マイホーム主義の終焉1
そもそもアメリカで、中産層の夫が毎日早めに帰って来て理想的な家庭を築けたのは有り余る資源を元に実際の働き以上の富を手に入れていたからに過ぎません。
日本で言えば近郊農家の息子がアパートの家賃や地代その他の収入があるので軽い仕事をしていても豊かな生活が出来るような状態にアメリカがあったと思えば良いでしょう。
今でこそアメリカは資源輸入国ですが、私が中学生の頃に習ったアメリカは、工業製品だけではなく石油も石炭も鉄鉱石・食料もほとんどの分野で輸出国で資源の有り余る国でした。
有り余る資源を輸出しながら工業製品も輸出競争力があったのですから、猛烈に働かなくとも普通の中産階級が芝生やプールのある豊かな家庭生活を楽しめたのです。
アラブ諸国で効率の良い原油生産が始まってアメリカ国内の原油生産が価格競争力を失い(埋蔵量がなくなった訳ではありません)資源輸入国になって来ると従来通りの贅沢な暮らしを続ければ(農家の息子が家賃収入等がなくなったのに以前同様に自分の働き以上の生活を続けているようなもので、)アメリカが貿易赤字になるのは当たり前です。
この頃から、アメリカでも夢のような豊かな生活が出来なくなって来た筈です。
日本ではアメリカの最も豊かな時代を背景にゆとりのある働き方で家庭を大事にする生活スタイルを見せられて、女性はこれこそあるべき家庭像だと思い込んだのです。
しかし日本は資源がないので豊かな生活をするには、(近郊農家の息子以外は)その分より多く身体で稼ぐしかないのですから、豊かな生活(所得倍増計画)は夫が残業・休日出勤することで叶えられるのですから、家庭で夫婦がゆったりと楽しむ女性の夢は(芝生の庭付きの家庭を築くことと)矛盾していたのです。
またアメリカのホームドラマでは女性が家事に追われる場面が出て来ませんが、周知のように我が国以外では、異民族が混在していることからベビーシッターやメード等が発達しているのに対し、いわゆる同質社会の我が国では中産層では(賃金格差が少ないので)すべて自前ですから、奥さんは大変です。
そこで、アメリカ型を理想とするマイホームの夢はほとんどの場合、環境が整わずに実現出来ないか破綻して行くしかなかったのです。
このように豊かな生活には裏付けがいるとすれば、妻が豊かな生活を求める限り豊かな生活を提供する義務のある夫は猛烈型に働かざるを得ません。