社に負けないためにただ、赤字値下げしているようなもので、不健全そのものです。
このような値下げ競争は業者の場合採算割れで淘汰されて行き、その内需給が均衡する経済原理が働きますが、労働者過剰の場合、いくら下げても(失業者が海外に出稼ぎに行かない限り、人間の淘汰はあり得ないので・)供給過剰が収束しないので放置すれば賃金の下降現象は新興国並みの水準に下がるまで自動的に収まりません。
国際水準以下に賃金水準が下がれば、汎用品等の国内生産増が始まり、その方面の需要が増えて、労働需給が締まってくることになりますが、そこまで行くには何十年〜100年も先のことでしょう。
実際そこまで労賃水準が下がる=新興国と同じ生活水準に落ちることを楽しみにしている訳には行きません。
労働者人口をそのまま維持して労賃の下がるのを待つよりは労働者供給をしぼって行き、(結局は少子化による人口減を図って行き)労賃がそこまで下がる前に需給を均衡させるのが筋です。
この均衡に至るまで放置していると失業が増大して社会不安になり易いので、政府は必死になるのが普通ですが、政府には新たな産業を興す能力がないので、税を使った社会福祉系産業への補助金増・・介護現場労働者を増やすなど従来水準よりも低賃金職場の拡大による吸収しかありません。
国の総生産が一定である時に、これに必要な労働人口以上の人口をそのままにして大勢で分かち合おうとすれば、ワークシェアー・所得シェアー策(低賃金化)しかないのですが、これが同時に中間層以下の没落・・階層固定化を進めることになります。
何故デフレが階層固定化に結びつきやすいかについては、この後インフレとの比較を書いた後に都市住民内格差のテーマで書いて行きます。